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「創薬支援の大学発ベンチャー企業の成功例になります」

ジェノメンブレン 代表取締役社長 藪内 光氏
[2008/08/28]

ジェノメンブレン代表取締役社長の藪内 光氏
ジェノメンブレン
代表取締役社長
藪内 光氏

 2002年4月に東京工業大学発ベンチャー企業として設立されたジェノメンブレン(横浜市)は,細胞膜表面にある膜タンパク質である“トランスポーター”技術と特許などを集約する知的財産戦略を実行し,日本を代表するバイオテクノロジー系ベンチャー企業の一つに成長しつつある。トランスポーターは糖やアミノ酸,タンパク質などのいろいろな物質を細胞内に取り込んだり,細胞外に排出する機能を発揮する膜タンパク質だ。トランスポーターが注目される理由は,薬剤分子を細胞内に取り込んだり,細胞外に排出したりする機能の応用だ。創薬企業が苦労して新しい薬剤を開発しても細胞表面のトランスポーターが,その当該新薬を細胞内に取り込まなかったり,細胞外に排出してしまうと,薬としての効果を大きく左右してしまう。このため,新しい薬を開発する早い段階でヒト細胞のトランスポーターとの相性を判断する必要がある。「新薬開発時の薬効有効性を診断するトランスポーター解析のリーダー企業を目指している」と同社代表取締役社長の藪内氏は語る。トランスポーター技術や特許を集める知的財産戦略を実行し,トランスポーターの総合解析技術事業を目指す戦略について聞いた。



――ジェノメンブレン創業の経緯は。
藪内氏:当社は2002年4月1日に設立されました。この当時,私は東工大大学院生命理工研究科の助手として薬剤輸送体であるトランスポーターを研究していました。細胞表面の膜タンパク質としての機能を実用化できれば,独創的な事業になると感じていました。  当時,東工大関連の承認TLO(技術移転機関)だった財団法人理工学振興会の渡辺孝理事(当時,現・東工大大学院特任教授)からトランスポーター関連のベンチャー企業創業の話を聞いて,東工大をすぐに退職し,ジェノメンブレン設立に参加しました。元々,大学院の学生のころから,新技術を事業化するベンチャー企業に関わりたいと考えていたからです。
 創業当時の社長には北村公一さんが就任しました。製薬企業の三共出身の方です。残念ながらガンで亡くなられました。渡辺さんが2代目の社長に就任し,2004年2月に私が3代目の社長に就任しました。渡辺さんは現在,当社の取締役会長です。

――トランスポーターの技術や特許を集め始める戦略を始めたのは。
藪内氏:創業当時,薬剤輸送体としてのトランスポーターは盛んに研究されていましたが,その実用化・事業化を積極的に考えている方は不思議とまだ少ない時代でした。それならば,「今の内にトランスポーター技術や特許を集めて,トランスポーターの中核企業にいち早くなろう」と考えました。特許も関連特許を含めてパテント・プール化した方が,ユーザーは使いやすいですから。
 トランスポーター技術を集める過程での代表的な技術移転事例は,2004年10月の九州大学大学院医学研究科の桑野信彦教授(当時,現・久留米大学医学部教授)と和田守正助教授(当時,現・長崎国際大学医学部教授)の研究成果であるMRP2トランスポーターについての特許です。
 トランスポーターには,細胞内に物質を取り込むSLCトランスポーターと細胞外に排出するABCトランスポーターの2種類があります。このヒト型MRP2トランスポーターは薬物排出型のABCトランスポーターです。九大大学院の教員グループが遺伝子配列を決定し,特許出願していました。特許庁が一時は特許の拒絶査定を下したものを,九大の知的財産本部と承認TLOの産学連携機構九州(福岡市)が苦労して特許を成立させたものでした。
 2004年の夏ごろから知的財産本部の担当者と話し合いを始め,その年の10月ごろに当該特許を専用実施権という形で技術移転を受けました。この技術を基に,当社はABCトランスポーター試薬の1つとして製品化し販売しています。このMRP2トランスポーターは最近,腎臓や肝臓の排出作用の役目が注目を集めています。

――このほかの技術・特許の集約活動は。
藪内氏:代表的な事例としては2005年6月ごろに,金沢大学大学院医学系研究科の辻彰教授(当時)グループの研究成果であるヒトの疑似細胞となる「アフリカツメガエル卵」の技術移転を受けました。辻教授は日本のトランスポーター研究の草分けの1人で,アフリカツメガエルの卵細胞(卵母細胞)にヒト細胞のSLCトランスポーターを発現する遺伝子を注入し,ヒトの疑似細胞を開発しました。このヒト疑似細胞を利用すると,創薬開発時に当該薬剤がヒトの細胞に取り込まれやすいかどうかの判定ができます。
 この辻教授グループの研究は独立行政法人科学技術振興機構(JST)の育成研究課題に採択され,大きな研究成果を上げました。この時点で当社は共同研究に参加しました。その研究成果に基づく特許の技術移転を受け,当社はSLCトランスポーター試薬として製品化しました。
 2005年8月ごろには,東北大学大学院医学研究科(現・医工学研究科)の阿部高明教授の研究グループが研究していたOATPRトランスポーターの技術移転を受けました。SLCトランスポーターの1種で,抗ガン剤を効率的に吸収する効果などが大腸ガンの診断技術に利用できるとみています。この技術移転では,東北大の承認TLOである東北テクノアーチ(仙台市)の担当者と綿密に交渉しました。3件の特許の独占実施権契約を結びました。

――岡山大TLOからも技術移転を受けていますね。
藪内氏:2006年8月ごろのことです。岡山大学大学院医薬学総合研究科の森山芳則教授の研究グループが研究していたMATE1というSLCトランスポーター技術です。岡山大関連の承認TLOの岡山産業振興財団(通称,岡山TLO)から技術移転を受けました。当初,特許の実施権2件を受け,その後1件を追加しました。このMATA1トランスポーターは腎臓や肝臓に対する薬物の影響を調べられるものです。
 このように,さまざまな大学・大学院からいろいろなトランスポーター技術・特許の技術移転を受け,トランスポーター技術を集約した結果,当社は元々は東工大発ベンチャー企業でしたが,現在は国内・国外とネットワークを持つ“全国区”のベンチャー企業に成長したと自負しています。
 また,大学・大学院の研究成果に基づく特許の技術移転に加えて,企業からも技術移転を受けています。例えば,中外製薬からヒトOCTN1と同2というSLCトランスポーターに関する特許の実施権を受けています。こうした技術移転を受けた技術を基に,各トランスポーター試薬や試験キットなどの製品に仕上げて事業化しています。また,新薬などのトランスポーターへの解析の委託試験を引き受ける事業も展開しています。
 試薬や試験キットを外部企業に製造を委託するなどのアライアンスを組んで,事業化を迅速に進める工夫もしています。

――ベンチャーキャピタルからの出資は。
藪内氏:当社は現在,ベンチャーキャピタル5社から出資を受けています。当社の事業可能性を評価していただいた結果です。日本テクノロジーベンチャーパートナー(NTVP,東京都千代田区),ジャフコ(JAFCO),三菱UFJキャピタル(東京都中央区),東京中小企業投資育成,香川銀キャピタル(高松市)の5社です。
 NTVPからは森拓也氏が取締役に就任しています。創業直後にお目にかかったNTVPの村口和孝代表からは「ベンチャー企業として小さくまとなるな」との助言をいただきました。トランスポーターは大きな事業に成長できる可能性を秘めているのだから,目の前の小さな収益に惑わされず,大きな事業を心がけた事業計画を立てて実行しろとのことでした。

――公的な支援は受けていますか。
藪内氏:当社は現在,横浜市の財団法人横浜企業経営支援財団が運営するインキュベーション施設の横浜新技術創造館(横浜市鶴見区)に本社を構え,同財団から「株式公開型ベンチャー企業」の認定を受けるなどの支援を受けています。また,2004年に経済産業省傘下の中小企業庁の「平成16年度中小企業経営革新等対策費補助金」(通称,創造技術研究開発事業)に採択されました。こうした公的な支援を受けている内に,有力なベンチャー企業に成長する計画です。
 当社は2007年には欧州や米国,韓国,中国の企業と薬物トランスポーター関連製品の販売代理店契約を結び,販路の国際化を進めています。こうした事業化努力を続けている中で2006年9月に,米食品医薬品局(FDA=Food and Drug Administration)が製薬企業向けガイダンスを出しました。この中に,新薬開発時にトランスポーターによる薬物相互作用を確認する指針が示され,トランスポーターは脚光を浴びつつあります。この順風を受けて,当社の単年度黒字化と将来のIPO(新規株上場)をできるだけ早く実現したいと考えています。

(聞き手は丸山正明=日経BP社産学連携事務局プロデューサー)

(注1) 大学・大学院の肩書きは当時のものを表記した。現在,「助手」は「助教」に,「助教授」は「准教授」と表記されている。
(注2) バイオテクノロジーは高度な専門用語を用いて正確に表現するが,本稿では専門用語を,“日常用語”にある程度置き換え,一般の方に理解しやすいことを優先させた。今回のインタビューでも,藪内社長は実際には正確な専門用語を使って説明された。  トランスポーターはヒト,イヌ,サル,ラットなどの生物ごとに異なる。また,腎臓や肝臓,小腸,大腸などの臓器・器官ごとにも異なるが,難解なので詳細は割愛した。試薬・試験キットの詳細も割愛した。







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