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「新素材部会」新設でユーザー企業と新素材の研究・用途開発を推進
東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム 第2年度活動報告会(2)

[2016/11/29]

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 10月28日、「東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム」の第2年度活動報告会が同大本郷キャンパス・福武ラーニングシアターで開催された。同大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンターの加藤泰浩教授らのグループが、2011年に太平洋の広い範囲で高濃度のレアアースを含む泥(レアアース泥)を、2013年には日本の排他的経済水域(EEZ)の南鳥島周辺で超高濃度レアアース泥をそれぞれ発見した。それを契機に、具体的な開発および将来の産業利用に向けて、産官学が一体となって議論、研究開発を行う場として2014年11月に本コンソーシアムが発足し、この10月で2期目の活動を終える。報告会後半では「探査・モニタリング」「採泥・揚泥」「選鉱・製錬」「泥処理」の各専門部会から、現在の研究活動の進捗状況と11月から始まる3期目の活動目標が発表された。

超高濃度層を特定、海底わずか2〜3mの地層に
調査の詳細・効率化へ深度6000mクラス級AUVの国内早期導入を期待

東京大学大学院工学系研究科 中村謙太郎 准教授
東京大学大学院工学系研究科
中村謙太郎 准教授

 深田サルベージ建設、商船三井、日本郵船の3社が参加している<探査・モニタリング部会>では、昨年度までの活動で南鳥島EEZ全域におけるレアアース泥の分布をほぼ把握。2期目の活動内容として、本部会研究リーダーの東京大学大学院工学系研究科・中村謙太郎准教授から5000ppm以上の超高濃度層にターゲットを絞った探査調査の内容とその結果が発表された。
 中村准教授らのグループでは南鳥島EEZ海底の地層の化学組成を詳細に検討した。その結果「堆積層序の中で超高濃度層が、ある特定の層準で連続していることが分かった」(中村准教授)という。2016年4月には海洋研究開発機構(JAMSTEC)の有人潜水調査船「しんかい6500」を用いたサブボトムプロファイラ(SBP、音波探査の一種)探査を実施。同部会では海上船から行ったSBP調査で、南鳥島EEZの南方海域に超高濃度層の存在を把握しているが、より至近距離からのデータ取得により、同海域で海底から2〜3m下の地層に超高濃度層に対応する音響反射面が確認できたという。この結果を受け中村准教授は「より精度の高い超高濃度層分布を知るため、深海域でのSBP調査の可能性を探っていきたい」としている。
 探査・モニタリング部会では高濃度レアアース泥の分布のほか、今後は開発をにらんだ地形調査・環境影響評価なども行う予定だ。これらの調査を効率的に実施するためにはAUV(自立型無人潜水機)の活用が有効とされるが、現在国内で稼働するAUVは深度3000m程度が限界とされる。そのため、中村准教授は深度6000mクラスのAUVの早期国内導入に期待を込めた。

早期の実海域採掘試験に向け
揚泥実験とシミュレーションを加速

東京大学大学院工学系研究科 木周 教授
東京大学大学院工学系研究科
木周 教授

 「採泥・揚泥部会」は東京大学大学院工学系研究科の木周教授が研究リーダーを務め、エアリフトポンプによる揚泥技術の開発を進めている。同部会には、初年度からの三井海洋開発、東亜建設工業、深田サルベージ建設、 商船三井、スターライト工業にくわえ、2期目から日本海洋掘削、 日鉄住金総研、古河機械金属、日本郵船、(国)海洋研究開発機構、 (国)海上・港湾・航空技術研究所が新たに参画している。本コンソーシアムで座長を務める東京大学・加藤教授は、この部会の研究を「このプロジェクト最大の肝」と位置づける。
 深海域から揚泥を行う際の大きな課題は、海底と海上との気圧差。エアリフトは泥水(スラリー)に気泡を含ませて地上に押し上げる仕組みだが、約500倍の気圧差という環境では上昇にともない気泡が大きく膨張してしまうため、安定的にスラリーを持ち上げるのが難しい。そのため、木教授らはエアリフトに注入する空気を加圧することで気泡の膨張を抑える手法を検討しているが、「作業時の振動などを考えるとできるだけ加圧を抑え、気泡注入口を可能な限り浅い所にしたい」(木教授)ため、そのベストなバランスを探るのが大きなテーマとなっている。
 そこで重要となるのが実際の揚泥実験とシミュレーション。同部会では今期10m級の実験を行っており、3期目となる2017年度には100m〜200m級の揚泥実験を早々に行いたいとしている。現在、候補地を選定しており、マンガン団塊プロジェクトで使用した産業技術総合研究所の縦穴水槽が有力地として挙がっている。同時にレアアース泥揚泥用のシミュレーションコードの開発も進めている。来年度はシミュレーションデータと実験データを比較し、1000m級実験に向けた検討を開始して、できるだけ早期に南鳥島EEZでの揚泥実験へとつなげたい考えだ。

液液分離実験でレアアースの品位向上に成功
海底での効率的な選鉱への目途が立つ

東京大学大学院工学系研究科 藤田豊久 教授
東京大学大学院工学系研究科
藤田豊久 教授

 東京大学大学院工学系研究科の藤田豊久教授が研究リーダーを務める「選鉱・製錬部会」では、レアアース泥から効果的にレアアースを抽出するための技術開発を進めている。同部会には三徳、IHI、信越化学工業、三井金属鉱業の4社が参加している。
 藤田教授らは海底でレアアースを濃集しているアパタイト(生物由来のリン酸カルシウム粒子)を泥から分離し、高濃度のレアアースを効果的に抽出するための選鉱技術を研究開発している。具体的には実際のレアアース泥を模擬海水に混合し、油と界面活性剤によるエマルションを用いた液液分離実験を行っている。その結果、アパタイト粒子が油相に回収されることでレアアース品位を約3倍に濃縮でき、さらに「粘度が低くなることで後工程の酸浸出も容易になった」(藤田教授)という。この方法により揚泥量そのものも大きく減らすことができる。
 同部会では食品・化粧品業界などの製造工程で用いられている流体モーターねじポンプを改良した引き上げ方法も検討している。

受けの姿勢から攻めの姿勢で分級・濃縮技術の実験を実施
3Rほか残渣そのものを減らす選鉱技術の検討も

東京工業大学大学院理工学研究科 北詰昌樹 教授
東京工業大学大学院理工学研究科
北詰昌樹 教授

 レアアース泥の残渣処理を検討する「泥処理部会」は、東京工業大学大学院理工学研究科の北誥昌樹教授が研究リーダーを務め、リユース、リサイクル、リデュースという3Rの視点から研究開発を進めている。同部会には東亜建設工業、太平洋セメント、IHIの3社が参加している。
 レアアース泥残渣の再利用はその水分量の多さが課題。3Rには固化、乾燥、焼成などといったプロセスが必要となるが、同部会ではいずれも港湾土木分野の既存技術を応用できるとしており、北誥教授も「地盤分野への再利用など、建設関連業界の対応力は高い」と自信を見せる。
 同部会では残渣そのものを減らす技術にも取り組んでおり、選鉱・製錬部会とも関連する海底での分級・濃縮技術の実験も行っている。検討しているのはレアアース泥を海底に設置した分級装置(ハイドロサイクロン)で粗粒成分と細粒成分に分離し、レアアースを多く含む粗粒成分のみを引き上げる仕組み。室内での試験では処理量を大幅に減らすとともに、レアアース泥の高品位化にも成功している。
 今回、会場ではリサイクル資材として、実際にレアアース泥残渣をブロック状に成型し電気炉で焼成した骨材を展示(写真)。焼成骨材は用途に応じてさまざまな形状や特性を設計できるため幅広い利用範囲が期待できる。北誥教授らのグループは焼成骨材の環境影響評価も行っており、海洋に適用した際の金属などの溶出試験では環境省の定める基準値内に収まっているという。


写真●会場で展示された南鳥島EEZ超高濃度レアアース泥(左)とリサイクル資材として、実際にレアアース泥残渣をブロック状に成型し電気炉で焼成した骨材
写真●会場で展示された南鳥島EEZ超高濃度レアアース泥(左)とリサイクル資材として、実際にレアアース泥残渣をブロック状に成型し電気炉で焼成した骨材

南鳥島EEZレアアース泥に潤沢で良質なスカンジウムも
SOFC利用に期待

東京大学大学院工学系研究科 加藤泰浩 教授
東京大学大学院工学系研究科
加藤泰浩 教授

 最後に本コンソーシアム座長の東京大学・加藤教授から3年目の活動の方向性が示された。
 3年目の最重要課題にあげられたのが200m級の揚泥実験の早期実施だ。実験をできるだけ早く実施し、深海域での揚泥技術を確立したいという。さらにその次のステップとして想定しているのが、JAMSTECの掘削船「ちきゅう」を使った実海域での揚泥実証実験だ。「ちきゅう」を使用した揚泥実験では1日あたり約1300tの揚泥を計画しており、「実海域での実験に成功すれば、日本はEEZ 内に天然のレアアースを備蓄したのと同じことになる」と加藤教授はいう。
 また、来期に向け既存部会の発展的改組と新規部会の設置も発表された。まず「探査・モニタリング部会」を「探査・環境・モニタリング部会」とし、実際の採取・揚泥に向けた作業地盤の調査、環境影響評価なども行っていく。新設の部会として「新素材部会」を設立。レアアース超伝導体、アルミニウム-スカンジウム合金など、新素材・新技術の開発を牽引し、レアアース新規産業を創出していきたい考えだ。加藤教授は「磁石、発光材料、エレクトロニクスなどレアアース産業の経済規模は約5兆円。GDPの1%ほどのポテンシャルがある」と試算する。
 中でも期待されるのが、固体酸化物形燃料電池(SOFC)などに利用できるとされるスカンジウム(Sc)だ。加藤教授らの研究では南鳥島EEZのレアアース泥からは良質のスカンジウムが採取でき、その産出量は1km2の海域から年間260tと推定する。「10年後に予想されるスカンジウムの世界需要のほぼ全量を南鳥島EEZだけで満たすことも可能。南鳥島EEZのレアアース泥開発を進めることでレアアース市場を安定化させ、レアアース新規産業を創出する。それが『ものづくり国家・日本』の再構築になる」(加藤教授)。

東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム

説明資料ダウンロード
「東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム」資料


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