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IoT、大手自動車メーカーが製造ラインに導入
約60万円のシステムで不良品の発生を大幅低減

[2015/12/2]

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 インダストリ4.0、インダストリアル・インターネット。IoT(Internet of Thing)を活用した製造ラインの生産管理や工作機械の故障検知が、いま注目を集めている。センサで機械の稼働データを取得、エリア通信でデータをエッジ端末に集め、そのデータを広域通信でクラウドへ送信、AI等のアプリケーションでデータを分析し、結果を製造ラインや工作機械へフィードバック。これが、だれもが描くIoTのイメージだ。そんなIoTのイメージを大きく変えるシステムを、大手自動車メーカーがエンジン部品の加工ラインに導入した。システムは小さいものの、大きな成果を上げている。装置単体価格は1台約60万円、機械の故障時に発生していた不良品を大幅に低減できた。小さなシステムで大きな成果、IoTを普及させるポイントの一つとなろう。

加工機の刃の破損をリアルタイムで判定、不良品の発生を大幅低減

 システム導入のキッカケは、ある大手自動車メーカーの工場内で開催された中小企業の展示会だった。部品製造を担当する技術者が同展示会で三重県の中山水熱工業が展示していた電流波形解析判定機「conandesse(コナンデッセ)」(図1)の説明を受け、エンジン部品加工機の刃の破損検知に使えるのではないかと考えたところから導入の検討が始まった。加工機の刃は、1日1回交換する。それでも1カ月に1回程度、刃が破損する。人間が常時監視しているわけではないので、刃が破損しても製造ラインは稼働し続ける。その際、発生した不良品は後工程に送られる。後工程の検査で初めて不良品の発生が認識される。刃の破損から不良品の発生に気づくまでには時差があり、その間多くの不良品が作り出される。製造ラインでは、刃が欠けた段階でいち早くその破損を検知し、不良品の発生を抑えることが求められていた。こうした課題を解決するためconandesse の導入が検討された。

図1●電流波形解析判定機「conandesse」
図1●電流波形解析判定機「conandesse」

 conandesseは、周期的な動作を繰り返す加工機で刃を駆動するモータの電流をサイクル波形として計測する。計測されたサイクル波形は、一つの画面上に重ねられる(図2)。数十msごとに電流値を計測し、横軸を時間軸に約1000サイクルの重ね書きを行った。刃が正常な状態ならば、そのサイクル波形は一定の範囲に収まる。conandesseは、各計測ポイントの最大値、最小値、平均値、標準偏差σを求め、計測波形が許容値を超えると加工機の刃に異常が発生したと判定する。加工機は直ちに停止させられる。


図2●判定機が計測した正常時、異常時、破損時の電流波形
図2●判定機が計測した正常時、異常時、破損時の電流波形

最小サンプリング周期は1msで電流を連続計測

 Conandesseは小型である。大きさが幅112mm×長さ91mm×高さ30mm、重さ440gである。筐体の中には汎用のボードコンピュータ「BeagleBone Black」と32GバイトのmicroSDカードが搭載されている。OSはLinuxである。システム構成もシンプルだ(図3)。加工機のモータの電源線に高感度電流センサを挟み込む。高感度電流センサの出力をconandesseへ入力し、数十msごとに電流値をサンプリングする。測定されたデータはmicroSDカードに格納される。判定プログラムが良否を判定、結果はコントローラにフィードバックされる。加工機の刃に異常があれば、conandesseがフィードバック信号を使ってコントローラを制御し、加工機の動作を停止させる。なおmicroSDカードに蓄積されたデータはLAN経由またはmicroSDカードを使って製造ラインの履歴としてサーバーに保存される。今後、製造ラインの効率改善等に活用できる可能性もある。

図3●電流波形解析判定のシステム構成
図3●電流波形解析判定のシステム構成

 両社は、共同で故障検出に最適な条件を見出すために半年間で十数回の試行錯誤を繰り返した。加工機は多軸モータ駆動であるため、刃が破損しても駆動電流は流れ続ける。刃の破損した状態と正常な状態との電流変化を精度よく検知しなければならず、その微妙な判定条件を決定するのに時間がかかった。

 波形解析判定技術は、技術開発会社のソフトロックスによって開発され、ライセンスを受けた中山水熱工業が電流波形解析判定機conandesseとして製造・販売している。開発元であるソフトロックス豊田出張所所長営業技術部部長の三浦憲治氏は、同社の波形解析判定技術の特徴を次のように説明する。「製造ラインにおいて複数の工程を含む加工機の加工開始から終了までの1サイクルに対し、所定数のサンプルポイントを設定し、線として計測できるところに特徴がある」(三浦氏)。conandesseの最小サンプリング周期は1ms。1サイクル60秒で、6万点の計測が可能である。一方で、システムの導入を主導した技術者は、conandesseの利点としてデータ取得・解析のソフトがconandesse単独で動作する点を強調する。「判定機は一度製造ラインに導入すると10年程度稼働させる。データ取得・解析のソフトがパソコンに実装されていると、パソコンが故障した際、OSのバージョンアップに解析ソフトが対応できないという問題が発生する。conandesseはその心配がない」(大手自動車メーカー担当技術者)。

品質管理、高精度加工等への展開も検討

 中山水熱工業は、conandesseの機能強化も検討中だ。同社代表取締役の中山慎司氏は、「conandesseを故障検知だけでなく、品質管理や高精度加工に使えないかと考えている。計測していると、鋭いひげノイズが現れるときがある。波形が安定した状態と何が違うのかを調べると、品質管理や高精度加工に利用できるかもしれない」と期待をかける。このほか、最適製造条件の条件出し等にも使うことができるかもしれない。「conandesseは短い間隔で大量データを計測でき、条件出しがしやすくなる。またセンサを変えることによってほかの機械の故障検知に使える可能性もある。例えば振動センサを使ってベアリングの劣化などを検知できるのではないか」(担当技術者)。

 昔からセンサによる監視はプラントや電力システムで使われてきた。ただし、そうしたシステムは高価だった。「我々の製造現場に導入できる金額ではなかった。システムの価格が下がり、我々の製造現場で使えるツールが登場してきた。それがいまのIoTだ。今後とも費用が安く導入効果が確認できれば、いろいろな形でIoTを導入していきたいと考えている」(担当技術者)。

説明資料ダウンロード
【資料1】波形解析・波形判定技術 
【資料2】conandesse(コナンデッセ)仕様表
【資料3】波形判定による異常検知事例


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