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DLCコーティングにも価格破壊の波
中川製作所,従来より大幅に低コスト化したDLCコーティングの実用化に成功


[2009/05/28]

 中川製作所(本社:三重県津市,中川雅弘代表取締役)は,従来比約3分の1の価格でDLCコーティングを実現可能な装置を開発したことを明らかにした(図1)。

 DLCコーティングとは,ダイヤモンド・ライク・カーボン(diamond-like carbon,DLC)というダイヤモンドとグラファイトの結合を混在させた非晶質(アモルファス)の高硬度で,低摩擦の炭素膜を金属などの素材の表面に成長,密着させる技術である。DLCコーティングは,高硬度,低摩擦,耐摩耗性,耐食性,高離型性などの特徴を持つため,切削加工用の工具や金型,治具,金型,刃物,ペットボトル,ハードディスクなど様々な産業分野で応用が可能である。中川製作所のDLC技術は,経済産業省より平成18(2006)年度の「戦略的基盤技術高度化支援事業」として認定されている。

 中川製作所は,三重県津市に本拠地を置く企業で,紡績針(コーマー)やカーペット織機などの製造,金属の精密加工,およびセラミックスやガラス,シリコンなど難削材の微細加工などを手がけている。特に,紡績針のメーカーとしては国内唯一の存在であり,欧州の競合他社と国際市場で渡り合うというグローバルな事業展開を行う側面も持つ。

 中川製作所が今回明らかにしたDLCコーティング技術は,同社が紡績針の耐久性や滑らかさなどの改善のために自社で研究開発を行ってきたもので,自社開発技術「パルス放電プラズマCVD方式」を採用している。同社のパルス放電プラズマCVD装置では,真空チャンバー,電源,成膜方法などの設計を見直すと共に,低コストな標準品や大量生産部品を採用することにより大幅な低コスト化を実現した。その結果,従来のDLCコーティングでは1億〜1億5千万円はかかっていた装置をその3分の1程度の価格で提供することが可能になったという。

図1 中川製作所のパルス放電プラズマCVD方式DLCコーティング装置
図1 中川製作所のパルス放電プラズマCVD方式DLCコーティング装置
写真のほぼ中央にある独自の角型真空チャンバーの中でDLCコーティングを行う



低コストで実用的なDLCコーティング技術の開発を目指し課題を克服

 しかし,中川製作所のDLC技術開発も,すべて順風満帆に何の問題もなく成功したというわけではない。

 同社では,過去5年ほどに渡ってパルス放電プラズマCVD方式DLCコーティング技術の研究開発を進めており,2007年には同方式に関する特許もJST(科学技術振興機構)により取得されており,独自のチャンバーに関する特許も申請中である。この方式は,放電をパルス化し,パルスの周波数とデューティ比を広範囲に変えることができる。そのため,成膜条件を広範囲に変えることができ膜質の制御も容易,パルスのピークパワーを利用することにより密着性の向上や低温での成膜も可能,などの従来の連続放電の場合に比べて優れた特徴を有している。ところが,実用化のためには,コートする部材の材質と表面の状態やコーティング条件(原料ガスの種類,組成,圧力,温度,パルスの周波数とデューティ比など)による膜質,密着性,耐久性に関するデータと目的に応じた方法の蓄積が必要であった。

 愛知教育大でダイヤモンド膜とDLCを研究,その後同社に招聘されパルス放電プラズマCVD方式DLCコーティングの研究開発を主導した野田三喜男顧問と,園田雅紀開発担当者は,「今年の1月になって,ようやくこれまでのデータの蓄積と中間層の生成や原料ガスの組成による膜質と密着性の改善についての問題を解決できたことで,この技術の実用性にメドがついた」という。

 DLCコーティングでは,異種材料の接合になるため,素材表面処理と中間層の形成により剥離を防ぐ技術に各社のノウハウがある。また,コーティングされるDLC膜も原料ガスの組成や成膜時の条件により,硬度,摩擦係数,耐久性などの特性が大きく異なる。

 経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業」による助成とアドバイザー諸氏の助言,JSTによる支援,三重県産業支援センターによる支援,三重大学の鈴木泰之教授らの支援と共同研究などにより本開発は進行しており,産官学の共同による新事業の創生という政策の成果であるともいえよう。

中川雅弘雅彦・代表取締役
 
顧問の野田三喜男氏
 
開発課の薗田雅紀氏
中小のものづくり企業にもDLCを使ってほしいと話す中川製作所の中川雅弘・代表取締役
中川製作所でDLCコーティングの技術開発をサポートする中川製作所・顧問の野田三喜男氏
DLCコーティングの開発に従事する,中川製作所 開発課の薗田雅紀氏



「日本国内のものづくり中小企業の方々にDLCで貢献したい」

 中川製作所では,これまで同社が数年間にわたって培ってきた技術開発によって,同社のDLCコーティング技術やノウハウに自信を見せている。元来,自社の紡績針の改善のために開始された技術開発であったが,現在同社では新規事業としてDLCコーティング装置の製造販売,DLCコーティング加工の受託サービス提供なども開始した。

 DLCコーティングは従来高価であったため大企業などが中心となって採用してきたが,装置がもっと安くなれば国内の機械加工,摺動部材,樹脂成型金型などの分野の中小企業がもっと活用できるはずだという。同社の中川社長は「たとえば,樹脂成型金型に当社のDLCコーティングを使えば,摩擦係数が小さくガラス繊維に対しても耐久性があるため,離型性が大きく改善でき,成形時間の短縮やコスト削減に大きな効果がある。中小企業の方々に,当社が開発した低コストのDLCコーティング技術で貢献したい。樹脂成型分野などの業者の方に,是非当社のDLCを使って差異化や高付加価値化を実現してほしい」と話す。

 さらに,これまでは一部の特殊な産業用途にしか使いにくかったDLCコーティングが,大幅に低価格化されることにより,これまでは適用が想定されなかった一般消費者向けの製品などにも,用途がぐっと広がる可能性も出てきたと言える。


【資料請求,問い合わせ】
中川製作所
ホームページ URL: http://www.nks-j.com/



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