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細胞外基質研究所,
エラスチンゲルを用いてヒト血管平滑筋の細胞培養に成功
新たな細胞培養基材の実用化へ

[2007/02/23]

 医療材料や化粧品素材としてエラスチンの応用開発を進める細胞外基質研究所は,エラスチンゲルを用いてヒト血管平滑筋細胞を培養することに成功した。細胞増殖の足場となる培養担体をエラスチンとすることで,より生体に近い状態の血管平滑筋を分化・誘導できると言う。エラスチンゲルを細胞培養のシャーレにコーティングすることで,新たな培養基材として利用できる。同社代表取締役社長で三重大学工学部助教授の宮本啓一氏が明らかにした。

 すでに同社は,エラスチンの人工血管や人工神経などへの展開,化粧品への応用に着手しているが,今回の成果はエラスチンの新たな適用分野を示すものと言える。今後,血管平滑筋以外の筋肉細胞においても,エラスチンゲルの機能性の検証を進めていく予定である。これまでコラーゲンが主流だった培養担体に,新たな選択肢が増えることになりそうだ。
 従来のコラーゲンゲルを用いる方法では,細胞増殖の制御が難しく,常に増殖している状態である「合成型」の血管平滑筋にしか分化・誘導できない。血管平滑筋は,生体内では非増殖の「収縮型」の状態で存在している。そのため現在は,コラーゲンを用いる場合,人為的に増殖をストップしたり,薬品を加えるなどして,収縮型の状態に近づけている。これに対し,同社が作製したエラスチンゲルを用いると,細胞自らが収縮型に自然に分化・誘導していくと言う。宮本氏は,「自発的に分化・誘導した場合とそうでない場合,機能性に違いがあるだろう」と指摘する。「まずは,エラスチンをコーティングした血管平滑筋細胞の培養シャーレの実用化を目指す。将来的には,動脈硬化などの血管疾患研究や血管再生などによる再生医療を視野に入れていく」(宮本氏)考えだ。

エラスチンを医療,化粧品,食品分野へ展開
 エラスチンは,血管や皮膚,靭帯などに含まれる繊維状たんぱく質である(図1)。(1)伸縮領域(2)細胞接着領域(3)架橋領域の3つの領域から構成され,生体の伸縮性・弾性を担っている。同社は,このエラスチンの特性を生かして,伸縮性に優れた生体高分子材料への応用開発を進めている。
 この開発を可能にしているのが,宮本氏が確立したエラスチンの成形技術である。同氏は,ジカルボン酸系の架橋剤を用いることで,これまで水溶性にしか加工できなかったエラスチンの成形に成功した。さらに,架橋剤の量や反応時間などを調節し,架橋の強さ(不均一性)を制御することで,弾性強度や伸張性といったエラスチンの物性を調整することを可能にした。ゲル化したエラスチン,微粒化したエラスチンなど様々な改良に成功しており,エラスチンの応用範囲を広げている。
 すでに人工血管や人工神経,止血シートなど(写真1)を開発に成功しており,人工血管に関しては帝人と共同研究を進めている。また,「架橋技術で微粒化したエラスチンの粘度を調節することができる。こうした特徴から,例えば美容クリームやパックなどへの展開も考えられる。今後は,医療・バイオ分野だけでなく,化粧品や食品分野への応用も力を入れていく」(宮本氏)と意気込む。

図1:生体組織のエラスチン含有率
生体組織のエラスチン含有率

写真1:エラスチンで作成した人工血管(左)と人工神経(右)
エラスチンで作成した人工血管(左)と人工神経(右)

血管平滑筋細胞を「収縮型」に分化・誘導
 今回の成果は,この架橋技術で開発したエラスチンゲルを培養担体として利用した。生体内では,コラーゲンだけでなくエラスチンも細胞増殖の足場として利用されている。そこで宮本氏は,エラスチンを多く含む血管の細胞培養においてエラスチンゲルの有用性を検証した。その結果,エラスチンゲルは,血管平滑筋細胞に特異的に接着し,生体に近い状態である収縮型に分化・誘導することを明らかにした。血管平滑筋細胞に特異的なバイオマーカー(生体内指標)であるα-SM-アクチンの型を調べ,エラスチンゲルの場合,収縮型に多く存在するFアクチンが,コラーゲンゲルでは合成型に多いGアクチンが多くなることを確認した。「両者の間では,情報伝達機構やたんぱく質合成などで違いがあるはずだ。エラスチンゲルを用いた場合,生体に近い分子機構が働いていると考えられる。今後,mRNAやたんぱく質の発現などを調べ,エラスチンゲルの優位性を裏付けていく」(宮本氏)方針だ。
 またエラスチンゲルは,血管の構成細胞である内皮細胞,平滑筋細胞,繊維芽細胞(それぞれ内膜,中膜,外膜に存在)が混在した状態でも,平滑筋細胞のみを特異的に接着・伸展させるという。「これまでエラスチンに細胞接着性があることは知られていたが,細胞種までは明らかになっていなかった。この特徴を応用すれば,細胞の選択的な培養も可能になる」と話す。
 今後,同社では,エラスチンの物性を変え,研究用途や培養細胞別に最適なエラスチンゲルおよび培養シャーレの開発を進めていく方針である。
(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)


記事要点掲載先:日経BP.netBiotechnology Japan


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