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間伐木材から製造する高性能断熱材,日本でも製造販売へ

札幌のベンチャー企業「木の繊維」,国内生産工場を近く稼動
[2008/10/03]


 北海道札幌市のベンチャー企業,木の繊維(大友詔雄社長)は,間伐材を主原料とする,木質繊維の高性能断熱材の製造に乗り出した。環境先進国であるドイツ,ホーマテルム社から技術供与と国内製造と販売の独占的ライセンスを得て,北海道苫小牧市植苗地区に生産工場を建設中だ。
 この木質繊維断熱材は,断熱性能に加えて,防音,防耐火,調湿機能など,木の性質を生かした特性ももっている。生産に伴うエネルギー,二酸化炭素の排出が極めて少なくて済む点が評価され,ヨーロッパ各地で急速に普及が進んでいる。
 現在,建設が進んでいる生産工場は10月竣工予定。出荷価格は未定だが,原油高騰で各種の既存の断熱材が値上げを余儀なくされている現在,「原料を国内の森林で自給でき,ほとんど石油に頼らないこの技術は,コスト面でも十分戦える」と同社では説明している。


 木の繊維社が,製造,販売を手がける木質繊維断熱材は,木材を破砕したチップをさらに繊維方向に沿ってすり潰し,細長い繊維片とした後,スポンジ状に柔らかく成型して断熱材としたもの(図1)。熱緩和,無隙充填,調湿,防耐火,防音・吸音・遮音などの多機能で,断熱性能は既存の「高性能グラスウール」と同等以上としている。断熱材は,もし1mmの隙間ができた場合,熱損失は5倍にも増加するが,この断熱材は,隙間無く施工できるので,住宅全体の熱損失を防ぐことができ,断熱性能は大幅に向上する。

図1:原料となる木質繊維の綿状の塊 
(左)トドマツ,(中)カラマツ,(右)ドイツトウヒ
図1:原料となる木質繊維の綿状の塊 (左)トドマツ,(中)カラマツ,(右)ドイツトウヒ



 一般的に,断熱材は空気やガスを素材の中に閉じこめることで,断熱効果を得ている。例えば断熱材として最も普及しているグラスウールには,折り重なったガラス繊維同士の間に空気層がある。寒い時期,人間が衣服を重ね着するのと同じ原理だ。木材繊維をスポンジ状に成型する同社の技術も,同じことがいえ,ポイントは空気層をつくるための成型技術だ。
 これまでも間伐材などを細かく砕き,成型した硬質ボードなどはあったが,板状にするだけで,空気層を形成することはできなかった。木の繊維社は,ドイツ,ホーマテルム社からその技術供与を受け,圧力のかけ方によって様々な形態の断熱材を製造することに成功した。圧力を強めれば,硬板状になり,弱めれば空気をより含んだ柔らかいスポンジ状になる。同社では,用途に応じたボード状でスポンジ状の断熱材の他に硬質断熱材も製造するとしている(図2)。 
 「現在,ドイツには木質系素材の断熱材が3種類ある。そのうち最も普及しているのが,ホーマテルム社のもの。木材は生長過程で吸収したCO2の固まりといってもよく,製造過程でのCO2の排出量も圧倒的に少なくて済むことから,エコ建材として高い評価を受け,ドイツ国内では採用が相次いでおり,“ブーム”と言ってもいい」と,大友社長は話す。


図2 :樹種別木質繊維断熱材の風合い 
(左)トドマツ,(中)カラマツ,(右)ドイツトウヒ
図2:樹種別木質繊維断熱材の風合い (左)トドマツ,(中)カラマツ,(右)ドイツトウヒ


木の性質生かした,熱緩和特性や調湿性能を持った断熱材

 木を原料としているので,従来の鉱物系断熱材にはない,「熱緩和」という新しい注目すべき特性もある。木質繊維断熱材の比熱は,グラスウールの2倍,密度は40〜55kg/m3とあり,グラスウールの2〜3倍ある(図3)。即ち,熱を貯める「バケツ」の大きさが,グラスウールに比べて4〜6倍も大きいことを意味する。その結果,断熱材の中に熱を蓄える能力が大きく,断熱材の外側に加えられた熱が,室内まで浸透する時間が,従来の鉱物質の断熱材に比べて大幅に長くなる。夏の暑さや冬の寒さを緩和して,温度変化の少ない,年中一定室温の居住空間ができる。例えば,夏の屋根裏部屋でも快適さを維持できる。


図3:「熱緩和」の実験 (資料提供:木の繊維)
図3:「熱緩和」の実験(資料提供:木の繊維)

   また,調湿性能がある点も大きな特徴だ。同社の断熱材は「湿気が高いときには吸収し,低い時には吐き出す調湿機能をもつので,健康面にもよい」としている。木質系ということで,気になるのは防耐火性だが,同社では現在,この点についても実証実験を進めており,「不燃材または準不燃材」「45分準耐火構造」の国土交通大臣認定を取得する意向だ。これらの認定が取得できれば,密集商業地など市区町村の定めた特定の地域以外,ほとんどの場所で建築物に利用できるようになる。
 実際にバーナーの炎を近づけても,燃え広がることはないという。「木の繊維が密に絡まっているので,炎がかかると表面は燃えるが,いったん燃えた部分が炭化して,今度は炎が燃え進むのを阻害する」。焦げ目は付くものの,炎が貫通するには時間がかかるので,建築物に求められる避難時間を稼ぐことができるという考え方だ。石油原料の他の断熱材も,ほぼ同じ考え方で大臣認定を取得している。木質では勿論有害な煙は出ない。

 製造過程では,いったんチップを湿らせてほぐしやすくし,すり潰し,乾燥させた上で断熱材として成型するが,水をほとんど必要としない。乾燥に使う熱源には木の樹皮(バーク)を用い,石油も使わないため,資源のほとんどを国内自給できるのが特徴だ。
 これまで,木質系の断熱材は,大量の水で繊維をすすいでほぐす「湿式」方式で作るものが主流であったため,大量の上下水が必要になっていた。自治体の上水道を用いると採算が合わないため,地下水を汲み出せる立地でなければ工場を設立できないという難点があった。
 「製造に水や石油をほとんど使わない,素材自体はCO2の固まりのようなもの,製品の性能(断熱)が省エネに直結する……という数々の利点は,環境指向が強まるほど有利だ。現在,製造から利用,廃棄に至るまでを勘案し,製品のLCCO2(ライフサイクルCO2)を試算しているが,並み居る建築材料のなかでも特に優秀な数値になっている」と,大友社長は話す。


将来的には「地産地消」が目標

 価格の安い外国産木材が盛んに輸入されたため,日本の山林経営は「崩壊」といって良い状態になっている。どうやって立て直すか,その焦点になっているのが,木が生長する過程で必ず行わねばならない間引き作業と,そこで発生する間伐材だ。間伐材に値段がつかなければ,山林所有者は間引き作業の費用を工面できなくなる。政府は主に補助金政策でこうした間伐材振興を進めているが,同社の技術によって,間伐材が断熱材としても利用できる道が開ければ,国内の森林資源を持続可能な利用にも貢献することだろう。

 木は自然の中で育つため,太くまっすぐ育ったもの,生長途中で間伐されたもの,地形や気候の影響で曲がって育ってしまったものなど,様々なものが混在する。木材業界では太くまっすぐ育った丸太を「A材」として主に製材向けへ出荷,それ以下の「B材」「C材」をチップや合板,構造用集成材の原料として供給してきた。 一方,断熱材には強度は求められない。繊維のレベルまでほぐしてしまえば,どのような木もほとんど同じだ。同社の技術の強みは,原料である木材の種類を選ばない点だ。「むしろ,日本で厄介者扱いされているスギ間伐材などは非常に良い断熱材になる」と,大友詔雄社長は話す。日本で最も多く植林されているスギは,木材としては強度が低く,選別しなければ建築用材に使えないことが多い。だが断熱材用途であれば原料として安定的に間伐材を買い上げることができるため,林業家側にも市況に左右されない安定的な収入をもたらすことができるだろう。

 同社は苫小牧を最初の拠点として日本全国に販売し,販路が広がれば,林業の盛んな各地に工場進出していく考え。運搬にかかるコストや運搬時に生じるCO2を考えれば,「地産地消」が望まれるからだ。環境指向が強まる中,地球に優しい建築材料として同社の技術に注目が集まりそうだ。


【問い合わせ先】 株式会社 木の繊維




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