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150度以下の低温廃熱から電気エネルギーを回収するロータリー熱エンジンを開発

[2010/05/21]

  日本の産業分野では、原油換算で年間、約2億キロリットルものエネルギーが消費されているが、約70%は100〜300度の低温廃熱エネルギーであり、その多くが未利用のまま環境中に廃棄されている。二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減が政府目標として掲げられ、更なる温暖化防止策が産業界にも求められる中にあって、低温廃熱の利用が大きなテーマになりつつある。
 株式会社ダ・ビンチ(本社:奈良県大和高田市、研究所:三重県名張市、東謙治社長)は、三重県のベンチャー総合補助金(平成17年度)の支援対象企業になるなど、熱利用技術では評価の高い研究開発型ベンチャー企業だが、このほどロータリーエンジン(バンケル型)の技術を活用して150度以下の低温廃熱から電気エネルギーを回収する「ロータリー熱エンジン」を開発した。

 ダ・ビンチは、熱利用技術分野に特化し、ペルチェ式冷却装置やサーマルコンテナー(熱移送素子)、業務用CPUクーラーといったユニークな製品・技術開発をてがけてきた。同社は、回収されずに環境中に廃棄されている低温廃熱の利用に着目し、東京大学、関西電力との共同研究を通じて「ロータリー熱エンジン」(RHE:Rotary Heat Engine)の試作モデルの開発に成功した。
 同社の東謙治社長は、低温廃熱の回収が日本において環境問題の中心課題になることを見こし、平成10年から基礎技術の研究・開発を行ってきた。


150度以下の低温廃熱を回収するオンリーワン技術

  「日本の製造業の廃熱利用は世界トップクラスですが、150度以下の低温度帯の廃熱回収には当時から誰も手掛けていませんでした」(東謙治社長)。太陽光、風力エネルギーの利用も進んでいるが、自然再生エネルギーの問題は出力が安定しないこと。また、自然エネルギーを大規模に活用するためには、蓄電池やスマートグリットのような別の蓄電装置やシステムも必要になってくる。それに対し、廃熱は常に一定して安定供給される熱資源になりうる。「日本の工場などで使われているエネルギーの約4割は廃熱として捨てられており、これをうまく利用できれば、日本の環境問題の解決に大きく道を開くことができる」(東謙治社長)と低温廃熱の回収の重要性を強調する。

 しかし、実際に低温の廃熱回収をどのようなシステムによって行うかは試行錯誤が続いた。300度程度の温度帯では、密閉した容器内のヘリウムガスを廃熱で暖め、ピストン運動に変えて発電する「スターリングエンジン」という機構が既に実用化されていたが、150度以下では使い物にならなかった。
 そこで東社長が目をつけたのが、ロータリーエンジンだった。外部からの廃熱により作動液を気化し、その圧力でローター(回転子)を回転させ、エネルギーを失った後に再び液体に戻るというサイクル(ランキン・サイクル)を繰り返すことでローターを連続回転させて発電する。気化エネルギーをそのまま回転運動に転化することができるのでロスが少なく、しかも、小さな廃熱のエネルギーであってもローターを動かすことができる。理論的にはロータリーエンジンの仕組みを使えば、150度以下の廃熱でもエネルギーを取り出すことができるとわかった(図1)。


図1:ロータリー熱エンジン(RHE)は150度以下の廃熱の回収を可能に
 


ロータリーエンジン開発のマツダの技術者も参加

  難題はロータリーエンジンそのものだった。実用化に耐えうるものにするためには、エンジン自体の駆動効率を飛躍的に高める必要があったのだ。しかし、「社員19人のベンチャー企業にとって、ロータリーエンジンの開発までカバーしろというのはとても不可能だった」と東社長は当時のことを振り返る。東社長は思いあまって、ロータリーエンジンの本家本元、広島のマツダに飛び込むが、そこで田所朝雄氏というエンジニアに出会う。田所氏はマツダを既に引退していたが、RX-7のロータリーエンジンの設計を手がけ、マツダをルマン24時間耐久レースで優勝に導いた伝説の技術者だった。
 田所氏は、東社長が持ち込んだロータリーエンジンの試作品を見るなり「ロータリーエンジンを外燃機関として使えば、環境技術として新たな可能性が拓ける」と直感し、「技術者の血が騒いだ」(田所氏)という。田所氏が技術顧問としてダ・ビンチ社のプロジェクトに参加し、開発のスピードは飛躍的に向上した。

 完成した試作モデルは、ロータリーエンジンのランキン・サイクルに加え、ゼーベック効果を利用した温度差発電や熱構造設計(サーマル・デザイン)の技術など、ダ・ビンチがこれまで開発してきた技術の集大成となっており、作動液の選択によって、80度からの廃熱を回収できるようになった(写真1写真2)。


 
写真1:ロータリー熱エンジン試作モデル(ロータリー部分)
 
写真2:発電機と組み合わせた試作モデル


 技術的な目処は立ってきたが、実用化にむけてはまだ課題が山積している。小型化と量産体制の確立もそのひとつ。コンパクトにすることで、廃熱の回収ポイントが飛躍的に広がり、工場、焼却炉の廃熱回収はもちろん、温泉熱、あるいはコージェネレーションシステムの補助発電エンジンなどへの適用などが期待できるだろう。現在の試作モデルは、1kw級の熱エンジンだが、小型化することで200wから設計が可能だという。
 ダ・ビンチでは、既に大手企業の工場で実用化試験に入っているが、年内に出力30kwのシステムの実用化を目指す。

 実用化のためには、量産化により装置自体のコストを下げ、投資回収を早める必要があるが、この点については、今後、装置メーカー等とのアライアンスにより実現していくという。年内実用化を想定している出力30kwのロータリー熱エンジンでは、24時間稼働させた場合、約3年間で投資回収できることが開発の目標値になっている。
 また、環境分野の別用途としては、太陽熱発電のコア技術としても期待されている。「日本では太陽光発電ばかりが注目されているが、砂漠のような場所では発電効率が逆に落ちてしまう。当社の技術を使えば、灼熱の太陽のエネルギーを効率的に電気エネルギーに転換できる」(東社長)。
 ダ・ビンチのロータリー熱エンジンの技術は、低温廃熱回収にとどまらず、幅広い環境分野への応用可能性を秘めているといえるだろう。

(加藤芳男=テクノアソシエーツ)

●株式会社ダ・ビンチ ホームページ
URL:http://www.davinci-mode.co.jp/




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