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様々な厳しい環境に適応する「耐酸被覆」素材
各々の分野で大きな需要を秘める

[2018/8/24]

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 近年、大地震や局所的な集中豪雨など自然災害が増えてきた。日本には酸性雨や雹(ひょう)、豪雪による被害もある。太陽光の紫外線を吸収すると言われるオゾン層が減少しているとの指摘もある。そうしたことから建造物に使われる素材は、今まで以上に「耐候性」「耐久性」「耐薬品性」が重要な機能となってきた。

 純鉄や鋼はそのままでは直ぐに錆びてしまうため、塗装やめっき、被覆などといった何らかの表面処理が施される。なかでも、厚みのある樹脂やフィルムで鉄芯を包み込む“耐酸被覆鋼板”(図1)は、長期間ノーメンテナンスでも特に高い耐久性を保ち続ける。一見、簡単にみえるが、被覆面の均一性や鉄芯と樹脂・フィルムとの密着性など徹底した品質管理とノウハウがこの特性を支えているのだ。

図1●樹脂やフィルムで鉄芯(鋼板)を包み込む耐酸被覆鋼板の構造概要図
図1●樹脂やフィルムで鉄芯(鋼板)を包み込む耐酸被覆鋼板の構造概要図

 耐酸被覆鋼板は、メンテナンス作業が大掛かりになりがちで頻繁な修理・補修が難しいスタジアムや工場といった、大型施設の屋根や雨とい向けに長らく改良・改善されてきた経緯がある。被覆する樹脂の添加剤の配合を変えることで、絶縁性や抗菌・防汚性、耐熱伸縮性、電磁波を通しにくいといった機能を付与したり制御したりすることができるため、「建材以外の幅広い用途への適応が可能」(パナソニック外廻りビジネスユニット事業戦略・商品企画部部長川村正英氏)。

分野横断的に大きな需要を秘める

 耐酸被覆に関する特許出願状況から研究開発や応用検討が盛んな分野をみると、建材に加えて自動車や液晶、電池、半導体、エネルギー、医薬、バイオ、船舶、食品、農業など広範にわたることが分かる(図2)。各々の分野で大きな需要が見込まれ、熾烈な開発競争が行われている。

図2●広範な分野で研究開発される「耐酸被覆」 出所:テクノアソシエーツ調べ 検索条件:「耐酸性」「被覆」を要約項目検索、1990年1月1日〜2018年8月9日(公開日ベース)
図2●広範な分野で研究開発される「耐酸被覆」
出所:テクノアソシエーツ調べ
検索条件:「耐酸性」「被覆」を要約項目検索、1990年1月1日〜2018年8月9日(公開日ベース)

 例えば自動車分野では、大手自動車メーカーは今後EV(電気自動車)の普及割合を段階的に高めていくロードマップを描いており、さらに大容量化するバッテリーや電装機器の保護を目的とした車載まわりの部材や構造材、それを支える車体(シャーシー)の絶縁性の重要度が増してくる。実際に、大手自動車部品メーカーのデンソーは「金属の表面を被覆するように耐酸性膜を設ける金属構造体」の特許を出願済み(図3)。総合化学メーカーのBASFも「高い引掻(ひっかき)耐性及び耐候性を有する被覆剤」を2014年から2016年にかけて6件出願しており、トヨタ紡績と共同で金属フレームにウレタンを被覆するなどした次世代自動車シートの開発を進めている(三井住友銀行「自動車用素材の動向2017年6月を参考)。

図3●主な“耐酸被覆”の開発状況 出所:テクノアソシエーツ調べ(特許出願情報等から任意に抽出)
図3●主な“耐酸被覆”の開発状況
出所:テクノアソシエーツ調べ(特許出願情報等から任意に抽出)

 エレクトロニクス分野では日新製鋼が「導電性と耐酸性に優れる固体高分子型燃料電池のセパレータ材の安価な製造方法」の特許を、また食品分野では東京インキSCホールディングスが「健康への懸念から欧州で規制が強まっているビスフェノールAの代替としての飲料缶・食用缶の被覆用樹脂組成」の特許を出願するなどしている。

 さらに、「包み込む」という耐酸被覆の要素技術は、医薬の世界でも一風変わった着目もされている。共和薬品の出願特許「口腔内でのざらつきを低減する口腔内崩壊錠の開発」は、患者が薬を飲みこんだ時の “服用感の向上”が目的だ。

 次回、耐酸被覆の実用化開発の成功事例をあげ、詳しく技術の特性や鍵となった要素について説明する。


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