技術&事業インキュベーション・フォーラム

TOPページへニュースへ連携提案へ注目技術&事業コラムへお問合せ


産総研,ICカードにも搭載可能な超小型・低消費電力型の物理乱数高速発生器を開発

[2009/12/01]


 独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)・エレクトロニクス研究部門・スピントロニクスグループの福島章雄は,ハードディスクのリードヘッドなどに使用されている磁気抵抗素子を利用して,物理乱数発生器“Spin dice”を開発した(写真1)。物理乱数は,自然現象を利用して乱数を発生させるため,その結果を予期することができない真の乱数を得ることができる(表1)。今回開発した“Spin dice”は,微小な磁気抵抗素子の確率的なスイッチングを利用して乱数を作成するもので,不揮発・高速動作(原理的には生成速度100Mbit/sec以上が期待できる)・集積化が容易という機能を持つのが特徴だ。

写真1:物理乱数発生器“Spin dice”
写真1:物理乱数発生器“Spin dice”


表1:物理乱数と擬似乱数の特徴比較
表1:物理乱数と擬似乱数の特徴比較


高度化するセキュリティー需要に対応する
コストパフォーマンスに優れた“真性の”乱数発生原理


 乱数は,情報の暗号化や,シミュレーション実験などに幅広く利用されている。その多くは手軽に扱え,低コストな擬似乱数(ソフトウェアにより生成された乱数)が用いられている。しかし,近年Suica,PASMOに代表されるICカードが広く普及し,銀行カードやクレジットカードの認証手続き,パソコンやインターネット上でのパスワードの発行,暗号鍵などのセキュリティーのより一層の強化や,科学技術分野におけるシミュレーションの高度化が求められるようになってきた。真性の乱数結果が得られる物理乱数の原理の幾つかは以前から知られていたが,厚さミリ単位のカード内に搭載可能なほどの小型化や,わずかな電力での高速動作は難しいといった課題があった。
 今回産総研が開発した“Spin dice”は,磁気抵抗素子の大きさを極限まで小さくする(断面で100nm径程度)と,電流によって磁化が反転するという物理的性質に着目した(図2左図)。最近の目覚しい製膜技術,微細加工技術の向上により,このような磁気抵抗素子の作成が可能となった。この磁化反転は,電流による二準位間の遷移であり,同じ初期状態,同じ電流を与えても,その結果が完全に確率的にのみ予想されるという特徴を持つ。すなわち,電流の大きさで,個々の磁化反転の結果ではなく,磁化反転の確率をコントロールすることができるため,理想的な物理乱数発生手法であるといえる。“Spin dice”は厚さわずか数ナノメートルの磁化自由層(CoFeB),バリア層(MgO),磁化固定層(CoFeB)の三層構造に電流回路を取り付けた簡単な構造なので,チップ化できればICカードなどの小型な製品へ組込みが可能である(図2右図)。


図2:“Spin dice”の動作原理図
 
図2:“Spin dice”の動作原理図
磁気抵抗素子は,磁化自由層の大きさを極限まで小さくすると,電流によって磁化を反転させることができる。
“Spin dice ”構造図。磁化自由層(CoFeB),バリア層(MgO),磁化固定層(CoFeB)に電流回路を取り付けただけの簡単な構成になっている。

製品組込みに向けた実用化開発

 今後,産総研・エレクトロニクス研究部門・スピントロニクスグループでは,半導体メーカーなどとの事業化に向けた共同開発を進めて行く予定である。応用用途としては,ICカード,クレジットカードなどの認証,パスワードの暗号化やシミュレーションのみならず,映画やドラマのビデオストリーミング,次世代無線LANなど様々な業界・分野で需要が高い可能性があり,それら製品仕様に合わせた実用化開発のための共同開発パートナーを求めている。産総研の同グループと産総研ベンチャー開発センターでは,2009年12月2日(水)〜4日(金)の4日間,幕張メッセで開催される「セミコン・ジャパン 2009半導体製造装置・材料の国際展示会SEMICON JAPAN」(ブース6B-210)にて,物理乱数発生装置“Spin dice”の最新のデモ機を出展・展示する予定である。



オープンイノベーション・フォーラム

オープンイノベーション静岡

トピックス
【座談会】安定・潤沢な国産レアアースの利用に、日本の産業界は飛躍の未来を感じている

IoT、大手自動車メーカーが製造ラインに導入約60万円のシステムで不良品の発生を大幅低減

人気記事ランキング(2017年1月-2月)










オープンイノベーションコラム

オープンイノベーション・フォーラム




| 産業イノベーションHOME | 技術&事業インキュベーション・フォーラムHOME |
Copyright (c) 2005-2013 TechnoAssociates, Inc. All rights reserved.

お問い合せ イベントIndex コラムIndex 提案Index ブレークスルー技術Index INTERVIEW Index topへ テクノアソシエーツへ