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南鳥島海域の“江戸前レアアース”開発へ、
産学のコンソーシアムが活動初年度の研究報告会を開催

[2015/11/11]

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 10月23日、「東京大学 レアアース泥開発推進コンソーシアム」の活動報告会が東大本郷キャンパス・福武ラーニングシアターで行われた。このコンソーシアムは、2012年6月に東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授らが日本の排他的経済水域(EEZ)の南鳥島周辺で高濃度のレアアース泥を発見したことを受け、加藤教授が座長となり、企業11社が参画し、国産レアアースの具体的な研究開発と有効活用に向けて産官学が議論する場として、昨年11月に発足した。今回の活動報告会では、加藤教授らが初年度の活動内容と研究成果を報告するとともに、基調講演ではジャーナリストの櫻井よしこ氏と独立行政法人海上技術安全研究所特別顧問の井上四郎氏が、国産レアアースの開発を取り巻く外部環境とその位置づけについて解説した。

南鳥島周辺の海底に良質なレアアース泥が堆積
「探査技術のめどはついた、カギは採泥・揚泥技術」

東京大学大学院工学系研究科 加藤泰浩 教授
東京大学大学院工学系研究科
加藤泰浩 教授

 冒頭の全体報告では、コンソーシアムで座長を務める加藤教授が、コンソーシアムの初年度の活動概要について、南鳥島EEZにおける高濃度レアアース泥の特徴と併せて紹介した。
 レアアース泥は太平洋海域に広く分布しているが、特に南鳥島周辺のレアアース泥に資源開発とその活用において大きな優位性があることが示された。「南鳥島周辺の海底のレアアースのうち、その50%が希少な重レアアース。中国鉱山の20〜30倍の6600ppmに達する超高濃度レアアース泥の分布が確認されている。水深5700mと深海だが、海底面下2〜4mの比較的浅い深度に堆積している。また、放射性元素をほとんど含まないので環境にもやさしい」(加藤教授)
 このような、きわめて優位性の高い海洋資源をいかにして開発していくか。コンソーシアムでは初年度、7回にわたる全体会議とともに、「探査」、「採泥・揚泥」、「選鉱・製錬」、「泥処理」の4つの部会を設けて、具体的な議論、研究を進めてきた。「探査」部会には深田サルベージ建設、商船三井の2社が、「採泥・揚泥」部会には三井海洋開発、東亜建設工業、深田サルベージ建設、商船三井、スターライト工業の5社が、「選鉱・製錬」部会には三徳、IHI、三井金属鉱業、信越化学工業の4社が、「泥処理」部会には東亜建設工業、太平洋セメント、IHIの3社が参加している。
 加藤教授によると、今回の資源開発に向けて、最も重要なカギは「採泥・揚泥」の技術だという。コンソーシアム活動や研究を通じて、探査についてはほぼ目処がたっており、後工程の選鉱や泥処理についても既存技術の応用が可能であるとみている。次年度、コンソーシアムには新規メンバーとして日本海洋掘削、海洋研究開発機構 (JAMSTEC),海上技術安全研究所 (NMRI) も加わる。そのため、加藤教授は、「次年度のコンソーシアム活動では、採泥・揚泥の実証実験を含めた技術開発を進めていきたい」と意欲を示す。

「江戸前レアアース」の開発に期待
日本の存在感を世界に示す絶好のチャンス

ジャーナリスト 櫻井よしこ 氏
ジャーナリスト
櫻井よしこ 氏

 「資源としての重要性はもちろん、世界における日本の立場を示す絶好の機会」――基調講演で登壇したジャーナリストの櫻井よしこ氏は、南鳥島EEZの高濃度レアアース泥をそのように位置づけ、「この開発機会を逃してはいけない」と話す。
 櫻井氏が危惧するのは、国際社会におけるアメリカの相対的な影響力低下と、それに伴う新しい国際社会秩序における日本の立場だ。隣国中国の動きなど、自国の国益重視の外交活動が進む中、このままでは日本は世界から孤立しかねないとし、「今こそ、あらゆる意味で日本らしさを世界に発信しなくてはならない」と警鐘を鳴らす。
 こうした状況の中、櫻井氏は今回の国産レアアース開発に向けた取り組みに対し、「日本の存在感を示す絶好のチャンス」だとし、国を挙げた開発支援の必要性を訴えるとともに、コンソーシアムの今後の活動に期待を込めた。「南鳥島海域から日本が環境負荷の少ない適正な方法で良質なレアアースを採掘する。それは自国の産業振興を促すだけでなく、国際社会に適正な価格で提供することで、日本の考える自由経済とはどういうものか、国と国との関係とはどういうものかを世界に強力に発信できる。そのためにも、この“江戸前レアアース”の開発に期待したい」(櫻井氏)

検討・検証の時期を経て、
今こそ本格的な開発へ移行する時期

海上技術安全研究所 特別顧問 井上四郎 氏
海上技術安全研究所 特別顧問
井上四郎 氏

 招待講演では、海上技術安全研究所特別顧問の井上四郎氏が登壇し、これまでのレアアースをめぐる動向を振り返った。それを踏まえ、産出国の外交政策に大きく振り回された日本のレアアース産業の歴史をきちんと見据える必要があると指摘した。
 レアアースは、一時期の価格高騰も沈静化しており、国内総需要も2008年の3.2万トンから2013年には1.3万トンへと減少。こうした状況から「レアアースの調達環境は改善された」と見る向きもある。しかし、井上氏は、国内産業の戦略的資源、資源安全保障などの観点から「一時期の価格急騰の影響などで、レアアースの利用回避が社会風潮となったことで、潜在的な利用価値が眠ったままになってしまっている」と危機感を指摘する。
 折しも2013年に制定された政府の海洋基本計画は、3年間を経過し、次なる戦略立案の時期にある。井上氏は、南鳥島EEZ内が有望な高濃度レアアース泥の分布域であることが十分にわかったこと、東大を中心としたコンソーシアムや石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、JAMSTEC、NMRIなど産官学の検討が着実に前進していることから、「レアアース泥開発を本格化させる時期が来た」と国を挙げての開発の加速を訴えた。


全体写真

東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム



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