技術&事業インキュベーション・フォーラム

TOPページへニュースへ連携提案へ注目技術&事業コラムへお問合せ



東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム、第4年度活動報告会を開催
海洋第2期SIPにも積極的に協力

[2019/1/22]

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • Clip to Evernote

 2013年に本コンソーシアムの座長を務める同大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授らのグループが、日本の排他的経済水域(EEZ)内南鳥島周辺で超高濃度レアアース泥を発見。その後2014年に、新たな海洋資源として開発、有効活用を図るため、産官学が一体となってさまざまな課題を議論し、研究、技術開発を進める場として本コンソーシアムが発足した。
 この10月で4年目の活動を終え、加藤教授からは、実海域のレアアース濃度分布の可視化に成功しそのポテンシャルが十分に高いこと、開発上の経済性を大きく高める選鉱技術の開発が進んでいることなどが発表された。また、特別講演として登壇した経済産業省・資源エネルギー庁鉱物資源課長の大東道郎氏と自由民主党衆議院議員で資源確保戦略推進議員連盟幹事長を務める新藤義孝氏からは、レアアース泥を含む日本の鉱物資源政策の現状説明と日本経済成長につながる新たな海洋開発への期待感が示された。

南鳥島海域のレアアース濃度分布の可視化に成功

東京大学大学院工学系研究科 加藤泰浩 教授
東京大学大学院工学系研究科
加藤泰浩 教授

 各部会からの報告に先立ち、座長の加藤教授からこれまでのコンソーシアム活動の全体報告が行われた。
 2014年11月に発足した本コンソーシアムは、国産の海洋資源開発への期待から年々参加社数が増加し、現在、28企業・6機関が参画している。顔ぶれも海洋探査や開発に直接関わる企業・研究機関のほか、レアアースによる新素材開発、社会実装を目指すユーザー企業も名を連ねており、探査から採泥、選鉱、製品化、そしてリサイクルへと至る一貫した流れを構築している。
 第4年度活動の成果、トピックスとして、本コンソーシアムの研究グループが深海堆積物中のレアアース濃度分布を可視化することに成功したことが報告された。研究グループは南鳥島EEZ内で採取された堆積物コアのデータをArcGIS(地理情報システム)ソフトウエアで分析。南鳥島の南方約2500km2の範囲に1600万t以上(酸化物換算)のレアアースが埋蔵しており、特に高濃度エリアでは、約105km2x海底面下深度10mの範囲にジスプロシウムが57年分、テルビウムが32年分、ユウロピウムが47年分、イットリウムが62年分存在することを確認した。
 加えて、採取したレアアース泥から効率的にレアアースを回収する選鉱技術の確立にも成功。高濃度レアアース泥には、レアアースを濃縮した粒径の大きな「生物源リン酸カルシウム」(BCP)鉱物が多く含まれている。そこで、粒径20μm以上の粒子を選択的に分離回収することで、レアアース濃度を最大2.6倍まで高めることができたという。
 加藤教授は南鳥島EEZで採取可能なレアアース泥に含まれるスカンジウムにも着目する。スカンジウムは高機能新合金や燃料電池への応用可能性により注目を集めているが、EEZ内の高濃度エリアには世界需要の数百年分が存在するとし、「重レアアースとスカンジウムが同時に採取できる唯一の資源」として、南鳥島EEZにおけるレアアース泥開発の経済優位性を強調する。
 また、政府が進める第2期戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)に本コンソーシアムの活動と関連性の高い『革新的深海資源探査技術』がテーマとして採択された。これを受けて、本プロジェクトの助言会議座長代行を務める加藤教授は「コンソーシアムとしても積極的に協力し、レアアース泥の実用化を推進していきたい」と述べた。

安定した鉱物資源確保のために多様な選択肢を

経済産業省 資源エネルギー庁 資源・燃料部鉱物資源課長 大東道郎 氏
経済産業省 資源エネルギー庁
資源・燃料部鉱物資源課長
大東道郎 氏

 特別講演では、資源エネルギー庁鉱物資源課長の大東道郎氏が登壇し、日本の鉱物資源政策の現状と展望を解説した。
 大東氏は、鉱物資源政策の最重要項目は「安定供給の確保」であるとし、その上で日本の鉱物資源をめぐる状況は「ベースメタル、レアメタルともに海外依存度が100%で、鉱物資源の確保において、日本は常にリスクにさらされている」という。中でもレアメタルに関しては、「資源の偏在性が高く、日本にとって地政学的リスクが高い地域に偏っている」、「価格のボラティリティが高い」、「製品開発動向により需要が左右されやすい」、「レアメタルは他の鉱石の副産物として生産されるため、供給は主生産物の供給に左右される」という4つの課題を挙げる。
 特に近年、次世代自動車(電気自動車、プラグインハイブリッド車)の普及拡大に伴うモーターや電池用途として、リチウム、コバルト、ニッケルの需要が増加。このうちコバルトはコンゴ民主共和国が世界生産の過半を占めており、政情不安、資源ナショナリズムの動きが顕在化していることなどから、「より一層、資源確保が難しい鉱種である」と指摘する。
 鉱物資源の安定供給の確保に向けては、海外権益確保、省エネや代替材料開発、リサイクルなどの対応策もあるが、近年、自国生産資源として注目を集めているのが「海洋資源の開発」だ。政府は今年5月に海洋エネルギー・鉱物資源開発推進を盛り込んだ「海洋基本計画」を閣議決定。この中で南鳥島EEZのレアアース泥については、「将来の開発・生産を念頭に、まずはSIPにおいて賦存量の調査・分析を行い、活用可能な水深2000m以深の海洋資源調査技術、生産技術等の開発・実証の中で取り組みを進める」としている。
 大東氏は「鉱物資源の安定供給を実現する上で、選択肢を多岐に持つことは大きな意味を持つ。その点からも海洋資源開発は重要な施策」だとし、大学、民間企業、研究機関が一体となって取り組み、資源開発に大きく寄与する研究成果を目指す本コンソーシアムに対して期待を示した。

2020年東京オリ・パラで世界初の海洋鉱物資源によるLED照明を

自由民主党・衆議院議員 新藤義孝 氏
自由民主党・衆議院議員
新藤義孝 氏

 招待講演では自由民主党衆議院議員の新藤義孝氏が登壇し、日本における海洋資源開発の意義について述べた。日本のEEZは約405万km2と世界6位の面積を誇る。鉱物資源のほぼ全量を輸入に頼る日本にとって、海洋開発は「資源小国から海洋資源大国に変わりうる道として大きな意義がある」と言う。
 自国での資源生産は外交安全保障などにおいて大きな意味を持つが、新藤氏は「海洋開発によって新たな資源産業を創出できたとしたら、そこに新しい労働市場ができ雇用が生まれる」と国内経済に与える好影響に期待を寄せる。
 「探査船、調査船、掘削技術など、その多くは外国製品・技術に頼っている。しかしドリルや工作機械などにしても日本の製造技術で賄えるはず。海洋資源開発が本格化し、それが産業として成立していけば日本の製造技術が活かされ、海洋開発技術で世界をリードしていくことにもつながっていくだろう。さらには海洋資源開発の多くは離島などが主体となるため、地方経済の活性化にも大きく寄与することも期待できる」(新藤氏)。
 一方、海洋開発を行う上で領海などの確定は重要課題となる。レアアース泥採取場所である南鳥島EEZはその境界線が確定しているが、東シナ海、日本海側の多くは近隣国との間でEEZ境界線が確定していないのが現実。新藤氏は「海洋資源開発への期待が高まり注目が集まることで、こうした問題に国民の目が向けられることにも大きな意義がある」と話す。
 新藤氏は海洋基本計画のほか、「未来投資戦略2017」(2017年6月9日閣議決定)、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(2018年6月18日閣議決定)を紹介。海洋資源開発に向け政府として着実に歩を進めているとし、「2年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックは絶好のアピールの場。ここで世界初となる海洋のレアアースを用いたLED照明を実現したい」という計画を示した。「確実に成果を上げることも大事だが、スピード感も大切になってくる。動きながら進んでいく。皆さんとともに結果を出しながら海洋資源開発を一緒に前へ進めて行きたい」と述べ講演を締め括った。



<関連記事>



オープンイノベーション・フォーラム

オープンイノベーション静岡

トピックス
東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム、第4年度活動報告会を開催〜海洋第2期SIPにも積極的に協力

パナソニックの住宅関連事業を支える耐酸被覆鋼板、接着技術や樹脂コーティング法に独自ノウハウ

IoT、大手自動車メーカーが製造ラインに導入約60万円のシステムで不良品の発生を大幅低減

人気記事ランキング(2018年8月)










オープンイノベーションコラム

オープンイノベーション・フォーラム




| 産業イノベーションHOME | 技術&事業インキュベーション・フォーラムHOME |
Copyright (c) 2005-2013 TechnoAssociates, Inc. All rights reserved.

お問い合せ イベントIndex コラムIndex 提案Index ブレークスルー技術Index INTERVIEW Index topへ テクノアソシエーツへ