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世界6位の広い領海・EEZに眠る日本産業を大きく支える力
東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム 第2年度活動報告会

[2016/11/28]

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 10月28日、「東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム」の第2年度活動報告会が同大本郷キャンパス・福武ラーニングシアターで開催された。同大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンターの加藤泰浩教授らのグループが、2011年に太平洋の広い範囲で高濃度のレアアースを含む泥(レアアース泥)を、2013年には日本の排他的経済水域(EEZ)内にあたる南鳥島周辺で超高濃度レアアース泥をそれぞれ発見した。それを契機に、具体的な開発および将来の産業利用に向けて、産官学が一体となって議論、研究開発を行う場として2014年11月に本コンソーシアムが発足した。発足後2年にわたり、周辺海域での探査・モニタリング、採泥・揚泥、選鉱・製錬、泥処理といった各技術分野で研究、検証を続けており、この11月から3期目に突入している。今回の活動報告会では、座長の東京大学・加藤教授が活動全体の進捗状況を報告。特別講演として、前総務大臣で自由民主党政調会長代理、資源確保戦略推進議員連盟幹事長を務める衆議院議員の新藤義孝氏、また、招待講演として資源エネルギー庁鉱物資源課長の辻本圭助氏を招き、日本が目指す海洋開発政策の方向性、鉱物資源をめぐる現状と展望について講演がなされた。

全体写真

実海域での“超高濃度レアアース泥”の揚泥実験に向けて
開発システムの全体像がより具体化

東京大学大学院工学系研究科 加藤泰浩 教授
東京大学大学院工学系研究科
加藤泰浩 教授

 冒頭では、各部会からの研究報告に先立ち、座長の加藤教授がコンソーシアム全体の活動概要と2期目の進捗について報告した。
 これまでの活動で日本のEEZである南鳥島海域には非常に高濃度のレアアースを含有した地層(超高濃度レアアース泥)が広く堆積していることが分かっていたが、2期目の活動ではこの超高濃度レアアース泥層にターゲットを絞り探査を実施。2016年4月に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の有人潜水調査船「しんかい6500」を用いたサブボトムプロファイラ(SBP、音波探査の一種)調査等を行った結果、南鳥島南方海域の海底面下2〜4mに分布する超高濃度レアアース泥層を、音波の反射面として捉えることに成功した。また、JAMSTECなどとの共同調査において、この海域から広大なマンガンノジュールの密集域が発見されたほか、採取されたレアアース泥には固体酸化物形燃料電池(SOFC)開発に使用されるスカンジウム(Sc)が多く含有されることが分かったという。
 加藤教授は「陸上採掘の中国の場合、レアアースの中でも貴重な重レアアースの含有量は25%ほど。これに対し南鳥島海域のレアアース泥の含有率は約50%。総レアアース濃度が7000ppmクラスの超高濃度層エリアを特定しており、今後ピンポイントで開発することができる。海底面わずか2〜4mの地層にあるため採泥もしやすく、放射性廃棄物など環境への影響も少ない」と話す。
 一方で、開発の場所が水深5000m超になるため、技術的課題もある。特に、深海域からの安全で安定した揚泥技術の開発は事業化への大きなカギといわれる。本コンソーシアムは、まさにこうした技術的課題を産官学連携で解決する場。「探査・モニタリング」「採泥・揚泥」「選鉱・製錬」「泥処理」の4つの専門部会を設けて幅広い議論・研究を行っている。発足当時から参画する海洋資源開発に関わる法人・団体に加え、2期目からはレアアースのユーザー企業など、合計22法人・団体が参加し産業界の関心も高まっている()。加藤教授は「このプロジェクトでは採泥・揚泥の部分が肝。オールジャパンで日本企業の要素技術を組み合わせることにより、開発システムの全体像が具体的になりつつある」と、南鳥島海域の資源開発に向けて強い自信を示した。

表●東京大学レアアース泥開発推進コンソ−シアム  参加メンバー(2016年11月1日現在)
表●東京大学レアアース泥開発推進コンソ−シアム 参加メンバー(2016年11月1日現在)

資源量の詳細な把握、経済的価値創出への明示が重要

資源エネルギー庁 鉱物資源課長 辻本圭助 氏
資源エネルギー庁 鉱物資源課長
辻本圭助 氏

 招待講演では、資源エネルギー庁鉱物資源課長の辻本圭助氏が登壇し、日本の鉱物資源政策の動向について解説した。
 我が国ではレアアースをはじめとしてさまざまな鉱物資源が産業で利用されており、電動化が進む自動車産業でもこれらの需要の増加は今後も継続的に見込まれている。しかし、現状は国内のベースメタル(銅、鉛、亜鉛等)、レアメタル(ニッケル、マンガン等)需要のほぼ100%を海外依存している。このため量、価格などを含め、鉱物資源の安定的な供給体制を確保することが国内の産業振興にとって重要となっている。しかし、鉱物資源市場をめぐる環境は、たとえば価格においては投機的資金の流入などにより、従来の需給バランスだけでは捉えにくい相場の乱高下が起きるなど、予断を許さない状況にある。
 こうした中、鉱物資源の安定供給を図るため、政府は資源外交の拡大・深化や鉱物資源のリサイクル、レアメタルの備蓄、代替材料の開発支援を行っている。また、商業的リスクが高まり品位も下がっている陸上での鉱物資源開発に対し、近年の調査などで領海・EEZ内での賦存が明らかになった海洋鉱物資源の開発に関心が高まっている。辻本氏は、ターゲットとして「海底熱水鉱床」「コバルトリッチクラスト」「マンガン団塊」「レアアース泥」の4つのフィールドを挙げ、「日本は世界第6位の領海・EEZの広さを誇る。主体的に動けるこのエリアでの資源開発には多くの可能性があり、日本の産業を大きく支える力となりうる。レアアース泥の具体的な開発に向けては、まず資源量をリアルに把握し、いかに産業的な価値創出を図るかが重要」と指摘し、産学主導の本コンソーシアムの今後の展開に期待を寄せた。

海洋資源開発には技術の結集とチャレンジ精神を

前総務大臣・衆議院議員 新藤 義孝 氏
前総務大臣・衆議院議員
新藤 義孝 氏

 特別講演では、前総務大臣で自由民主党政調会長代理、資源確保戦略推進議員連盟幹事長を務める衆議院議員の新藤義孝氏が登壇し、「日本の明るい未来☆海は資源の宝庫!」と題し、講演を行った。
 新藤氏は、海洋資源戦略を日本の経済成長戦略の強力な推進エンジンと位置づけ、今年の政府による日本再興戦略(成長戦略)に、調査・探査に関する記述が初めて掲載されたレアアース泥の開発にも期待を寄せる。
 今後の領海・EEZ内での具体的な開発に向け、「北方領土付近、東シナ海など領海、EEZ境界確定が合意されていない地域では海域利用が制限される。そのため領土問題の早期解決が重要。国家戦略として取り組むためには、資源確保の推進に関する法律など法整備も必要」とした上で、総務大臣時代に、ICT成長戦略の策定・推進に深く関わった立場から、国による技術支援の必要を強調した。たとえば、ICT成長戦略の重点プロジェクトの1つ「海のブロードバンド化による海底資源探査の高度化・効率化」は、今後の海洋鉱物資源開発に大きく貢献できるという。「海洋資源開発は、民間企業単独ではリスクが大きい分野。国家戦略として探査・開発にICTなど先端科学技術を投入する。商業化に向けてはスピード感が必要」と自らの見解を示した。
 一方、民間活力による技術開発や新たな産業の創出にも大きな期待を寄せる。「現在、海洋開発のために必要な機械、クレーン、ドリルなどは欧米製が主力だが、国内製造業の技術力を持ってすれば国産化は十分に可能。国産化技術開発を軸に、海洋資源開発を新産業として発展させ、新たな人材・雇用を生み出すこともできる」とし、海洋に広がる独特のロマンに触れ、3期目を迎える本コンソーシアム活動における技術開発、チャレンジ精神の継続にエールを送った。


東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム

説明資料ダウンロード
「東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム」資料


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