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「揚泥実証の準備は万端、精微な経済性評価も」国産レアアース開発
東大と企業11社によるコンソーシアム、各部会が研究成果を発表

[2015/11/24]

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 10月23日、「東京大学 レアアース泥開発推進コンソーシアム」の活動報告会が東大本郷キャンパス・福武ラーニングシアターで行われた。このコンソーシアムは、2012年6月に東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授らが日本の排他的経済水域(EEZ)の南鳥島周辺で高濃度のレアアース泥を発見したことを受け、加藤教授が座長となり、企業11社が参画し、国産レアアースの具体的な研究開発と有効活用に向けて産官学が議論する場として、昨年11月に発足した。活動報告会の後半では、「探査」、「採泥・揚泥」、「選鉱・製錬」、「泥処理」の4つの部会の代表者が、それぞれ活動初年度の研究報告を行った。

「南鳥島EEZ全域の泥分布はほぼすべて明らかに」
SBP探査で、高濃度層分布域をピンポイントで特定(探査部会)

東京大学大学院工学系研究科 中村謙太郎 准教授
東京大学大学院工学系研究科
中村謙太郎 准教授

 「南鳥島EEZ全域の泥分布はほぼすべて明らかになった」――東京大学大学院工学系研究科の中村謙太郎准教授は、「探査」部会の調査進捗状況をそう話す。同部会には、深田サルベージ建設、商船三井の2社が参加している。
 探査では、より経済効率性の高い開発を行える環境を整えるため、海底下の浅い部分に分布する場所を探り当てることが大きなミッション。もちろん海底掘削船で直接海底ボーリングを行えば確実なのだが、それでは多大なコストがかかる。そこで、中村准教授らのグループでは海底下の層序を間接的に可視化するSBP(サブボトムプロファイラー)探査を実施した。
 SBP探査は、いわゆる音波探査の一種で、航行する船から海底に向けて音波を発信し、その反射音のデータをもとに連続的な地質断面イメージを可視化するというもの。調査はコンソーシアム発足以前の2013年から行われ、「3年間でほぼ全域の調査が完了した」(中村准教授)。また同時に、層序を保ったまま10メートル程度の地層を採取できるピストンコア調査を行ったところ、いずれの採取ポイントからも海底下数メートルの範囲でレアアース泥が出現したという。
 さらに、同研究グループは、海底に露出した状態で存在するレアアース泥があることも発見。レアアース泥が広範囲に露出する南東側海域で5000ppmを超える超高濃度レアアース泥の存在も確認しており、「当初の予測以上に豊富な資源が南鳥島周辺にあることが分かった」(中村准教授)としている。
 中村准教授は、「超高濃度層が堆積する海底地盤には凸凹部と平坦部があり、比較的浅い層に堆積しているのは平坦部。場所によっては海底面直下から超高濃度層が露出する場所がある」と予測している。次年度の探査部会の調査研究目標として、「南東海域の高濃度レアアース泥の分布を把握すること」を設定。まずは、来年、潜水艇を使ったSBP調査を海洋研究開発機構(JAMSTEC)と共同で行い、主に南東部の400kuを集中探査する予定だ。

5000メートル超の深さ対策、エアリフト技術を高度化
次は現場海域での実証の実現あるのみ(採泥・揚泥部会)

東京大学大学院工学系研究科 木周 教授
東京大学大学院工学系研究科
木周 教授

 「採泥・揚泥」部会の研究報告では、東京大学大学院工学系研究科の木周教授は、現在、部会において研究が進むエアリフトによる採泥・揚泥計画を発表した。同部会には、三井海洋開発、東亜建設工業、深田サルベージ建設、商船三井、スターライト工業の5社が参加している。
 エアリフトは、海底に打ち込まれたライザー管に気泡を注入し、管内の圧力を海水柱圧以下に下げることで、海底水圧との差による押し込み圧力を発生させ、気泡とともに泥を引き上げる仕組み。ダイヤモンド原石の採掘などで利用されているものだが、レアアース泥の場合は5000メートル超という深さへの対策が大きな課題となる。
 5000メートルの海底と地上との気圧差は500倍。通常のエアリフトのように気泡を海底深くより注入することを想定した場合、気泡を含んだ揚泥の上昇に伴い気泡の気体部分が大きく膨張し、環状流という状態になって気体の部分の方が多くなってしまう。そのため、深海から水と一緒に密度の大きな物を持ち上げるのは非常に難しい。このような状態を避けるためには、海底から気泡を入れるのであれば、リフト部分を30気圧で加圧して密閉。さらに、600気圧に圧縮したエアリフト用空気によって引き上げる必要がある。木教授によれば、「そうすれば、上昇しても全体が加圧されているため膨張が20倍程度に抑えられ、環状流とならずにレアアース泥を引き上げることは可能」という。さらに、圧縮空気の注入を3箇所にすることで、圧力変動を抑えることができることもシミュレーションで確認した。
 今後の目標として掲げるのは、現場海域での揚泥実験だ。同部会では、既存設備を利用し、コストを可能な限り抑えた簡易揚泥実験を提案している。JAMSTECが所有するライザー式科学掘削船「ちきゅう」を用い、標準装備のドリル管に圧縮空気を送るエアパイプを増設。海底面に接するドリル管の先端には、ダム調整池などの堆砂除去装置「マジックボール」を改良したものを取り付ける。同時に、シミュレーションの精度を向上させることも課題の1つ。木教授は、「独自のシミュレーションコードの開発を開始するとともに、複数のソフトウェアによるクロスチェックを行い採泥・揚泥の技術をいち早く確立させる」としている。

海底選鉱によって揚泥量を半減
レアアースの品位を倍に向上させることも(選鉱・製錬部会)

東京大学大学院工学系研究科 藤田豊久 教授
東京大学大学院工学系研究科
藤田豊久 教授

 東京大学大学院工学系研究科の藤田豊久教授を中心とした「選鉱・製錬」部会では、高濃度レアアース泥の精細な分析を行い、効果的な選鉱・製錬技術の開発を目指している。同部会には、三徳、IHI、三井金属鉱業、信越化学工業の4社が参加している。
 揚泥後のレアアース泥は、まず分級や液抽出などによる「選鉱」を経て泥と海水に分ける「固液分離」を行う。塩酸を用いた「浸出」をした後、再び「固液分離」(泥と浸出液)をし、浸出液からレアアースを沈殿させて回収する。
 まず、同研究グループが注目したのが、高濃度レアアース泥の物理特性だ。高濃度レアアース泥の粒径を調べたところ、粒径20μm以下が全体の約70%、残り30%が20μm以上という分布になることが分かった。
 藤田教授によれば、「30%の部分に濃度3000ppm以上の高濃度レアアースが含まれ、資源化に重要な粒度の大きいアパタイトを含んでいる」という。粒度分布特性を利用し、海底でレアアース泥からアパタイトを分離できれば、揚泥量そのものを半分程度に減らし、レアアース品位を1.5〜2倍に高めることも可能だとしている。また、同研究グループは「水と油によって浮遊選鉱を行うことでアパタイトを効率的に分離できる可能性も得られた」(藤田教授)。
 次工程の塩酸による浸出では、「0.5mol/l程度の塩酸」、「室温25℃」、「浸出時間5分」という条件で、90%を超えるレアアース(セリウムを除く)の浸出率を達成。また、最終的な固液分離では、「あらかじめ強アニオン系の凝集剤を投入しておくことで、分散する泥を効率よく凝集沈殿させることができた」(藤田教授)とし、高効率でのレアアース回収が、ほぼ既存技術の高度化によって可能であることを示した。

3Rの視点で泥処理を検討
既存技術の応用で、ほぼ有効利用が可能(泥処理部会)

東京工業大学大学院理工学研究科 北誥昌樹 教授
東京工業大学大学院理工学研究科
北誥昌樹 教授

 泥処理部会では、東京工業大学大学院理工学研究科の北誥昌樹教授を中心に、リユース、リサイクル、リデュースという3Rの視点から、ほぼ全てを有効利用すべく検討を重ねている。東亜建設工業、太平洋セメント、IHIの3社が参加している。
 レアアース泥残渣の再利用などには、水分の多さなどがネックとなる。また、物性特性として「粘性が高い細粒土」であることを、いかにクリアするかが課題となるが、北誥教授は「港湾土木などで扱ってきた範疇で対応できる」と言い切る。
 まず、リユースでは、中部国際空港などの建設で用いられてきた管中混合固化処理工法という、水分の多い軟弱な浚渫土砂の改良を大規模かつ急速に行う技術を紹介。この手法を用いれば、レアアース泥についても人工島造成などの地盤材料として再利用化が可能だという。
 リサイクルについては、含水土泥を焼成、溶融減容処理を行うことで、建築用資材に利用できるという。特に、焼成することで、再生利用可能な焼成骨材は、用途に応じて形状や特性を設計できるのが特徴。資材化が可能なので、「干潟や浅場の造成といった水産分野、サンゴ礁の基盤材など環境材料としての可能性もある」(北誥教授)としている。
 リデュースでは、「選鉱・製錬」部会の研究報告でも示された、スクリューデカンタ型遠心分離機を用いて、実際にパイロットテストを実施したところ、脱水後には約4〜5割の減容化に成功した事例を示した。
 同じく「選鉱・製錬」部会でも進めている、揚泥〜製錬過程での分級・濃縮技術についても検討中。浚渫土から砂分を取り出すソイルセパレーターによって分級することで、減容と同時にレアアースの品位向上にもなると見ている。
 当然、このソイルセパレーターにしても「機械の改良等の検討は必要」だが、北誥教授は「今、我々が持っている技術で十分に対応可能」とレアアース泥の3R実現に強い自信を見せた。

レアアース新規産業の創出が
日本の成長戦略を大きく加速させる

東京大学大学院工学系研究科 加藤泰浩 教授
東京大学大学院工学系研究科
加藤泰浩 教授

 最後に、本コンソーシアムで座長を務める東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授が、この1年の研究成果を踏まえ、今後の活動の方向性を示した。 
 初年度の「レアアース泥の実開発に向けた課題抽出」という目標は、クリアした。11月から始まる2年目の目標として(1)現在までに得られた知見に基づく、最新の開発システムの概念設計、(2)設計した開発システムに基づく経済性の評価の実施、(3)揚泥実証実験のブラッシュアップと、その実現に向けた国・企業に対する積極的な提言、の3つを挙げた
 (1)の最新の開発システムについては、特に「揚泥・採泥技術の確立」が最重要課題とし、「何としても揚泥実証実験を実現したい」(加藤教授)と国産レアアースの開発へ強い決意を示した。
 JAMSTECのライザー式科学掘削船「ちきゅう」を使った簡易揚泥実験では、1日あたり1300トンのレアアース泥を揚泥可能で、加藤教授は、「実証実験に成功すれば、我が国は南鳥島のEEZ内に天然のレアアースを備蓄しているのと同じこと。仮に危機的状況が起きた場合でも、実証実験設備によって常に一定量のレアアース泥を日本は確保できる」と強調した。
 (2)の経済性評価については、精緻な経済性評価を実施したいとしている。深海5000メートル以上の海底開発という大規模プロジェクトであることから、レアアース泥開発の経済性を疑問視する声があるのも事実。しかし、加藤教授は、「当初想定の1070ppmから現在のターゲットは7倍の超高濃度層(〜7000ppm)になっている。粒径選鉱で1万〜2万ppmのアパタイトを分離可能なことに加え、各部会の報告にもあったように既存技術を最大限応用することで、開発システムを最適化し、コストを大幅に圧縮可能である。十分に開発可能な経済性を示せる」と強い自信を見せる。
 最後に、加藤教授は、「レアアース新規産業が日本の成長戦略を加速できる」と語り、送電ロスを1.5%以下に抑えることが可能な「レアアース超伝導体」、電力不要の高輝度照明を可能にするかもしれない「高輝度長残光性蓄光顔料」などのレアアース応用技術を紹介した。「2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催される。揚泥実証実験で回収される“江戸前レアアース”を用いて、ハイブリッドカー、電動車いす、大型スクリーン、選手村のLEDなど、環境に配慮した日本の姿勢を世界に大きくアピールしたい」(加藤教授)。


全体写真

東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム



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