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廃石こうボードからできた中性固化剤
長崎発の技術が全国へ


[2008/04/14]

 廃石こうボードのリサイクルに社会的な関心が集まっている。長崎県のベンチャー企業,真人は,廃石こうボードを焼成して中性固化材を製造する技術を確立。河川など自然環境に対する負荷が少ない点が評価され,長崎県をはじめ全国自治体の公共工事などで広く採用が進んでいる。真人では,中性固化材を全国に供給するとともに,県外の企業とも提携を進め,廃石こうボードのリサイクル事業を全国展開するとしている。

 廃棄物処理法の規制強化に伴い,建設廃棄物である廃石こうボードの最終処分方法が自治体や建設業者にとって大きな課題になっている。
 建築関連で廃棄される石こうボードは2005年の段階で74万2000トン(新築時廃材21万1000トン+解体時廃材53万1000トン)。これが2010年には108万5000トン(新築時廃材20万7000トン+解体時廃材87万8000トン)へと,急激に増加する(社団法人石こうボード工業会の試算)。中でも,解体時に出る廃材石こうボードについては,適切なリサイクル方法が無く,「中性固化材」という具体的な用途を開発した真人の技術は高く評価されている。現在,群馬県伊勢崎市,大阪府岸和田市,鳥取県米子市で提携企業がプラントの開設準備を進めているほか,札幌市,青森市,沖縄県浦添市でも事業計画中の会社がある。将来的には,自治体における廃棄物の出口対策としても注目を集めそうだ。

 同プラントで製造するのは,主として地盤を固化させるための固化材「エコパントT」。長崎総合科学大学,長崎大学などとの共同研究で開発した。土に混ぜて締め固めると,自然の土より硬くなる。崩れやすい法面(のりめん)を固めたり,公園・広場など整地の表面を処理したり,様々な用途がある。
 土木工事のための固化材は他にも存在するが,従来品は,セメントを用いたものがほとんどで,強アルカリ性を帯びている。そのため,護岸工事など水際で用いると,水質を変化させたり,環境破壊を引き起こす懸念があった。また強アルカリの土になってしまうと,再度,固化させた土を掘り返す場合,残土は基準を満たした管理処分場へ送らなければならない。

環境負荷の少ない中性固化材である点が評価され公共工事で採用
 一方,「エコパントT」の最大の利点は,ph値が中性であるということだ。この点が評価され,厳しい環境対策で知られる横浜市の河川工事に採用されたほか,海苔の養殖で有名な有明海の護岸工事でも採用された。そもそも石こう(硫酸カルシウム)は肥料としても使われる物質であり,固化処理を行った後でも植物が育ちやすい。掘り返した土は,通常の土と同じように扱える。
山本芳弘・真人社長
山本芳弘・真人社長
   「最近では環境に配慮した護岸・土木施工を求める声が,急速に高まっており,そうした声に敏感な自治体や施工業者から指名が増えている」と真人の山本芳弘社長は話す。
 「エコパントT」は,廃石こうボードを破砕し,ボード表面の紙パルプ部分などを分離させた後,石こうを焼成したものだ。ボードに使われるのは「二水石こう」だが,焼成により「半水石こう」や「無水石こう」になる。これらは水を混ぜられると水和反応し,固化する性質を持っている。土壌の固化に必要な分量は,一般的な土質であれば,土1mあたり150kgを投入すれば十分な強度が出るとしている。最終製品価格も,原料調達や製造方法を工夫し,従来の固化剤と同等レベル以下に抑えることができた。
 真人は,自社製造した固化材「エコパント」を全国に出荷してきたが,ここにきて,地方の建設業者などを中心に,真人から技術指導を受けて,プラントから建設し,自ら廃石こうボードのリサイクル事業に参入する企業が増えている。現在の法律では,廃石こうボードの回収は自治体単位で行う必要があり,原材料調達を考えた場合は地域ごとに焼成リサイクルプラントが稼動していることが望ましいからだ。真人は自社技術を県外企業にライセンスすることでこの問題に対応するとしている。
 県外の建設企業が,真人の技術ライセンスを受け,プラント建設まで行って廃石こうボードリサイクル事業に参入するのはなぜだろうか。その理由を山本社長は「環境負荷の少ない工事ができるゼネコンとしてアピールできれば,公共事業の競争入札などで優位に立つことができるという期待があるから」と説明する。
 真人が開発したプラント設備は1時間あたり廃石こう2トンを処理する能力があり,1日8時間・月25日間稼働させると,年産4800トンが処理できるという。焼成の熱源に現在は重油を熱源としているが,今後はバイオマス熱源に切り替えるとしている。


受け入れ先失う廃石こうボードの光明に?
 石こうボードは建築物内部の耐火被覆に使われるもので,1980年代から生産が本格化,急速に普及した。2000年代以降,徐々にこの石こうボードが建設廃棄物に混じるようになってきたが,本格的に廃棄が始まるのはこれからだ。大手メーカーを中心として,廃石こうボードを受け入れる体制作りも始まってはいるが,まだ本格化していない。またメーカーによるリサイクルは,原料の一部に回収した廃材を混ぜるというもので,品質維持のために含有量を高められずにいるのが現状だ。
 当初,廃石こうボードは陶器・ガラスなどと同様,環境に悪影響のない廃棄物として最終処分場に埋め立てられてきた。ところが,90年代になって,廃石こうボードが,埋め立て後に硫化水素ガスを放出する場合があることが分かり,環境省が対策に乗り出していた。2006年,環境省は「安定型最終処分場」への埋め立てを禁止。汚染物質流出対策を十分に行った「管理型最終処分場」のみ埋め立て可能とした。だが「管理型」の存在しない県もあるため,処分費は今も高騰し続けている。
 同社によると,中間処理業者は同社に廃石こうを受け入れてもらえないと多額の処分費を支払う羽目に陥るため,ボードの破砕・分離工程などにおける品質維持には協力的だという。廃棄物処理業者の側も,すでに受け入れ先探しに真剣になり始めている現実が伺える。
 「この技術が普及して,石こうボード由来の中性固化材が一般化し,当社の名付けた『エコパント』という名前がその代名詞になるのが目標だ。やっかいな廃棄物を再資源化すると同時に,土壌を汚染しない土木施工が実現するという点で,社会的なメリットは大きいと思っている」と,山本社長は今後の事業拡大に対する意気込みを語っていた。

焼成プラント 焼成プラント

比較的低温でゆっくり回転させながら焼成することで中性の固化材となる

原料になる廃石こう 原料になる廃石こう

廃棄物中間処理業者が石こうボードを破砕し、不純物を取り除いたもの

袋詰めされた「エコパント」 袋詰めされた「エコパント」

冷却した焼成石こうに特殊なバクテリアを混ぜ、石こうボードに元々含まれる不純物を分解させる

廃石こうボードリサイクル事業およびエコパントの問合せ先: 
  http://www.masato-eco.co.jp/toiawase.html



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