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産総研ベンチャー,3次元細胞培養用ディッシュを本格販売
創薬開発における動物実験の工数大幅削減や
iPSヒト細胞によるスクリーニング実現に期待

[2009/01/06]


 産総研技術移転ベンチャーのべセルは,3次元細胞培養ディッシュ「VECELL®」のパッケージ製品である「Preset VECELL」の販売を2008年12月に開始した。
 「VECELL®」は,3次元細胞培養を安定的かつ長時間行えるのが特徴で,これまでのプラスチック細胞培養ディッシュに比べて,より生体内に近い立体的な状態での創薬スクリーニングが可能となる。より精度の高いスクリーニングを行えるようになることから,これまで新薬開発の過程で時間的負荷の特に大きかった動物実験の工数を大幅に削減できるようになるという。べセル代表取締役社長の児玉亮氏は「3次元細胞培養には新しい使用方法に対する期待が高まっている。ヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作製することに成功したのは記憶に新しいところだが,遅かれ早かれiPS細胞を活用した創薬スクリーニングが加わってくるだろう。この新しい評価系を構築するには,できるかぎり生体内に似た3次元的環境下での細胞培養方法が不可欠となる。3次元細胞培養が今後の細胞培養のスタンダードにとって替わるのではないか」と語る。
 今回べセルでは,細胞培養プレートに充填する手間を省いたプリセットべセル「Preset VECELL」の販売を開始。直径φ30mmディッシュ向けの6穴プレートとφ12mmディッシュ向け24穴プレートの二種類を用意した(写真1)。

 写真1:発売された3次元細胞培養ディッシュ「Preset VECELL」
写真1:発売された3次元細胞培養ディッシュ「Preset VECELL」


安定した3次元細胞培養を実現するその理由

 従来のプラスチック細胞培養ディッシュでは,細胞培養がプレート上に張り付くように2次元的に延伸する(図1)。これまでの細部の接着や増殖を調べることを目的とした研究開発では十分な機能を果たしてきたといえるが,さらに生体に近い細胞培養が求められてきている現在では,従来の手法では実際の生体内とは培養環境がかけ離れていることが懸念されている。長時間培養すると細胞が剥離したり,細胞の過度な延伸による細胞の分化誘導が起こる恐れがある等の問題も懸念されている。

 3次元培養の試みとして,現在大きく3つの手法が研究されている。「スフェロイド形成による手法では,細胞が表面に均一に増殖せず,細胞の集合体を形成するので,その構造ゆえに培養ディッシュ表面上に細胞が全く無いところと有るところが存在してしまう。コラーゲン等のゲル内で細胞培養する手法は,ECM(細胞外マトリックス)に包まれて増殖するが,酸素供給があまり問題にならない軟骨細胞等以外では培養が難しいとされる」(同氏)などの問題がある。
 そして3つ目の手法が,べセルが採用する多孔質膜の上で細胞を培養する手法だ。多孔質膜の上に細胞培養するディッシュを製造する企業は他にもあるが,「当社の多孔質膜は,細胞とあまり大きさの変わらない口径をもつ膜上に細胞を少しだけ入り込ませた状態で細胞接着とその増殖を促すところがポイント」(同氏)。同社の検証実験では,培養された細胞は繊維長が50〜200μmと長く,繊維間も2〜10μmで細胞が少し繊維間に足を伸ばせる長さに成長することが確認されている。このことで,細胞に余分な力がかることなく安定して多孔質膜上に接着し,細胞が膜上で伸展することなく立体的に培養するという。また,直ちに細胞播種できるよう,多孔質膜にあらかじめ細胞接着成分のコーティングが施されている。

 べセルの3次元細胞培養には,もう一つ大きな特徴がある。長時間培養である。直径φ30のVECELL®でL929を1.2×105個播種し,その後,数時間おきにMTTアッセイを行った結果,570nmの吸光度は生細胞に比例した(図2)。通常のプラスチック細胞培養ディッシュ表面の細胞は,播種してから264時間後(11日間後)ほとんど剥がれてしまうが,VECELL®上では剥がれない。薬剤のスクリーニング試験でよく用いられる小腸由来のCaco-2細胞を用いたHE染色による培養実験では,播種してから624時間(26日後)経った後でも均一な単層膜が形成されることが実証されている。


 図1:従来の2次元プラスチック細胞培養ディッシュと3次元ディッシュ「VESSEL」の違い
図1:従来の2次元プラスチック細胞培養ディッシュと3次元ディッシュ「VESSEL」の違い

 図2:L929細胞 11日間培養 MTTアッセイ結果
図2:L929細胞 11日間培養 MTTアッセイ結果



動物実験に掛かる時間的負荷を大幅に削減へ

 新薬の開発には動物実験は欠かせない。動物実験によって薬品の生体に対する実際的な反応が判るからである。現在の新薬の研究開発・承認のプロセス概要は下図に示すとおりである(図3)。
 先ず動物培養細胞による1次のスクリーニングを行い,1次スクリーニングを経たものが動物実験へと進む。動物実験が終了すると,臨床試験(PHASET〜V)へと進み,最終的に厚生労働省の認可を得たものだけが製品として上市できる仕組みになっている。べセルは,時間的負荷の大きい動物実験の前に,より生体内に近い状態の3次元細胞培養を2次スクリーニングとして導入することで動物実験の工数削減が可能になると説明する。さらに,将来的には,iPSヒト細胞を利用した3次元細胞培養による創薬スクリーニングを動物実験の前の段階で導入できるようになれば,新薬開発プロセスのさらなる迅速化が可能になると同社はみている。

 図3:新薬開発プロセス概要
図3:新薬開発プロセス概要








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