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「ミクロンオーダーの微細孔を塞ぐ封孔剤」の技術で
高度なコンクリート保護を実現


[2008/06/11]
ディ・アンド・ディ 水越重和社長
ディ・アンド・ディ 水越重和社長
  コンクリートが酸性雨,塩害などで劣化することは80年代から知られているものの,未だに決定打と言える対策がない。三重県の化学系ベンチャー企業,ディ・アンド・ディは,ミクロンオーダーの微細孔を塞ぐ溶射封孔剤の基礎技術を応用し,コンクリート表面の微細な穴を確実に塞ぐコンクリート保護剤「パーミエイト」を開発した。

 コンクリートは構造内部に浸透した水分,塩分,炭酸ガス等によって劣化が促進されることが分かっており,コンクリート表面にある細かな穴を塞ぐことでこれら劣化因子の浸透を防ぐのが狙いだ。金沢工業大学による研究でも効果の高さが確認された。また,「パーミエイト」は硬化して無機系ポリマーを形成するので,紫外線などによる影響を受けにくく,この特性を生かして,「パーミエイト」に顔料を添加することで,耐光性を飛躍的に向上させた塗料の開発や,木材の寿命を大幅に伸ばす素材としても応用が進むなど,コンクリートや建築物のロングライフ化を可能にするキラー技術として大きな関心をよんでいる。


 コンクリート表面の穴は,直径が10分の1μmから数百μm(1μm=1000分の1mm=1ミクロン)程度。ディ・アンド・ディが組成設計した「パーミエイト」は,いったんこの穴の内部に入り込み,穴の中で化学反応を起こして硬化する(図1)。粘度や表面張力が低く,穴に浸透しやすいのが特徴だ。
 「例えば『クレ556(呉工業製)』などで有名な浸透潤滑剤は,表面張力が22.0mN/mで,水の3分の1以下。潤滑剤が固く締まったボルト穴にも浸透していくのは,この低い表面張力のおかげだ。『パーミエイト』は同25.6mN/mで,ほぼ同じ程度の浸透力がある」と,水越重和・同社社長は話す。浸透した後,「パーミエイト」は空気中の水分と反応して硬化する。反応する相手が空気中の成分なので,一般的な塗料などと同じ「一液式」で扱いやすいのも大きな特徴。

 「従来から,『封孔剤』という製品は存在する。だが実際には穴を塞げていない場合がほとんど。従来品は分子量1万から10万程度のポリマーの細かな粉を,有機溶剤でポリマーが15%程度になるよう溶解希釈しているだけ。溶剤は穴に浸透していくが,量が少ないポリマーは穴を完全に塞ぐほど入らない。硬化前の『パーミエイト』は分子量が100から600で,単純に言えば従来品に含まれるポリマーに比べて大きさは100から1000分の1以下。そして穴に入った後で初めて硬化して,ポリマーになる」(水越社長)


図1 パーミエイトは微細孔に浸透し,硬化する
図



熱や紫外線にも強い無機ポリマーを形成

 また,「パーミエイト」の主成分は,珪素化合物(アルコキシシラン化合物)と,硬化触媒,添加剤であり,空気中の水分と反応すると,珪素と酸素が網の目のように複雑に結合した「重合体(ポリマー)」となり,硬化後の姿は「無機系ポリマー」と呼ばれる熱や紫外線にも強い樹脂を形成する。

 2006年に実施された金沢工業大学の研究では,「パーミエイト」を含む8種類のコンクリート保護剤を塗布してコンクリートサンプルへの吸水,塩化物イオン浸透,中性化などの防止抑制性能を確かめたところ,最も良い成績を残した。性能ランクはすべてのコンクリートサンプルで「A」と判定されている。
 例えば,コンクリートの密度を示す「水コンクリート比」がもっとも低い50%のコンクリートサンプルでは,試験対象となった8つの保護剤のうち5つは吸水性がCランク,残りの2つはBランクと判定された中で,「パーミエイト」はAランクの判定を受け,高い封孔性能,止水性能が確認された。

 コンクリートは密度が高いほど水が浸透しにくい。貯水ダムなどは高密度コンクリートの典型で,現在でもひび割れが発生したダムはほとんどないと言われている。だがその密度の実現には多大な費用が必要で,一般の建造物においてダム並みの施工が行われる例は少ないと言われる。インフラを延命し,長期利用するためには,止水などの適切なコンクリート保護が不可欠といえる。

 さらに,この研究で見つかった興味ある性能は,中性化を完全に防止できている,つまり炭酸ガスの侵入は完全に阻止しているということと,水の浸入は止めているが水蒸気は透過させているということ。

 実は,コンクリート内部は意外なほど湿っている。それが,コンクリートのモルタルと骨材(砂)が緩やかに化学反応して膨張する,「アルカリ骨材反応」を誘発する。コンクリート内部の湿度が80%を超えなければこの現象は起きないとされるが,現実にはあちこちの橋脚などで「アルカリ骨材反応」によって,コンクリートが膨張,表面がひび割れている。「パーミエイト」は,コンクリート表面で止水するとともに,コンクリート内部の水を水蒸気として放出できることで,こうした劣化現象の抑制が期待される。



六本木ヒルズや「工作船」も保護

 もともとこの技術は,亜鉛,亜鉛/アルミニウム防錆溶射皮膜の封孔のために開発されたものだ。本来,防錆溶射は鉄の表面の錆を防ぐために行われるが,それでもなお目に見えない小さな穴が残ってしまい,そこから空気や水分が入り込んで鉄を錆びさせてしまうという。求められたのは1μmの穴を塞ぐ技術だった。「パーミエイト」は溶射皮膜内部に浸透し,鉄の表面にまで到達して硬化するという。また亜鉛との相性が良く,化学的に結合することも確かめた。

 水越社長は1968年に三菱化学に入社(当時の社名は三菱油化),その後,一貫して化学畑を歩き,97年からは同社アメリカ子会社のケミカル事業技術部長も務めた。無機系ポリマーの将来性を確信し,2004年にディ・アンド・ディを起業した。
 防錆溶射の封孔剤を商品化したのと前後し,同社は塗料への応用にも取り組んだ。従来の塗料は,有機系樹脂に色素の「顔料」を混ぜて造られる。だが有機系樹脂は紫外線で風化してしまう。次第に顔料だけが表面に取り残され,触ると手に顔料の粉が付くようになる。これはチョーキング現象と呼ばれ,塗装面の劣化としては代表的なものだ。無機系ポリマーは紫外線に当たっても分子の網目が残るため,風化までの期間が格段に長く,再塗装期間を延ばせることで維持費を大幅に低下できる。

   また塗装下地の微細な穴に入り込んで固まり,根を張ったようになるため,塗装面が浮きにくいというメリットもある。

「塗料としては例えば,『六本木ヒルズ』のレジデンス(住居)棟の玄関に使われています。高級マンションですから,玄関でチョーキング現象が起きて居住者の服が汚れることを気にされたようです」と,水越社長は話す。このほか高速道路のガードレールの再塗装,海の上に立ち上げた空港の進入灯橋脚,送電塔など,高度な耐食性が求められる用途を中心に採用が広がっている(写真1)。

 変わり種では,海上保安庁が2001年に引き上げ,現在は横浜市の海上保安資料館で展示されている北朝鮮「工作船」の塗装がある(写真2)。錆,塗装の生々しさをそのままに残すため,同社製品の透明タイプでコーティングした。錆の中に入り込んで硬化させ,景観を維持しながら錆の進行を食い止めるのが目的だという。

 【写真1】
 【写真2】
パーミエイトで封孔処理された神戸空港進入灯橋梁   展示のためパーミエイトで保護塗装された北朝鮮工作船長
パーミエイトで封孔処理された神戸空港進入灯橋梁
 
展示のためパーミエイトで保護塗装された
北朝鮮工作船


 無機系ポリマーの分子の網の目は,水は通さないが,水蒸気の分子より大きい。このため硬化後の「パーミエイト」は,透湿性を有している。この特性を生かし,木材の保護剤としての活用も始まっている。呼吸する木の特性は生かしつつ,水分をシャットアウトすることで,木材としての寿命を伸ばすことができる。「防腐剤を注入して封孔すれば,防腐剤は木材の内部に留まるので,シックハウスの防止や防腐効果を長期にわたり持続させることもできる」(水越社長)と今後も様々な応用を図っていく考えだ。


●参考資料: 金沢工業大学,佐藤工業・技術研究所が行った
パーミエイトの評価試験レポート

pdf PDFファイル(177KB)をダウンロード
●問い合わせ: 株式会社ディ・アンド・ディ







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