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旭化成ホームズ,
ベイジアンネット理論に基づくマーケティング支援ツールを試験導入へ

顧客満足度向上,年間数億円単位での工数削減に期待
[2008/12/18]


 「新築一戸建注文住宅」。外壁やインテリアのデザイン,材質,色を自由に選べることから,分譲住宅に比べて高額だが,住宅購入予定者の間でその人気は根強い。家は一生の買い物。外装や内装のデザイン,色の組み合わせ(インテリア・コーディネーション)は念には念を入れてじっくり選びたいところだ。技術の進歩より,多彩なインテリア・コーディネーションが選べるようになったが,それゆえに最近はその選択に悩み,物件の契約を完了するまでに相当の時間が掛かる顧客が多くなっているという。一戸建注文住宅の販社によるお薦めパッケージは,顧客にとって貴重な情報となるが,あまりにもこのパッケージ化が進むと「世界で一つしかない自分だけの住宅を選べる」注文住宅の本質が失われてしまう。

 そんな中,「へーベルハウス ハ〜イ!!」のキャッチフレーズで知られる旭化成ホームズが,新しい概念のコーディネート支援ツールを試験導入し,顧客満足度の向上や係る商談の作業効率向上を模索し始めた。産総研技術移転ベンチャーの認定を受けているモデライズが,同社の保有するベイジアンネットワークと呼ばれる行動予測ソリューション技術を,旭化成ホームズ向けにインテリア・コーディネーション支援ツールとしてモディファイした。ベイズの定理に基づいて個人や法人の行動や知能をモデル化することで,顧客のニーズ把握,行動予測,商品推薦などを高度に分析,推測することができるようになる。
 旭化成ホームズ・マーケティング本部部長の秦考一氏に,このコーディネーション支援ツールを試験導入する,その期待について聞いた。


 表1:モデライズ社のベイズ理論に基づいたマーケティング支援ツールの導入効果
表1:モデライズ社のベイズ理論に基づいたマーケティング支援ツールの導入効果



顧客が納得する情報提供,数億円分のコスト削減効果

 当社は,旭化成グループの住宅事業会社で,ドイツのヘーベル社と技術提携して開発した軽量気泡コンクリート「ヘーベル」と鉄骨を使用した都市型注文住宅を1972年から供給している。注文住宅は当社の事業の売り上げの80%を占める重要セグメントであるが,年々顧客の「家へのこだわり」が強くなってきている。今では外装,玄関,インテリアなどのデザイン,材質,色目等,莫大な組み合わせが選択可能であるが,当社ではベテランのインテリア・コーディネーターが,これらの顧客の細かい要望に対応している。しかし,顧客が欲しがる組み合わせを探し当てるには相応の時間が掛かるとともに,ベテランであっても一筋縄ではいかないことが少なくない。

 モデライズのコーディネーション支援ツールには,当社の研究員が産業技術総合研究所(産総研)との係わり合いの中で出会った。開発したモデライズ社は,産総研の研究成果の社会への還元や普及を目的として設立されたベンチャー企業で,信頼性が高いものと判断して導入の検討を行った。

旭化成ホームズ株式会社 マーケティング本部 秦考一氏
旭化成ホームズ株式会社
マーケティング本部
秦考一氏

 ベイジアンネットワークは,人間の行動予測,異なる人格間のマッチングの最適化,多種多様な要因が複雑に絡み合っている事象の将来予測など,不確実で絶えず変化するために数式で表現が困難な因果関係の強さを,ベイズの定理を利用したアルゴリズムにより,確率ネットワークの形態でモデル化し,条件付確率で表す。具体的には,例えば優秀な販売スタッフが顧客の過去の購買履歴・個人的嗜好・最近の興味や最近の流行などから「この商品を薦めれば,たぶん購入してくれるだろう」と見込みを立てるこの思考回路を,ベイジアンネットワークで定量的に且つ的確にお奨め度合い付きで推算する。
 ベイジアンネットワークは,このことから,データに基づく確率論による情報を顧客に明示できるのが最大の特徴だ。判断基準が明確なので,わかり易く,顧客の納得感が得られやすい。注文住宅を求める顧客の多くは,他の人たちはどのように選んでいるのだろうかと,他の人の選択肢を気にする傾向にある。新規顧客の年齢や家族構成,世帯収入,建設地といった属性を入力することで,これまで当社が蓄積してきた顧客の購入データとの因果関係も絡めて,推奨するコーディネーション・パターンを瞬時に導き出せる(図1図2図3)。
 これまでは,こうしたコーディネーションに係かる商談が,顧客が最終注文の決断をするまでに最も時間を費やしていたところであったが,このコーディネーション支援ツールを導入すれば,飛躍的に時間を短縮化できる。当社の試算では,本格的に導入されれば,年間数億円単位での工数の削減に寄与できるものと見込んでいる。

 図1:属性入力アプリケーション(シュミュレーションの一部)
年齢,世帯主収入,居住形態等の属性を入力していく。図はシュミュレーションの一部であり,実際には相当数の条件を入力する。


 図2:ベイジアンネットワーク理論により算出されたインテリア・コーディネーションの推奨組み合わせ(シュミュレーションの一部)
入力された属性データを基に全ての条件(購入者の年齢が何歳で,家族構成が何人で,等の組み合わせ。グラフでは横軸の黒文字の羅列箇所)における推奨される組み合わせ(グラフでは各折れ線グラフ)がベイジアンネットのアルゴリズムで,それぞれの顧客に対するお薦め度合い%(グラフでは右縦軸)を推算する。


 図3:アプリケーション上での出力結果(シミュレーションの一部)
対峙している顧客の属性(表中左から2番目のボックス)に最も推奨される組み合わせ(表ではrank_1の外壁F材質にファインビーチ色の組み合わせからrank_3の外壁F材質にビターブラウン色までの組み合わせのお薦め度合いが72.54%)が表示されている。


蓄積データをマーケティングデータとして事業開発に活用

 実のところ,顧客満足度向上やコスト削減と同様,あるいはそれ以上の効果が期待されるのが,事業開発へのフィードバックとしての活用である。これまでも過去の購入実績データを蓄積してきてはいたが,包括的に事業開発に活用していたとは言えなかった。モデライズのコーディネート支援ツールを用いて全てのデータを一元管理し,ベイズの定理を利用したアルゴリズムで定量的に解析・分析することで,事業開発する際の戦略的なマーケティング・ツールの一つとしてとして大いに活用できるものと見ている。

 旭化成ホームズがこのマーケティング支援ツールの導入検討を始めたのは今年3月。同年夏にはシミュレーションを実施して当社のベテラン・コーディネーターからの意見を含め良好な結果を得た。今後販売現場で,先ずは外壁のデザインと色,玄関のデザインと色のコーディネーションについて試行テストを実施する。その効果を検証し,本格的導入に向けて動きだす予定である。


【ニュースリリース】
  ・モデライズ,ベイジアンネットワークによる行動予測サービス「個別ソリューション」の提供開始 [2009年2月20日]
  ・モデライズ社員がマーケティング分析コンテスト2008で技能賞獲得 [2009年2月24日]





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