技術&事業インキュベーション・フォーラム

TOPページへニュースへ連携提案へ注目技術&事業コラムへお問合せ


ダイオキシンや一酸化炭素が発生しない竪型ゴミ焼却炉
海外市場にも広がる日本発の環境技術


[2009/10/06]

 焼却炉メーカー・プランテック(大阪市,勝井征三社長)が開発した竪型ゴミ焼却炉「バーチカル炉」がドバイの医療廃棄物処理施設で2009年6月に竣工した。バーチカル炉は従来の焼却炉と比べて燃焼効率が高く,発生するCO(一酸化炭素)やダイオキシンがヨーロッパ水準の厳しい基準値を大きく下回る点が高く評価された。日本でも京都大学医学部附属病院や東京臨海リサイクルパワーなど全国18カ所で導入が進んでおり,世界各国からも引き合いが来ているという。プランテックにバーチカル炉の技術とビジネスモデルを聞く。

図1  バーチカル炉の内部構造図
図1 バーチカル炉の 内部構造図
画像拡大

数種のゴミも分別不要

 バーチカル炉は,廃棄物(ゴミ)の投入から焼却灰を排出するまでの全過程を垂直方向に配置している(図1)。ゴミは約900℃の燃焼室に投入された後,4時間以上かけてゆっくり自重で降下しながら完全燃焼する。燃焼用の空気は,燃焼室から出る熱を利用して約300℃まで高めて炉の下側から吹き込む。空気はゴミの燃焼により新たな熱量を得ながら上昇し,上層のゴミ中の水分を蒸発・乾燥させていく。
 バーチカル炉は熱効率が高いため,水分を含んだ汚泥や食品残さなどの“低カロリー廃棄物(650kcal/kg程度)”を,従来必要だった補助燃料なしで完全燃焼できる。一方,プラスチックなどの“高カロリー廃棄物(7000kcal/kg程度)”も時間をかけてゆっくり燃焼するため完全燃焼できる。従来型焼却炉は,ゴミの発熱量(カロリー)に応じて空気量を細かく調整しなければならず,排ガス安定のためにゴミを分別する必要があった。さらに,空気量の調節が難しいので,ゴミが不完全燃焼しCOが発生するなど問題も多かった。バーチカル炉は空気量の調整が不要で,幅広い種類のゴミを一度に焼却する“混焼”が容易に可能である。


医療廃棄物も完全燃焼

 バーチカル炉は,安定焼却が難しいとされていた医療廃棄物も完全燃焼できる。医療廃棄物には不燃物や難燃物,易燃物が混在しており,それぞれのカロリーも500〜10000kcal/kgと一般廃棄物よりもはるかに幅広い。従来型焼却炉は「破砕や攪拌などの前処理」,「複雑な空気量の調整」,などが必要だったが,バーチカル炉はこれらの必要がない。
 1994年,京都大学医学部附属病院がバーチカル炉の性能を認め,医療廃棄物専焼炉(専用焼却炉)として1号機を導入した。プランテック社長の勝井征三氏はバーチカル炉導入の経緯を「従来型焼却炉と比べて炉内の部品が少なく長寿命である点も決め手となった」と語る。京大病院のバーチカル炉は定期的なメンテナンスで15年間稼働し続けている。2008年には京大病院が10年間に及ぶバーチカル炉の使用期間の延長を決めた。

図2 東京臨海リサイクルパワー「スーパーエコプラント」
 図2 東京臨海リサイクルパワー「スーパーエコプラント」

 2002年の「東京都スーパーエコタウン事業」が公募され,東京都より選定を受けた東京臨海リサイクルパワーでは2基のバーチカル炉を採用,2007年4月から稼働している(うち1基はバックアップ用)。同事業に参加した東京電力など民間5社が出資した東京臨海リサイクルパワーは,産業廃棄物と医療廃棄物を個々の専焼炉にて焼却処理し,ボイラ発電やガス化溶融によるスラグなどをリサイクルしている。
   このバーチカル炉で,東京都で1日に発生する感染性医療廃棄物の2分の1に相当する量を処理できるという(図2)。同社プラント部長の阿部進氏は,バーチカル炉を採用した決め手について(1)京大病院での10数年におよぶ稼働実績,(2)有害物質の排出量,(3)メンテナンス性,の3点を挙げた。同社では,法規制値よりも厳しくダイオキシンやCOなどの有害物質の排出量を規制している。阿部氏は「京大病院での10数年におよぶ稼動実績と最も厳しい排出規制基準をクリアでき,メンテナンス作業が他の方式と比べて格段に容易なことが採用の決め手となった」と語る。

 2009年までにバーチカル炉は全国13カ所で稼働している。普及のきっかけの一つとなったのが,阿部氏も指摘している環境汚染物質として話題になったダイオキシンである。


ダイオキシン発生量は基準の10万分の1以下

 ダイオキシンは,ゴミ焼却の過程で不完全燃焼したばいじん(飛灰など)に塩素が結合することなどで発生する。国は「ダイオキシンが人体や環境に重大な影響を与える」として1990年,ゴミ焼却施設に対して「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン」を発令,さらに1999年には「ダイオキシン類対策特別措置法(特措法)」を定めて厳しく規制した。これによって焼却炉メーカーは「ダイオキシン対応」が求められるようになったが,バーチカル炉はダイオキシンが問題になる前から,ダイオキシンに対応していた。勝井氏はバーチカル炉の対環境性能について「最近完成したプラントでゴミを焼却した際に発生するダイオキシンの量は,基準値の10万分の1程度ときわめて少ない」と語る。バーチカル炉は特措法施行をきっかけに注目を浴びるようになった。


ドバイの医療クラスターで最高の評価

 2007年9月には,アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ市が,医療廃棄物の専用焼却炉(専焼炉)としてバーチカル炉の採用を決定,2009年6月に竣工している。ドバイは,中東諸国の医療産業の中心となる「Dubai HealthCare City(DHC)」を計画しており,海外の関連企業を積極的に誘致している。
 ドバイは,今後DHCで医療廃棄物が増えることを予想し,医療廃棄物専焼炉を公募した。採用の技術コンペには,世界各国12のプラントが参加したが,バーチカル炉は最高の評価を得た。ドバイの公害防止基準は総じて日本より厳しい。有害物質がほとんど発生しないことが採用の決め手となった。プランテックは,ドバイへのバーチカル炉導入をきっかけに積極的に海外展開する予定である。


巧みな知財戦術で海外展開を担保

 同社は事業リスク・マネジメントの一環として特許権などの知的財産を重視している。バーチカル炉の技術の核心部分は,日本だけでなく米国を中心に主要国で特許権を取得している。勝井氏は「バーチカル炉は組み立てにノウハウが必要。海外企業に模倣されることはない」と自信を見せる。
 日本発の環境技術が世界に向けて飛躍しそうだ。



【問い合わせ先】 プランテック
ホームページ URL:http://www.plantec-kk.co.jp/




オープンイノベーション・フォーラム

オープンイノベーション静岡

トピックス
パナソニックの住宅関連事業を支える耐酸被覆鋼板、接着技術や樹脂コーティング法に独自ノウハウ

【座談会】レアアース泥の採泥・揚泥は戦略技術、焦らず段階を踏んで確実に商用化を目指す

IoT、大手自動車メーカーが製造ラインに導入約60万円のシステムで不良品の発生を大幅低減

人気記事ランキング(2018年8月)










オープンイノベーションコラム

オープンイノベーション・フォーラム




| 産業イノベーションHOME | 技術&事業インキュベーション・フォーラムHOME |
Copyright (c) 2005-2013 TechnoAssociates, Inc. All rights reserved.

お問い合せ イベントIndex コラムIndex 提案Index ブレークスルー技術Index INTERVIEW Index topへ テクノアソシエーツへ