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ホタテの貝殻使い,高価なエゾバフンウニの「栽培漁業」に成功

[2008/07/08]

 日本の沿岸の海では,海藻の極端な減少によって,それを餌とする魚貝の漁獲量が激減する「磯焼け」という現象が広がっている。磯焼けは,地球温暖化や海水の富栄養化など,海の生態系変化が原因と考えられているが,その原因はまだはっきりとは解っていない。北海道沿岸の海域でもこの磯焼けが進行しており,ウニでも特に美味として珍重される「エゾバフンウニ」が年々獲れなくなっているという。こうした中,北海道千歳市のベンチャー企業 ドーケンは,エゾバフンウニの育ちやすい人工漁礁の開発に成功した。現在,北海道各地の漁業組合と設置計画を進めており,人工漁礁を使った「栽培漁業」の実現を目指す。

ドーケン社長 山端廣幸氏
ドーケン社長 山端廣幸氏

 この人工漁礁は,直径5mm程度に破砕したホタテの貝殻をセメントなどと混ぜ,型枠に入れて固めたもの。7年前から実験を始め,実績を積み重ねた。
  ドーケン社長の山端廣幸氏は,「ウニが育つということは,エサとなる藻,特に昆布が育つということ。だが,従来の人工礁は3年程度でいったん付着した藻が剥がれて漁礁の役割を果たさなくなる。当社の人工漁礁 『マリーンシェル240』にはそれがない。結果的に,エゾバフンウニが育ちやすい環境になった」と話す。

 従来の人工礁で,いったん繁茂した藻が剥がれ落ち,その後,藻が育たなくなる現象が,なぜ起きるかは専門家の間でもよく分かっていない。波によって海中の人工礁に砂がかかるなどで,表面の植生が変化してしまうのではないかとも言われている。ウニの育つ水深4〜6m程度の浅海域は,波にもまれる非常に厳しい環境だ。
 「最初は(漁業関係者から)無理だと言われた。どんな素材を使った人工漁礁でも,3年は藻が生えるけれども,その後,必ず剥がれ落ちて元に戻ってしまうとのことだった。だから,かなりの覚悟で実験を始めた」(山端社長)。

 同社が海洋調査会社に依頼して行った調査結果によると,道南地区の神恵内,道東地区のえりも・歌別海域で試験的に沈設した人工漁礁では,沈設から6年後も藻が造成し続けていることが確認された。さらに,エゾバフンウニが大量に群生している様子も確認できた。その様子は木に実がなるようで,まさに「栽培」という言葉がぴったりくる【写真1】
  この海域では漁業組合らが稚ウニを人工飼育し,年1回放流しているが,この人工漁礁では放流数に対し50%以上が定着して大きく育ったという。 実験過程では,放流数より採取数が上回ったこともある。付近に生息していた自然のエゾバフンウニが寄ってきたためだ。

 殻を剥いたエゾバフンウニには,1kgあたり3000円(出荷価格)の値段が付く。同社の人口漁礁の製造コストが1基30万円に対して,1基から2000個〜3000個の殻付きエゾバフンウニの採取が見込めるため,山端社長は「採取を始めた最初の年で元が取れる」と話す。厳しい審査を経て,北海道水産林務部から海洋資材としての認定を得ており,自治体(漁業組合)へは国,道,から合計90%の補助が出る。現在,複数の自治体や漁業組合から引き合いがあるという。

 【写真1】 海中に設置すると藻類が繁殖し,バフンウニが群生する
写真1-1
 
写真1-2
 
写真1-3


養殖ホタテの貝殻をリサイクル

 同社の開発した人工漁礁は,ホタテの貝殻を再利用したものだ【写真2,3】。養殖ホタテは日本の「北の味」として欠かせないが,多くが殻剥きをして出荷されるため,重量の半分が廃棄物になる。従来,こうした貝殻は自治体が収集し,北海道直轄事業の道路整備計画などで路盤材の骨材などとして用いてきたが,それも限界に来ている。現状のままでは,貝殻の活用に関する予算は数年後に期限切れし,大量の貝殻が行き場を失う。山端社長は,このホタテの貝殻を海洋資材として活用することを模索している過程で,ウニの栽培漁業に挑戦する漁業組合に巡り会った。

 同社の人工漁礁は直径5mm程度に粉砕した貝殻にセメントや樹脂を混ぜ,型枠に入れて固めたもの。通常のコンクリートは骨材として砂や石を使うが,代わりに破砕貝殻を使う。開発に取り組む以前より,押し固め具合を工夫すれば貝殻同士の間が完全には接合せず,すき間の残った状態でも強度が出せることは分かっていた。すき間を残した押し固め技術を生かし,透水性のある道路資材として,一橋大学のキャンパスや複数の公園で採用されるなど,クラックが出ないと既に好評を得ていたという。新しい人工漁礁の開発でもその技術を応用した。

 【写真2】 原料となる破砕したホタテの貝殻
写真2-1
 
写真2-2
 
写真2-3
 【写真3】 出荷前養生中の人工漁礁
写真3-1
写真3-2
写真3-3

 一般的に,人工礁は海底に置くだけなので,基礎杭で固定されていない。このため人工礁自体が時化で流され,見つからなくなることもある。浅海域では,海底から上へ突き上げるような波も発生するため,浮いてしまう。
  しかし,同社の人工漁礁の場合, 「表面に貝殻のデコボコがあることで,藻が根を張りやすい。砂をかぶっても植生が変わらなかった。複数の海域で試験的に沈設したが,台風18号が上陸した日本海の荒波でも,設置位置から動かなかった」と山端社長は話す。上下の水流を逃がすため,砂抜きの穴が功を奏しており,すき間のある素材自体にも消波効果があるという。また,「藻は平らなところではなく,何らかの角に付くことが多い」(山端社長)。そこで同社では,外周を12角形,内部の突起を6角形とした独自のハニカム形状の人工漁礁を考案し,昨年,これらの特許が成立した。

 昨年からは,経済発展を続ける中国向けに,ナマコの引き合いも強い。ナマコに特化した人工漁礁の開発にも着手した。
 山端社長は,「人工漁礁は,海のものを海に還すという意味で意義のある事業だと思う。また,消波効果を生かし,建築の防音資材として素材設計できることも実験で確認している。透水資材にもなる。今後もホタテの貝殻の再利用技術を多方面で開拓したい」と,複合的な展開も視野に入れている。

【問い合わせ先】
株式会社ドーケン
http://www15.plala.or.jp/doken-chitose/htm/index-home.html



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