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宮崎から世界へ、海外で評価高まる宮崎牛
輸出拡大を支える宮崎県の“和牛づくり”

[2014/2/28]

 宮崎県経済農業協同組合連合会(JA宮崎経済連)が、宮崎牛の海外展開に力を入れている。2010年の口蹄疫や2011年の福島第一原子力発電所の事故による一時的な停滞を乗り越え、輸出再開が本格化。2013年度は12月までの集計で、すでに前年度の輸出実績を上回り、過去5年で最高となる60トンを達成した(図1)。
 特に伸びたのが最大の需要地である米国とアジア。米国では2.2倍(12年度比)となる35トン、アジアではシンガポールが43倍(同)となる6.7トン、タイが7.7倍(同)となる3.2トン、香港が1.1倍(同)となる11トンと大幅に輸出が拡大した。さらにドバイへも輸出するなど、今後の需要増が期待されるイスラム圏への展開も開始した。
「現地でのフェア開催によって飲食店や小売の評価が高まったのに加え、海外における日本食に対する根強い人気が背景にある。和食がユネスコ無形文化遺産登録に登録されたことも追い風となり、新興国の富裕層を中心に高級食材である和牛の需要が伸びている。特に注目しているのが東南アジアやイスラム圏。これらの国々への輸出を強化し、北米に次ぐ宮崎牛の需要地として開拓し、2015年度には年100トンの輸出を達成したい」と宮崎牛の約8割を取り扱うミヤチクの代表取締役副社長の長友和美氏は話す。宮崎県の“和牛づくり”の評価が海外で高まっている。

図1●宮崎牛の年度別輸出総量。2013年度は12月までの集計で過去5年で最高となる60トンを輸出
図1●宮崎牛の年度別輸出総量。2013年度は12月までの集計で過去5年で最高となる60トンを輸出
 
ミヤチク代表取締役副社長 長友和美氏
ミヤチク代表取締役副社長 長友和美氏

和牛五輪2連覇の実力を支える子牛の選定眼

 こうした宮崎牛の躍進を支えるのが現地の生産者だ。100頭の黒毛和牛を肥育する、JA宮崎中央肥育牛部会会長の中武孝幸氏は「良質の肉質を持つ肉牛を肥育するためには、子牛の選定が重要。発育度や外形、血統構成などから出荷時の成長度合いを予測して、飼料や生育環境にあった子牛を選定し、肥育することが肉質を左右するポイントになる」と指摘する。また、JA宮崎経済連では、宮崎県が提示する標準飼料を独自に改良することで、宮崎牛の肥育に最適な配合とし、安定した肉質生産を後押ししている。
 2012年に開催された和牛のオリンピックといわれる「第10回全国和牛能力共進会」(5年に1度開催)で、宮崎牛は9部門中5部門の優等首席を獲得。各部門の総合得点で順位を決める団体賞では1位を獲得し、2連覇を達成した。さらに種牛と肉牛を総合的に評価する部門では内閣総理大臣賞を受賞し、種牛、肉牛とも関係者の評価が高い(写真1)。

写真●1和牛オリンピックで2連覇を達成した宮崎牛。種牛、肉牛とも関係者の評価が高い。
写真●1和牛オリンピックで2連覇を達成した宮崎牛。種牛、肉牛とも関係者の評価が高い。

 
写真●2宮崎牛の中でもオレイン酸数値が高いオレインセレクト。脂が常温で溶けやすく、口の中でとろけるような風味や香りが特徴だ。
写真●2宮崎牛の中でもオレイン酸数値が高いオレインセレクト。脂が常温で溶けやすく、口の中でとろけるような風味や香りが特徴だ。

経験値+科学的手法で肉質向上を加速

 科学的アプローチを加え、肉質をさらに高める取り組みも始まっている。その先頭を走るのが、宮崎大学大学院農学部畜産草地科学科教授の入江正和氏。入江氏は、牛肉のオレイン酸などの脂肪酸含量を非破壊で測定する技術を開発。宮崎経済連は、同技術で科学的かつ客観的に肉質を判定し、評価結果を生産者にフィードバック。高品位な肉質につながる飼料や生育環境の分析を進めるとともに、オレインセレクトとして消費者向け販売を始めている(写真2)。
 オレイン酸は動物の脂肪やオリーブ油などの植物油に含まれる不飽和脂肪酸の一種で、牛肉のサシの部分に豊富に含まれる。和牛は他の牛肉と比べオレイン酸の含有量が多いため融点が低く、口溶けがよいとされる。宮崎牛など高品位な和牛では、全脂肪酸組成のうち50%前後をオレイン酸が占め、味わいや香りに独特の風味を与えている。
「焼酎カスや茶葉を飼料に添加したり、出荷前に青草を与えるなど、生産者は経験値で肉質改善に取り組んでいる。A4、A5などの等級が同じでも、脂肪酸組成の違いで牛肉の味は大きく異なる。科学的に肉質を定量化できれば、高品位な和牛を生産する一助になるだろう」(入江氏)と話す。

写真3●A4、A5等級の宮崎牛をはじめ、おいも豚、マンゴーなどの宮崎県の地場食材を楽しむことができるミヤチクのレストラン。「宮崎牛の味わいを実感してもらうには、食べてもらうことが一番」と長友氏。写真は博多みやちく。
写真3●A4、A5等級の宮崎牛をはじめ、おいも豚、マンゴーなどの宮崎県の地場食材を楽しむことができるミヤチクのレストラン。「宮崎牛の味わいを実感してもらうには、食べてもらうことが一番」と長友氏。写真は博多みやちく。

消費者起点で宮崎牛ブランドを磨く

 さらに入江氏は、同技術を発展させ、肉のキメを評価する技術を確立した。キメの細かさは肉の食味や見た目を左右するとされ、和牛はキメが細かい。脂肪酸とキメを客観的に定量化できれば、肉質を効率的に改善できると期待される。最近は、健康志向や赤身嗜好の広まりに伴い、豊富なサシより、赤身とサシの程よいバランスを持つ和牛人気も高まっており、海外での支持も高いという。
 ミヤチクは、宮崎牛の実力を消費者の“舌”に直接伝えるために、宮崎牛をはじめとする宮崎県の地場食材をメインに提供する専門レストランを宮崎県内だけでなく、都内や福岡に出店。鉄板焼やしゃぶしゃぶといった料理を通じて、宮崎牛のブランド構築を進めている。長友氏は、「肉質の科学的な評価結果に基づいて消費者の嗜好に合った宮崎牛を提供できれば、関係者で評価の高い宮崎牛ブランドを国内外の消費者の間で高めることができる」と期待を込める。日本のお家芸である「ものづくり」が停滞する中、“和牛づくり”で新たなジャパンブランドを確立できるか、注目したい(写真3)。

(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)



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