技術&事業インキュベーション・フォーラム

TOPページへニュースへ連携提案へ注目技術&事業コラムへお問合せ



「『ワイヤレスマイコン』をすべての白物家電に入れたい」
CMエンジニアリング株式会社 代表取締役社長 河井淳氏

[2012/10/04]

 国内の電機大手の多くが軒並み業績悪化に苦しむ昨今、1人気を吐くベンチャー企業がある。LSIの検証サービスやセンサネットワークで使用される無線通信モジュールの開発・販売などを手がけるCMエンジニアリング(東京都品川区)だ。同社は、2010年3月設立のまだ若い会社だが、無線通信モジュール製品の「ワイヤレスマイコン」を2015年までにすべての白物家電に入れたいという壮大なビジョンを描いている。コンピュータや通信の研究開発で30年以上の経験を持ち、製品開発でスティーブ・ジョブズ氏の方法論に共感しているという、CMエンジニアリング代表取締役社長の河井淳氏に同社の事業や製品について話を聞いた。

(聞き手=テクノアソシエーツ 宮崎信行、大場淳一)

―― まず、会社設立の経緯や御社の現在の事業状況について教えて下さい。

 当社の前身は、某通信機器メーカの系列企業会社です。2010年に同社が解散しましたが、多くのお客様から、「御社は良い仕事をしてくれていた。今止められたら困るから是非続けて欲しい」というご要望を頂きました。そこで我々自身で事業を続けることを決め、当社を創業しました。
 現在は、お陰様でLSI検証サービスが安定した事業になっており、業績も伸びています。検証サービスに加え、「ワイヤレスマイコン」と呼ぶ無線通信モジュールや通信用IPコアの設計、関連ソフトウェアの開発なども行なっています(図1)。

図1●ワイヤレスマイコンモジュール「CRESSON MD-920」。小さい基板が高周波処理用のRF回路ドーターボードで、同社はこの回路を将来的にワンチップ化する計画
図1●ワイヤレスマイコンモジュール「CRESSON MD-920」。
小さい基板が高周波処理用のRF回路ドーターボードで、同社はこの回路を将来的にワンチップ化する計画

―― 検証と通信という2つの事業が御社の売上に占める割合はどのようになっていますか。

 現在、この二本柱でLSI検証事業が70〜80%、通信事業が20〜30%位の割合です。検証に関しては、もちろん設計サービスも行なっています。設計ができないと良い検証もできないからです。通信関連では元々イーサネットなど有線の通信技術をやっていましたが、時流で現在は高周波(RF)無線通信が中心です。無線LANをまず手がけ、そこを核にした無線通信と検証という二本柱に絞って市場開拓を行なっています。今後、通信事業の方をもっと伸ばしていきたいと考えています。

―― ワイヤレスマイコン開発の事業は、御社でどのような位置付けですか。

 当初、需要を掴むために通信開発の請負サービスを取ろうとして頑張ってみました。ところが、検証と違って、「実績はあるのか」、「動く実物はあるのか、あればそれを見て決めたい」、などとおっしゃるお客様が多かったのです。そこで、やはりここは少し無理してでも自分たちが実際に作ったものをお客様にお見せし、信用を頂いて設計サービスを提供する必要がある、という結論になりました。
 また、お客様に見せるためだけにやるというのは、あまりに消極的です。どうせなら、それを事業にする前提でやろうということで、通信を手がけ始めました。当初注目していたのは、2.4GHz帯の無線LANやZigBee、Bluetooth等です。技術的にはこの辺が中心でしたが、結果的にそれ以外の低周波数帯に選択と集中を行なうことになりました。

―― なぜ2.4GHz帯からより低い周波数帯の無線通信に注力することになったのですか?

 技術的なスキルと、最先端ではない製造プロセスでも良いという状況があったからです。また、規格が既に全部固まっている2.4GHz帯では欧米の大手企業が先行しており集中的に量産するので、事業として参入が困難でした。これから仕様が決まる分野なら、規制が世界共通ではなく日本では固有の仕様が入る可能性もあり、市場としての期待感を持っていました。そこで、1GHz以下の特定小電力(特小)無線技術に着目した訳です。
 当初は400MHz帯でしたが、900MHz帯の方がより多くデータを送れるというお客様のニーズを多く耳にしました。また、総務省の方針によりいわゆるプラチナバンド(920MHz帯)の市場が有望ということが分かり、現在はそこに注力して事業を行なっています。

―― ワイヤレスマイコンの特徴やメリットはどういったものでしょうか?

 まず、様々な処理を実行可能な高性能32ビット・マイコンが搭載されていることです。様々なデジタル変調・復調の機能(モデム)を実装し、セキュリティ関連でもAES*1等を取捨選択して柔軟に実行できるようにしたいと考えたからです。この製品ではお客様が色々と試行錯誤できるようにするため、そういった余地のあるマイコンを採用しました。

 また本製品は皮切りで、RF回路を当社が現在開発中のRFICチップで来年から順次置き換えていく予定ですが、基本的にインタフェース(I/F)を全部継承させていきます。したがって、機能が上がった後継バージョンのワイヤレスマイコンでも、同じI/Fで使えるということです。RFチップの搭載により、モジュール自体の大幅なコスト削減も達成できます。

―― ワイヤレスマイコンの事業では、どの様なアプリケーションに注目していますか?

 ヘルスケアやセキュリティ、それに子供さん関連ですね。まず、ヘルスケア分野ではお年寄りの方が非常に増えてきた一方、人手不足や設備の不足など問題が山積しているのが現状です。そこで、そういった分野でITを活用した「道具」があれば便利でしょうと。
 また、アンケート等では家計が苦しくなっても健康や子供の教育にはおカネを使う、といった傾向が見て取れます。そういった分野で非常に高い利便性をもたらすような用途を、まずターゲットとして狙っていきたいですね。産業用では、工場自動化(FA)やスマートグリッド等の電力制御、緊急連絡なども有望です。

―― 御社の事業をお伺いすると、従来型の受託設計とは少し異なる新しいビジネスモデルという印象を受けました。どのような発想や工夫をされているのでしょうか?

 最近話題になったからという訳ではないですが、私は米Apple創業者のスティーブ・ジョブズ氏に昔から共感していました。人間的にどうかは別にして(笑)、彼が持っていた点と点をくっつけて線にするという手法に非常に共鳴しているんですね。
 例えば、マウスとアイコンのGUI*2を初めて成功させたパソコン「Macintosh」は、米XEROX社のPARC(パロアルト研究所)の成果に触発されたものです。でも彼の場合、ただの模倣ではありません。ずっと彼の仕事を追ってみると、単純に真似するのではなく、彼の感性で徹底的に磨き上げてるんです。ですので、私達もそういう視点を持って、無線という技術をもう一回社会の役に立てたいと思っています。
 現在は非常に厳しい経営環境の中、当社のお客様もなかなか辛い状況です。勢力地図が若干塗り替えられているかも知れません。一方、このように変化の激しい時は隙間があちこちにできるので、当社のような新興企業にとってはチャンスもあると感じます。

―― 最後に、御社におけるワイヤレスマイコン事業のビジョンを教えてください。

図2●CMエンジニアリング株式会社 代表取締役社長 河井淳氏
CMエンジニアリング株式会社
代表取締役社長 河井淳氏

 2015年までに、白物家電全部に当社のワイヤレスマイコンを入れたいと考えています。この目標を達成するには、最終的なユーザ様に利便性、つまり「得」を与える必要があります。その観点で物をすべて作っていけば、最終的に事業で成功する可能性が非常にあると考えています。

 お客様が「こんなことが出来ると良いね」と、あるいは我々自身が社会を見て「そんなことをやれると良いね」と思った時に、それをいかに上手に物理的な形に落とし込んでいくかという所で出る差が、我々のコアになります。

 最終製品も大事ですが、製造やマーケティングなど様々な方々の協力がそこには沢山あります。設計そのものに関しては、私共が有する付加価値をそこにどれだけ載せられるか。上手な設計をしたとか、生産性が非常に良いとか、あるいは設計したものを後から再利用できるとか、そういった形で上手に設計して物理的な形に落とし込んでいく、という所でビジネスを色々と見ていこうと思っています。

 また、最終的にでき上がったものがエンドユーザから見て便利だと言われるまで、パートナー様とお付き合いさせて頂き、トータルなソリューションを提供していきたいですね。ですので、そのパターンにはまるビジネスであれば、頭を柔らかくして広く対応していきたいという方針です。


※1. AES: Advanced Encryption Standard 米国で2001年に策定された新しい暗号化規格。1976年に開発され従来使われていたDES (Data Encryption Standard)を置き換えるもの。
※2. GUI: Graphic User Interface(グラフィックユーザ・インタフェース)

<関連記事>
機器間通信、920MHz近距離無線の開放で創出される事業機会が拡大 〔2012/09/05〕
CMエンジニアリング、ET2012で920MHz帯無線ネットワークのデモを実施 〔2012/11/28〕



オープンイノベーション・フォーラム

オープンイノベーション静岡

トピックス
パナソニックの住宅関連事業を支える耐酸被覆鋼板、接着技術や樹脂コーティング法に独自ノウハウ

【座談会】レアアース泥の採泥・揚泥は戦略技術、焦らず段階を踏んで確実に商用化を目指す

IoT、大手自動車メーカーが製造ラインに導入約60万円のシステムで不良品の発生を大幅低減

人気記事ランキング(2018年8月)










オープンイノベーションコラム

オープンイノベーション・フォーラム




| 産業イノベーションHOME | 技術&事業インキュベーション・フォーラムHOME |
Copyright (c) 2005-2013 TechnoAssociates, Inc. All rights reserved.

お問い合せ イベントIndex コラムIndex 提案Index ブレークスルー技術Index INTERVIEW Index topへ テクノアソシエーツへ