(株)テクノアソシエーツ TOPページへ テクノアソシエーツサイトへ

TOPページへニュースへ連携提案へ注目技術&事業コラムへコラムへ

バイオマス利用でカーボン・マイナスを実現
カーボン・ナノ・チューブ生産プラントに海外から高い関心
[2008/12/02]



JEC代表取締役社長山本弘峰氏
JEC代表取締役社長
山本弘峰氏
日本エコカーボン(JEC)(本社:東京都中央区,山本弘峰代表取締役社長)が,家畜の排泄物から生成されるメタンガスからCO2を排出せずに,カーボン・ナノ・チューブ(carbon nanotube:CNT)と水素を生産できるプラントの製造販売を開始した。プラントだけでなくCNTの販売も行う。これまでCNTの製造コストはkgあたり3〜4万円といわれていたが,JECのプラントはこれを1/10程度のコストで製造することを可能にした。
 しかもCO2を排出せずに,家畜の排泄物のメタンガス(CH4)からCNT(炭素C)と水素(H)を生成することで「カーボン・マイナス」を実現するという特徴を持つ。同プラントは海外での評価が高く,マレーシア,スリランカ,中東の産油国などからも引き合いがきている。


カーボン・マイナスを実現しながらCNTを生産
 本プラントの基となった技術は,北見工業大学工学部教授の多田旭男氏と日本製鋼所(日鋼),鹿島建設が北海道経済産業局の「2004年度地域新生コンソーシアム研究開発事業」を利用して共同開発した「バイオメタン触媒直接分解装置」である。
 本プラントは,(1)牛や豚などの家畜の排泄物を発酵させバイオ・ガス(メタン(CH4)60%,二酸化炭素(CO2)40%)を精製,(2)メタンに酸化アルミニウム(Al2O3)を担体として鉄(Fe)を担持させた触媒を加えて過熱,(3)メタンを分解してマルチウォール型CNT(multi-walled carbon nanotube:MWNT)と水素(H2)を抽出,という工程から成り立ち,1日8kgのCNTを生産できるという(図1)。「プラントをスケール・アップすれば1日40kgの生産が可能」とJEC代表取締役社長の山本弘峰氏は語る。
図1:JECの1CNT製造プラント
図1:JECのCNT製造プラント
本プラントの最大の特徴は,生産工程においてCO2を発生させずにメタンガスを水素とCNTに生成させることで“カーボン・マイナス”を実現した点である。CNTを生産するには本プラントを700℃にまで加熱する必要があるが,製造過程で発生した水素を燃焼させて本プラントの過熱に利用するため,外部のエネルギーをほとんど使用しなくて済むという。
 従来からあるCNTの生産法ではカーボン・マイナスの実現は不可能である。例えば,触媒CVD(chemical vapor deposition:化学気相成長)法によるCNTの生産では,触媒となる鉄やコバルト(Co)などの金属微粒子とメタンなどの炭化水素を1,000℃前後まで加熱し,熱分解してCNTを得るため,加熱する過程で多量のCO2が発生するからだ。
 JECと関連会社であるE・C・Oは,本プラントの耐久性の確認など,実用化のための研究の一部を日鋼室蘭研究所から受託した。この受託研究は2008年7月31日に終了したが,JECは,受託研究の終了と同時に日鋼と本装置に関する特許群の通常実施権契約を結び,CNTおよび本プラントの販売,プラントの小型化,CNTの量産化の研究,応用分野の開拓,などを開始した。

CNTをモルタルに混入することによって強度が大幅に向上
 JECがCNTの応用用途として有望視しているのが,建物や道路の建設に用いるコンクリートである。JECが製造したCNTを含有したコンクリートの性能評価を依頼しているのがワールド・テック(本社:東京都中央区,大網弘幸取締役)である。ワールド・テックは,環境対応技術や土木関連技術の開発を主な事業としている。
 コンクリートは,圧縮に対しては強いが,曲げや引張りに弱いという特徴がある。これらの力がコンクリートに加わった結果,応力によってひび割れが発生する。ワールド・テックとJECは,炭素繊維が曲げや引張りに強く,建材の補強材などに使われていることに着目し,共同で「CNTをコンクリートの補強材として使った場合の効果」の実証実験を2008年6月13日から開始した。
 実証実験の第1段階ではコンクリートではなくモルタル(注)を使用した。その結果,モルタルの強度が1.7倍に向上したのと,モルタルの製造工程を著しく効率化することができたという。
 CNTをモルタルにうまく混合させるために,CNTに化学的な処理を加えて液状にした補助添加剤を使うのがポイント。CNTを液状化させたことにより,モルタルに均一に混ぜることができた。この補助添加剤をモルタルに数%含ませ,10mm厚・1平方メートルのモルタル・パネルを作成した(図2)。常温で放置しているが,5カ月経った2008年11月でもひび割れは起きていない。「計算によると従来のモルタルの約1.7倍の強度がある」(山本氏)。
図2:10mm厚CNT含有モルタル
図2:10mm厚CNT含有モルタル
また,通常のモルタルの製造過程では,硬化の過程でモルタル上に水分が浮かび上がり,施工時に比べて体積が減ってしまうので,いったんこの浮かび上がった水を除去し,再度モルタルを塗るということが行われていた。CNT含有モルタルの場合,CNTが高い保水性を持っているので,1回の作業で硬化までもっていける。
 CNTがモルタルやコンクリートの強度を向上させる添加剤として使用されるようになれば,大量の需要が見込まれるが,コンクリート向けの添加剤として広く使われるためには,「生産コストで数百円/kg台まで持っていくことが必要」(大網氏)という。但し,特殊用途のコンクリートについては,既に実用化に向けた検討が進んでいる。
 例えば,ガス会社のLNGガス・プラントは,液漏れ・拡散を防止するためにプラント周囲に“防液堤”を張り巡らしている。面積は2,000〜4,000平方メートル,高さは数メートルになる。現在は,通常のモルタルを使っているが,数年ごとにひび割れの補修などの作業が必要になっている。CNT含有モルタルならば補修の頻度を減らすことができるだろう。
 今後両社は,CNTの持つ軽量,耐熱性,熱伝導性などを利用したコンクリートを試作し,性能を評価する予定である。

海外からのプラントの引き合いが急増
 2008年2月に開催された「ナノバイオExpo 2008」に本プラント技術とCNTを出展したところ,出展内容を見た東南アジア諸国の政府や企業から数多くのプラントの引き合いが来たという。
 東南アジア諸国は,本プラントで生産するCNTの原料となる天然ガスが豊富で,かつ工場から出るメタンガスの処理に苦慮している。「例えば,マレーシアにプラントを輸出して彼らがCNTを生産すれば,300〜500円/kgで日本に逆輸入できる。原料のメタンガスが豊富にあり,人件費の安い東南アジア諸国だからこそ可能であり,ODA(Official Development Assistance:政府開発援助)を活用することもできる。この価格であればコンクリート強化剤としても採算に乗せることができる」と山本社長は将来のビジネスモデルについて語る。
 京都議定書の約束期間がスタートし,日本においてもCO2排出削減が待ったなしの状況になっている中,本プラントのカーボン・マイナスという特徴が大きな関心を集めている。


【問い合わせ先】
株式会社日本エコカーボン
http://www.carbonnanotube.jp/cgi_count.cgi

注:モルタルとは
セメントや石灰を砂と混ぜ,水で練った建築素材のこと。これに砂利を加えるとコンクリートになる。モルタルはコンクリートに比べて応力に弱く,ゆがみが生じやすい。




オープンイノベーション・フォーラム

オープンイノベーション静岡

トピックス
【座談会】レアアース泥の採泥・揚泥は戦略技術、焦らず段階を踏んで確実に商用化を目指す

【座談会】安定・潤沢な国産レアアースの利用に、日本の産業界は飛躍の未来を感じている

IoT、大手自動車メーカーが製造ラインに導入約60万円のシステムで不良品の発生を大幅低減

人気記事ランキング(2017年10月-12月)















オープンイノベーションコラム

オープンイノベーション・フォーラム




| 産業イノベーションHOME | 技術&事業インキュベーション・フォーラムHOME |
Copyright (c) 2005-2013 TechnoAssociates, Inc. All rights reserved.

INTERVIEW Index ブレークスルー技術Index 提案Index コラムIndex イベントIndex お問い合せ