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中小企業・ベンチャー経営者には“才徳兼備”のメンターが必要
経団連から生まれたメンター組織が活動を加速


[2008/07/15]

 「ベンチャー企業や中小企業の経営者にとって,経営や財務,技術,市場などに関する知識,ノウハウといった“才”と,経営者が抱える悩みや社内では言えないような苦しみを聞いてもらい,前向きな気持ちにさせるアドバイスをくれる“徳”。この二つを兼ね備えたメンターが必要」。こう語るのは,日本経済団体連合会(経団連)から生まれたメンター組織,ITEC(産業技術活用センター)メンタークラブのメンターの遠藤誠氏である。日立国際電気の名誉相談役で,中小企業のメンターとしても活躍する同氏と,ITECメンタークラブ事務局長の野尻昭夫氏に,ITECメンターとその制度について聞いた。
(聞き手は小泉孝朗=テクノアソシエーツ・プリンシパル)


相互の理解と信頼がメンターリングの効果を上げる

インタビューに答える、遠藤 誠氏(右)と、野尻昭夫氏(左)
 インタビューに答える、遠藤 誠氏(右)と、野尻昭夫氏(左)
  ITECメンターは元々,経団連の起業創造委員会(高原慶一郎委員長)に設けられたメンター研究会(鳴戸道郎座長,野尻昭夫共同座長)で検討してきたものである。国内産業がさらに活性化するには,経団連に所属するような大企業以外に,中小企業やベンチャー企業の活躍が望まれる。海外でベンチャー企業が急成長している背景の一つに,無償で経営者に助言するメンターの存在がある。日本ではこうした役割を担うメンター人材を,ベンチャー企業や中小企業とマッチングさせる機会が乏しい。同委員会では3年以上調査,検討を行い,大手企業のOBを組織化。課題を抱える中小企業やベンチャー企業にメンターリングする仕組を作り,2008年4月に,この組織はITECメンターへと引き継がれた。
 現在,ITECメンターは25名。大企業の経営経験者や,商社OBに加えて,ベンチャー企業の創業者もいる。メンターリングを実施している先は現在のところ3社だが,「分かっているだけでも,メンターを希望している企業は20社を超える」(ITECメンタークラブ事務局長 野尻昭夫氏)などニーズは高く,こうした企業にはこれからマッチングを行う予定だ。

 しかし,「このマッチングが難しい」(野尻氏)と本音をのぞかせる。メンター活動は,原則として無償のボランティア活動である。したがって,アドバイスはメンターの限られた時間や手間から工面して提供されるものであり,メンターリングを受ける側,すなわち“メンティー”から質・量において有償サービスと同じようなアドバイスを期待されても,十分に応え切れないという懸念がある。また,メンターのアドバイス内容を採用するかどうかは,経営者側の自己責任になる。メンターリングをより有効なものにする鍵は,こうした関係をきちんと理解し,両者に「相互信頼関係があること」(野尻氏)が重要である。

 その中で,同メンタークラブのメンターの一人,日立国際電気名誉相談役の遠藤誠氏は,創業して40年を超える老舗企業の2代目経営者のメンターとして活躍している。同社の経営環境の変化は激しく,創業者直伝の経営ノウハウをさらに発展・改革しなければならないのが現状である。社内で気軽に質問しにくいという2代目特有の課題もある。遠藤氏はメンターになって以来,財務分析から人事面,営業から技術まで,多方面にわたりアドバイスを行っている。必要に応じて,知り合いの専門家を紹介することもある。技術者時代から企業の経営者になるまで,自身が企業人として長年培ってきた知識,ノウハウや人脈をフルに提供している。
 「メンター活動の成果を左右するのは,メンターとメンティーの相互の信頼。胸襟を開いて話をし,相互信頼を持つことが何よりも重要。時には,一杯飲みながらの雑談も良い。本音がわかる」(遠藤氏)。メンターが,メンティーからの信頼を得るには,実利面でのアドバイス以外に,夢や希望を共有し,経営者を励ます精神的な部分が必要。遠藤氏は,「自分の事は棚に上げて」と前置きした上で,「大企業の経営者の多くは起業経験がないという短所もあるが,厳しい経営環境の中,修羅場をくぐって来た人が多く,“才”と“徳”を併せ持つ人物も多い。メンターになる素養はある」と語る。

 ITECメンターは,今後も,経団連企業などを中心に“才徳兼備”のメンターと,メンティーとなる中小企業やベンチャー企業を募集していく予定。「50人程度のメンターを抱えて,常時20件のメンティーがいる状態が当面の目標。将来は,多くのメンター,メンティー,支援者の参加する会員組織にしたい」(野尻氏)。

第5回メンターフォーラム<2010年1月26日>
「中小企業・大学発ベンチャー企業のためのメンタリング」 




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