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放射性物質に汚染された土壌の大幅な減容化と不溶化を実現する一貫処理システムを開発
ゼネコンなど関連企業に幅広い連携を呼びかけ

[2012/02/20]

 東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所事故で放出された放射性物質による環境の汚染が生じている。土壌などの除染作業が本格化する中、隠岐商事(本社は島根県隠岐の島町、鳥取・島根両県に事業所を展開)が開発した除染技術が注目されている。土木、建設事業を軸に、造成工事などで発生する濁水処理や重金属などで汚染された土壌洗浄の処理事業に取り組む同社が、その経験を生かして開発したのは、放射性セシウムに汚染された土壌や除染によって生じる排水などから放射性セシウムを分離、減容化し、不溶化する一貫処理システム。汚染土壌や汚染水などに吸着凝集材を添加し放射性セシウムを分離する。除去物を焼成しセラミック化することで、土壌量を大幅に減らすだけでなく、放射性セシウムを内部に封じ込め、その溶出を抑える。被災地の早期の復興に役立てたいという考えだ。

汚染土壌量を10%以下まで低減、外部への放射性物質の溶出を抑制

 同社が開発したシステムによれば、汚染土壌から放射性セシウムを分離し、土壌量を大幅に減らすだけでなく、放射性セシウムの外部への溶出をも抑えることが可能となる。「汚染土壌からの放射性物質の分離、減容化には様々な方法が提案されているが、不溶化処理までおこなっているものはない」と開発責任者である同社取締役松江支店長の高木紘治氏は話す。また、汚染土壌の減容、不溶化処理の「大幅な低コスト化を実現できる」(高木氏)という。
 同社が開発したシステムは、かくはん機付き水槽、サイクロン付き振動ふるい機、フィルタープレス、焼成装置などから構成される。また、放射性セシウムの吸着材と凝集材がキーとなる。

 処理手順は、次のようになる(図1)。
 汚染土壌をかくはん機付き水槽に入れ、水と放射性セシウムの吸着材を投入し、かくはんする。
 吸着材には、ゼオライトの一種であるモルデナイトを使う。ゼオライトがセシウムの吸着に有効であることは以前から知られていたが、特に、ゼオライトの一種であるモルデナイトは、高いセシウム吸着性を示すという。また、島根県が、天然モルデナイトの国内有数の産地であることから、島根県産のモルデナイト(イワミライト)を採用した。モルデナイトの粒径は、本システムに合わせて特別に調整した。
 かくはん後、サイクロン付き振動ふるい機にて、75μm以上の砂れきと、74μm以下の放射性セシウムを含む土壌とをふるい分ける。浄化した土壌は無害化土壌として採取場所に戻す。
 放射性セシウムを含む土壌は、ゼオライト、アルミニウム化合物、カルシウム化合物などからなる凝集材「ネスナイトMC-2」を添加し、凝集、分離する。
 凝集材「ナスナイトMC-2」は、隠岐商事が今回のシステム開発に合わせて新たに開発した(図2)。ゼオライトが吸着しきれなかったセシウムを「だめ押しで吸着する」(高木氏)とともに凝集沈殿物のセラミック化を容易にする効果がある。


図1●汚染土壌の減容・不溶化処理フロー
図1●汚染土壌の減容・不溶化処理フロー

図2●「ネスナイトMC-2 」、放射性セシウムを吸着・凝集する
図2●「ネスナイトMC-2 」、放射性セシウムを吸着・凝集する

 底部に沈降し、放射性セシウムが濃縮したスラッジは、フィルタープレスで脱水し、脱水ケーキ化する。
 脱水ケーキは、押し出し成形機で一定の形状に成型され、焼成炉にて1180℃以下の温度で焼成され、セラミック化される。
 上水にあたる凝集分離液は、放射性セシウムを含まない。回収して、かくはん工程で再利用することも可能となる。

 同システムでは、処理装置を除染現場まで持ち込み、脱水ケーキ化処理までを現地でおこない、脱水ケーキを別の場所に設置された焼成施設まで運んで焼成処理する。これら一連のプロセスによって、汚染土壌は、花崗岩が風化した真砂土の場合、10%以下まで減容化される。また、セラミック化することで、放射性セシウムを、内部に封じ込め、外部への溶出を抑える。

福島県内での2度の実験を通じて「実証性」を高める

図3●浪江町実証実験現場における装置の設置状況
図3●浪江町実証実験現場における
装置の設置状況

 「実証性」についても自信を深めつつある。同社は、2011年11月と12月の2度にわたり、福島県浪江町と二本松市の2ヵ所で、同システムの実証実験をおこなった。実証実験は、自ら費用負担し実施した。
 11月に実施した実証実験は、原子力発電所事故の警戒区域内にある浪江町末森でおこなわれた。仮置きされたセシウム汚染土壌の分離、減容化、不溶化処理に取り組んだ。12月に実施した実証実験は、福島県二本松市針道でおこなわれた。浪江中学校疎開地にあたる旧針道小学校の側溝にたまったセシウム汚染土壌の分離、減容化、不溶化処理に取り組んだ。かくはん機付き水槽、振動ふるい機、フィルタープレス、焼成装置、そのほか必要な資材は、全てトラック2台で島根県から現地まで運んだ(図3)。
 なお、振動ふるい機は、サイクロン付き振動ふるい機ではなく、丸型の振動ふるい機を、また、焼成装置は、小型の電器焼成炉を使用した。

 実験の結果、浪江町では、1kgあたり4万4600ベクレルあった放射性セシウムは、1kgあたり5040ベクレルにまで低減した。二本松では、1kgあたり23万2000ベクレルあった放射性セシウムは、1kgあたり5600ベクレルにまで低減した。
 浪江町、二本松市のいずれの実験においても、凝集分離液から放射性セシウムをほぼ完全に除去した。
 また、焼成品の溶出試験の結果、放射性セシウムは検出されなかった。放射性セシウムの溶出が抑えられることが示された(図4)。

図4●実証試験における放射性セシウムの測定結果
図4●実証試験における放射性セシウムの測定結果
   (隠岐商事提供資料からテクノアソシエーツが作成)

 除染率向上に向けて、サイクロン付き振動ふるい機を使った実証実験も今後進める。サイクロン付き振動振るい機でふるい分けした場合、「暫定基準の1kgあたり500ベクレル以下まで放射性セシウムを低減できる」(高木氏)という。
 また、国が中間処分場並びに最終処分場を確保するまでは、当該処理フローの最終工程である焼成工程まで行わず、脱水ケーキ(含水率55〜60%程度)までとする。脱水ケーキは、環境省が規定する「除去土壌の保管にかかわるガイドライン」に従い保管する。

今後は、除染によって生じる排水の処理での実用化をねらう

 同社は、今後、「住宅などでの放水洗浄による除染から生じる排水の処理をターゲットに、実用化を急ぐ」(高木氏)という。家屋や建物、道路の除染にあたっては、水を用いた洗浄がおこなわれることもある。その場合、除染によって生じる排水の処理方法が課題となる。同システムは、除染による排水の無害化にも有効であるとみられることから、これを、除染による排水の処理に適用しようというわけである。
 除染による排水からの放射性セシウムの除去プロセスは、次のようになる。
 除染による排水に、ゼオライトを添加、かくはんし、ゼオライトに放射性セシウムを吸着させる。かくはん後、「ナスナイトMC-2」を添加、かくはんし、凝集分離させる。上水(セシウム検出なし又は、基準値以下)は放流し、底部に沈降した放射性セシウムを含む汚泥はろ布で受ける。セシウムを含む汚泥は、国の定める方法にて保管処理を行う。

 除染作業現場にて少量の排水処理に対応した処理装置の開発も進めており、既に試作品を完成させている。排水のかくはんから、凝集分離液の排水、汚泥回収までを一つの装置で処理できる。
 実用化に向けては、自治体やパートナー企業との連携が欠かせない。高木氏は、「被災地の建設業者などパートナー企業に幅広く技術を提供し、早期にシステムを実用化し、被災地の復興に貢献したい」と話す。



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