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大阪大学発ベンチャーのナノフォトン
事業成長戦略に舵取り、外国出願の特許も重視へ


[2010/05/10]

 ナノフォトン(大阪市)は、2003年2月3日に設立された大阪大学発ベンチャー企業だ。大阪大学大学院工学研究科の河田聡教授の研究成果を基に、独自の高性能なレーザーラマン顕微鏡を製品化する目的で設立された。  同社は2008年11月に二代目の代表取締役社長として謝林氏を迎え入れ、成長期の事業戦略を取り込んだステージに移行した。創業直後の研究開発重視のステージから、独自の高性能レーザーラマン顕微鏡を主力商品に据えた事業重視のステージに進むための経営陣の入れ替えだった。  大学発ベンチャー企業が成功するカギの一つは優れた経営人材の確保と、長年いわれてきた。しかし、大学発ベンチャー企業が成長に応じて実際に経営人材を入れ替えている企業は、実はあまり多くない。これはという優れた人物がいたとしても、日本では、その時の地位を捨ててまで、リスクの高い大学発ベンチャー企業の経営陣になかなか転職してくれないからといわれている。
【図1】 ナノフォトン代表取締役社長の謝林氏

 謝社長は元々、ナノフォトンとは縁がなかった。同社のファウンダーであり会長である河田教授が経営手腕に優れた人物を探して見いだした人物だった。  謝社長は中国の大学院の修士課程を修了し、1985年に国費留学生として東京大学大学院工学系研究科の博士課程に進学した。ここで航空工学を学び、博士号を取得した。91年に当時の科学技術庁航空宇宙技術研究所(NAL、現独立行政法人 宇宙航空研究開発機構、JAXA)に就職した。94年には機械メーカーのノーリツに転職し、基礎研究所で研究開発者として腕をふるった。  謝氏は研究開発に携わる内に、事業化のマネージメントにも興味を持ち始めた。研究開発に携わった燃焼器を製品化するために、ノーリツの事業部がある兵庫県明石市に異動したのを契機に、MOT(技術経営)などを学ぶためにグロービス経営大学院の大阪校に入学した。謝氏は2年間で無事修了し、修士号を獲得した。この2年間は「睡眠時間が3〜4時間とハードな日々を過ごした」という。これは高い志があってはじめてできることだろう。

 河田教授は持ち前の好奇心の多さから、専門分野以外にも幅広い人脈を持つ。ナノフォトンの事業を本格化させるには、研究者出身の第一代目の大出孝博社長から「経営に強い人材に切り替えるため、優れた経営人材を探している」と、親しい友人や知人の何人かに伝えた。その一人がグロービスの事務局責任者だった。

 2008年夏に、謝氏はグロービス事務局責任者から、「ナノフォトンという大学発ベンチャー企業が社長を探している」と聞いた。必要条件は技術も経営も分かる人物ということだった。経営者として財務に強いことが求められた。謝氏は、このまま研究開発者を続けるか、ベンチャー企業の経営者として辣腕(らつわん)をふるうかどうか迷った。同年7月に謝氏は河田教授と面会し、その時の熱意にほだされて、社長就任を快諾した。10月1日にナノフォトンに特別顧問として入社し、11月17日に株主総会を経て代表取締役に就任した。

 2008年のナノフォトンの売上高は約3億5000万円だったが、代表取締役社長に就任後に3年間の荒い事業計画を立案し、売上高50億円ぐらいまで急成長をさせる構想を練っている。ある程度の事業規模を持たないと、企業として安定しないと考えてるからだ。その細部は現在、詰めている最中だ。

 謝社長は、この売上高の根拠を以下のように説明する。現在、レーザーラマン顕微鏡の市場規模は国内だけで約30億円と推定している。同社の主力製品である「RAMAN-11」は、高画質のラマン観察像を高速で観察できる高性能が売り物だ。「独自の走査系光学システムを開発し、ラマン観察像を短時間で作成できるように高性能化した」という。
【図2】 主力製品のレーザーラマン顕微鏡「RAMAN-11」(画像提供:ナノフォトン)
 
 「RAMAN-11が高性能なことは、バイオテクノロジーやナノテクノロジー分野で有力な観察ツールと判断され、発注数が増え始めた。「現在、インドや米国などの海外の大学や研究機関、企業は、RAMAN-11が高画質のラマン像を迅速に作成できる点を高く評価している、このため、今後は海外への販売実績を強化していく」という。この結果、外国への特許出願も力を入れていくことが競争力強化にとって重要になるとみている。

 ナノフォトンは創業当初に研究開発に力を入れた結果、いろいろな独創的な製品を展開している。しかし、謝社長は当面はRAMAN-11に注力し、その販売実績を伸ばすことに経営資源を集中させるという。競争力のある製品で経営基盤を固めることが急務と判断したからだ。
 そのためには社員数も数倍に増やし、研究開発型企業からの脱皮を図る人材育成に努めるという。現在、社員一人をグロービス経営大学院に通わせ、財務などの必要科目を学ばせ始めたところだ。これまでは研究開発重視だったため製品開発での独自性を発揮することに力点を置いてきたが、今後は「クライアントのニーズに対応する技術力と対応力の向上を図っていく」予定だ。このため、ビジネスシーンでの交渉力などコミュニケーション能力を高める人材育成を目指す。「企業の成長スピードを早くすることを重視する経営を心がける」という。

(技術ジャーナリスト 丸山正明)




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