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間伐材・廃材から水素源を製造する「パイロコーキング」技術で環境大臣賞受賞
〜水素貯蔵技術が実現する循環型水素エネルギー社会〜


[2009/08/18]
バイオコーク技研株式会社 上杉浩之社長
バイオコーク技研株式会社
上杉浩之社長

 水素貯蔵体金属の開発で知られるバイオコーク技研株式会社(本社:東京都港区)が,間伐材や廃材から簡単なプロセスで水素を製造する「パイロコーキング技術」の開発で平成21年の産学官連携功労表彰・環境大臣賞を受賞した。パイロコーキング技術は,環境省の平成19年度地球温暖化対策技術開発事業他とのプロジェクトを経て,九州大学 先導物質化学研究所 先端素子材料部門の林潤一郎教授※1との共同開発により開発された。「自重の20%以上の水素を発生させる特徴を有し,安全に安価で運べる有望な水素源を取り出すことのできる技術」として高く評価され,今回の受賞につながった。バイオコーク技研・代表取締役社長の上杉浩之氏に,パイロコーキング技術の特徴と同技術を活用した将来像を聞いた。

※1 2009年3月まで北海道大学 エネルギー変換マテリアル研究センター 教授。パイロコーキング技術の特許の多くは当時所属していた北海道大学での共同出願。



間伐材や廃材から原料の無駄なく「水素」を取り出す

 パイロコーキング技術の最大の特徴は,「原資が持っているエネルギーを無駄なく利用し切る」ことにある。製造プロセスも簡単だ。始めに,間伐材や廃材のチップを500℃から600℃で加熱処理し,木炭,タール,ガスなどに分解する(STEP1)。タールを含んだそのガスを更に600℃〜800℃に加熱した炉の中でアルミナに吹き付ける(STEP2)。するとタール成分は即時に分解され,炭素がアルミナに胆持された黒い物質が生成される。これが「バイオコーク」だ。
 バイオコークは,高温で水蒸気を吹き付けるだけで水素と一酸化炭素に分解されるため,水素エネルギー源として活用できるわけだ。パイロコーキング技術による水素の製造プロセス(図1)で発生する木炭(STEP1で発生)やガス(STEP2で発生)はエネルギーとして再利用できる。水素を保持するバイオコークを作り出す過程で触媒として使用するアルミナも,水素を取り出した後に再びその触媒として循環利用できる。
 林潤一郎教授は,「バイオコークは,水素が安定してアルミナに胆持されているため爆発するなどの危険性が極めて小さく,持ち運びも容易。簡単なプロセスで製造できることから水素をエネルギー源として利用する担持体として有効であり,コスト面でも大いに期待できる。熱分解で製造する木炭も,バイオコークと同様の水素源となる。今後,タールを発生しない炭化物」の地域活用システムが普及することを期待している」と語る。

図1.「バイオコーキング技術」による水素の製造プロセス図
図1.「バイオコーキング技術」による水素の製造プロセス図


安全で持ち運び簡単「水素カートリッジ」

 上杉社長の構想はパイロコーキング技術だけで終わらない。「山の幸・海の幸」と名づけたプロジェクト(図2)という水素循環社会構想を描いており,間伐材や廃材から水素を取り出す今回のパイロコーキング技術の開発が「山の幸」プロジェクトにあたる。 パイロコーキング技術が開発し注目を集めているもう一つの技術が水素貯蔵金属の量産だ。これは北海道大学大学院の秋山友宏教授と共同で水素の貯蔵に使える水素化マグネシウムの量産技術を開発したもの。1g当たり最大1.9リットルの水素を貯蔵できる世界トップレベルの技術として注目されている。

図2.「山の幸・海の幸」プロジェクト全体図
図2.「山の幸・海の幸」プロジェクト全体図


 上杉社長が「海の幸」プロジェクトと名づけているのが,海中に無尽蔵に存在するマグネシウムを取り出し,「山の幸」で収穫した水素を合わせて水素貯蔵合金(MgH2)として利用とする構想。水素は次世代燃料の有力候補の一つとして期待されているが,水素は気体の状態では非常に燃えやすく,液体の状態ではマイナス253℃以下という超低温になるため,その取り扱いが難しい。いかに水素を安全に簡単にかつ安価に貯蔵できるかが,水素エネルギーの実用化に向けた大きな課題とされる。
 これまでの研究では,水素化マグネシウムから再び水素を取り出すために290℃以上の高温が必要であったが,バイオコーク技研は,水素化マグネシウムを加水分解するだけで簡単に水素を取り出すことに成功した。一般の水素貯蔵合金では100gあたり2g程度しか水素を貯蔵することができなかったが,この水素化マグネシウムでは加水分解する時に使う水に含まれる水素も一緒に取り出すため,合計15.2gの水素を利用することが可能になった。実際に,業務用ブロアー製造で世界20%のシェアを持つ株式会社カーツ(本社:岡山県岡山市)が,この水素カートリッジを活用した燃料電池搭載ブロアーの開発を進めており(2009年2月10日同社発表),様々な機械・機器で実用化される未来も決して遠くは無い状況になりつつある(図3)。


「山の幸」プロジェクトが実地テストを開始

「山の幸」プロジェクトについては環境省のインキュベータ事業の指定を受け,自治体の協力のもとパイロコーキング技術によるバイオコーク製造プラントを5ケ所,そのバイオコークを収集して水素を抽出する工場を1ケ所建設する予定でいる。実用化に向けての細部技術の実証や更なる改善,コスト計算等の検証が主な目的だ。上杉社長は,「今後プラント設備・建設に協力してくれる自治体やパートナーをできるだけ拡大して実用化を益々進めていきたい」としている。

図3.水素の貯蔵「水素カートリッジ化構想」
図3.水素の貯蔵「水素カートリッジ化構想」






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