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レアアース開発は陸上から海洋へ、まずは採泥・揚泥技術の確立
「東京大学 レアアース泥開発推進コンソーシアム」第3年度活動報告会

[2017/12/5]

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 2017年10月24日、「東京大学 レアアース泥開発推進コンソーシアム」の第3年度活動報告会が同大本郷キャンパス・福武ラーニングシアターで開催された。同大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンターの加藤泰浩教授らのグループが、2011年に太平洋の広い範囲で高濃度のレアアースを含む泥(レアアース泥)を、また2013年には日本の排他的経済水域(EEZ)内にあたる南鳥島周辺で超高濃度レアアース泥をそれぞれ発見した。それを契機に、具体的な開発および将来の産業利用に向けて、産官学が一体となり、2014年11月に加藤教授を中心に本コンソーシアムが発足した。第3年度の活動を終えるにあたり、座長の加藤教授から全体の活動報告が行った。また、招待講演では自由民主党の衆議院議員で資源確保戦略推進議員連盟幹事長の新藤義孝氏と、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が登壇し、日本経済再生に向け海洋鉱物資源開発へ期待を込めた。特別講演では経済産業省・資源エネルギー庁鉱物資源課長の大東道郎氏が、わが国の鉱物資源をめぐる現状と官側の課題などについて述べた。

南鳥島EEZ開発域だけでも国内需要の200〜300年分ものレアアースが

東京大学大学院工学系研究科 加藤泰浩 教授
東京大学大学院工学系研究科
加藤泰浩 教授

 各技術部会からの報告に先立ち、本コンソーシアム座長の加藤教授から全体報告が行われた。
 まず、加藤教授が説明したのはレアアース製品産業の持つポテンシャルだ。現在、わが国におけるレアアース原料そのものの市場規模は500億円ほど。しかし、開発製品群を考えると、約100倍の5兆円、国内GDPの1%になるという。レアアースは磁気的、光学的に独特な特性を持っており、この特性によりLED、電気自動車、燃料電池をはじめとしたグリーン・テクノロジー、宇宙産業などに不可欠な材料となっている。「レアアースは、ハイテク産業の生命線。次世代エネルギー技術の鍵も握っている」(加藤教授)。

 世界的に需要の高いレアアースであるが、いくつかの問題がある。ひとつは現在、世界の生産量の85%を中国が占めており、外交カードに利用される懸念。もうひとつが軽レアアース鉱山における放射性元素処理、重レアアース鉱床における酸の未回収と周辺への流出といった環境問題である。加藤教授は、特に後者の環境問題から「陸上開発のレアアースはいずれ活用できなくなるだろう」という見方を示す。

 加藤教授らが太平洋の広い範囲、南鳥島周辺の海底で発見した超高濃度レアアース泥。加藤教授はこの海底に眠るレアアース泥の特徴として「レアアースの含有量が高い(特に重レアアース)」、「太平洋に広く分布し、資源量が膨大」、「資源探査が容易」、「トリウム、ウランなどの放射性元素を含まない」、「レアアースの抽出が容易」という5つの項目を挙げる。
加藤教授によると、本コンソーシアムで開発を目指す南鳥島EEZにおける開発有望海域(315ku)だけでも日本の需要の200〜300年分を賄えるという。そのうちスカンジウムは現在の世界供給量(15t)の1万年分の資源量があるとし、量・質ともに高い持続可能性を持つ資源だと強調する。また、他国の資源に依存しないことで「国富の海外流出」を防ぐことや、国の基幹産業の命運を他国に握られている現状を打破する「資源安全保障」の確立といった資源セキュリティの観点からも、レアアース泥開発には大きな意味があると話す。

 本コンソーシアムは民間企業13社ともに2014年11月に発足し、現在では23社に増えた。大学、研究機関を合わせると29の企業・団体が参画しており、これまで、「探査・モニタリング」、「採泥・揚泥」、「選鉱・製錬」、「泥処理」の各部会において具体的な開発に向けて議論・研究を継続している。第3年度からは新たに「新素材部会」が発足し、資源開発だけではなく産業利用に向けた新素材開発の検討も始めている。

第4次産業革命の社会実装を支える、海洋資源戦略の推進を加速

 招待講演では、自由民主党の衆議院議員、新藤義孝氏が登壇し、日本経済の現状と課題を説明し、そのために必要な国づくりについて提言した。

自民党・衆議院議員 新藤義孝 氏
自民党・衆議院議員
新藤義孝 氏

 まず、新藤氏は世界における日本経済の地位低下について指摘。2000年に世界3位だった一人当たりGDPが2014年には27位に、1990年13.97%だった世界GDPに占める日本のシェアも2014年には5.96%と落ち込んでいる。最近20年間の名目GDP変化(USドルベース)では主要先進国が概ねプラスにある中、日本はマイナス5%となっている。
 産業構造など様々な要因・課題が考えられる中、新藤氏が注視しているのは少子高齢化に代表される「急激な人口減少」だ。わが国の人口は2008年をピークに下がりはじめ、このままの状況が続けば今後100年間で100年前の明治時代後半の水準になると予測されている。人口の減少は労働人口の減少を意味し、それはそのまま経済力へ反映される。新藤氏は「そのためにも子育て支援、教育支援、働き方の改革など少子化を抑える政策の実行が急務の課題」だと指摘した。また、「仮に出生率を反転できたとしても、その成果が上がるまでには相当な時間を要する。だからこそそうした子支援策と同時に、現状でできる労働生産性の改善に取り組まねばならない」とも指摘した。

 その鍵を握るのがロボット、自動走行システムといった最先端テクノロジーの活用だ。新藤氏が事務局長を務める自民党の経済構造改革に関する特命委員会で昨年取りまとめられた中間報告では、その最重点課題のひとつに『第4次産業革命の社会実装による暮らしの向上』が挙げられている。新藤氏は「ここで重要なのは“実装”」だとし、さらに「こうしたテクノロジーを支える資源がさらに重要性を増す」と語った。

 そこで期待されるのが世界6位の面積を誇るEEZに眠る豊富な海洋鉱物資源。先に行われた総選挙での自民党の政策公約にも「メタンハイドレート、レアアース泥等の海洋資源戦略の推進を加速」と明記されている。新藤氏は、領海の確定など政治的な課題は多いとしながらも海洋資源開発は確実に進めていくと語り、「3年後に迫った東京オリンピックで新国立競技場の照明を、国産レアアースを利用して照らしたい」と講演を締めくくった。

国産レアアース泥開発は日本経済の力の源

ジャーナリスト 櫻井よしこ 氏
ジャーナリスト
櫻井よしこ 氏

 同じく招待講演では、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が登壇し、近年の世界秩序の変化の側面から見解を示した。

 櫻井氏が指摘するのは、隣国である中国の影響力の拡大と、これまで西側世界をリードしてきたアメリカの動きの変化だ。先の共産党大会でも中国の意欲的なグローバル戦略が示される一方、近年のアメリカはメキシコとの国境問題、TPPからの離脱など内向きの傾向が見られている。
 「TPPは単なる経済協定ではなく、公平・公正そして世界的なルールに基づいて商取引を行っていくという価値観の共有である。アメリカがここから離脱するということは、そうした戦略意識が大きく低下していることではないか。こうした中で、日本が自由貿易、民主主義という価値観を守っていくためにも大切なのが国力であり、とりわけ経済力が重要。レアアース泥開発は日本経済の力の源になる」(櫻井氏)。

 その上で、4年目を迎える本コンソーシアムの活動にエールを送った。「工学は将来の社会づくり、国づくりとつながっている。誰のために、どんな未来をつくるのか。皆さんは日本の経済を強くするための土台を担っている」

官としての課題、環境問題と法制度整備への対応

経済産業省 資源エネルギー庁 資源・燃料部鉱物資源課長 大東道郎 氏
経済産業省 資源エネルギー庁
資源・燃料部鉱物資源課長
大東道郎 氏

 特別公演では資源エネルギー庁鉱物資源課長・大東道郎氏が登壇し、わが国の鉱物資源政策の動向などについて解説した。

 EVのモーター、排ガス用触媒などに代表されるようにレアアース需要の高まりが予想される中、わが国のベースメタル、レアメタルをめぐる環境は海外依存度が100%であり、ほぼその全量を輸入に依存している。大東氏は、鉱物資源の安定供給を図るためには、自給率の向上や供給源の多角化に向けた取り組みを進めることが課題だと示唆した。
 特に、近年の金属市場は需給バランスによる価格の変動だけではなくETF(Exchange Trade Funds)など金融商品やアルゴリズム取引といった投機的資金の動きが顕在化しており、「高ボラリティの時代」に入ったという。鉱山開発自体も「商業開発に十分な量の鉱床の発券に至る確立が非常に低いことに加えて、生産に至るまで巨額の資金と10〜20年程度の期間を要するリスクの高い事業になっていることからも、安定供給に向けた取り組みがより重要になってきている。

 わが国では鉱物資源の安定供給を確保するために、@海外資源の確保の推進、 A備蓄、B省資源・代替材料の確保、Cリサイクル、D海洋資源開発を総合的に実施---などの施策を実行している。レアアースについては、2010年以降、代替材料の開発や使用量削減対策を進めたことで現状では需要逼迫はない。しかし、大東氏は「次世代自動車や次世代家電向けモーターの磁石に必須なジズプロジウムなどは需要が底堅く、伸びる可能性が高い。引き続き予断を許さない状況にある」と説明した。

 こうした中、政府が資源の新たな供給源として期待しているのが海洋鉱物資源だ。特に日本は世界6位のEEZを持ち、海底熱鉱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊と並びレアアース泥開発には大きな期待を寄せている。
 政府では、海洋基本法に基づいて決定された海洋基本計画(2013年閣議決定)に則って海洋鉱物資源開発を進めており、現在、2018年以降の次のフェーズに向けた計画の策定を行っている。当然、ここにはレアアース泥開発も含まれるが、大東氏は「海域から実際に引き上げるための、採泥・揚泥技術の確立が重要」だと指摘。技術確立のためには、官民の強力な連携が不可欠となるが、官の取り組みとして、開発における環境問題への対応、法制度の整備を課題に挙げた。
 「採泥・揚泥技術を確立することで世界の目が大きく変わる。現在100%輸入に頼っている状況から見ても、その交渉においても重要になってくる。国産資源開発のため、それらの課題に対処していきたい」(大東氏)。


東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム

説明資料ダウンロード
「東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム」資料


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