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産総研,特殊なペプチドを使って細胞の寿命を延ばす技術を開発
〜黒毛和牛受精卵の低コスト・チルド輸送を目指した取り組み〜

[2009/12/17]

 独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)・ゲノムファクトリー研究部門 機能性蛋白質研究グループの津田栄研究グループ長は,独自の構造解析技術と遺伝子組み換え技術を駆使し,細胞膜を強力に保護して延命効果を発揮する小分子量ペプチド(CPP:Cell Preservation Peptide)の設計および大量合成(精製)技術の開発に成功した(図1)。このCPPがもたらす延命効果を動物等の細胞を用いて網羅的に調べた結果,通常の細胞保存液を用いた場合に比べて2〜10倍も生存率が向上することがわかった。
 これまで,畜産動物の受精卵等の細胞を保存・輸送する際には細胞を凍結させているが,凍結と解凍の過程で細胞が物理的損傷を受けることが多かった。CPPを用いれば3日から数日間にわたって細胞を傷つけることの無い低温保存状態を保つことができると予想され,生きた細胞の数を減らさずに輸送することが可能になると考えられる。

図1. 今回開発した小分子量ペプチドの3次元分子モデル
図1 今回開発した小分子量ペプチドの3次元分子モデル


 ヒトや動物の体内から摘出した細胞や培養し増殖させた細胞は医療現場をはじめ畜産や再生医学の分野で様々に活用されている。こうした細胞は複数〜1万個の細胞の集合状態であり,通常は液体窒素やディープフリーザーを使って凍結保存される。しかし,この方法では細胞の多くが凍結と解凍の過程で物理的損傷を受け死んでしまう。培養が可能な細胞は再培養により増やせるが,医療や畜産の現場で扱われる細胞の多くは培養不可であり,また,再培養に時間をかけている余裕はなかった。

 CPPは摘出後,または培養後の細胞群をその数を減らさずに低温保存する事を可能にする。つまり,摘出後,または培養後24時間から数日の間に消費需要のある細胞群に関しては,これを凍結保存せずに輸送・流通させることができるようになる。津田研究グループ長は「この技術により,例えば黒毛和牛の受精卵を排卵場所から移植場所までチルド輸送できれば,傷の無い元気な受精卵を借り腹ウシに移植することができる。現在,国内だけで年間6万個以上のウシ受精卵が流通しているが,CPPは液体窒素やプログラムフリーザーといった高価な冷凍設備を使わずに,受精卵をチルド輸送する技術を卵回収業者や畜産農家にもたらすことになる」と語る。
 この技術が普及することで,現在45%程度とされる我が国のウシ受胎率を飛躍的に向上させ,同時に受精卵移植分野全体のコスト削減と高級牛肉市場の拡大をもたらすことが期待できそうだ。

 もともと北極海など寒冷な環境下に生息する魚類の血液の中には,氷点下で氷の再結晶化を阻害して魚体の凍結を防ぐタンパク質が存在していた。機能性蛋白質研究グループでは,このタンパク質が非凍結状態の細胞に対する延命効果を発揮する仕組みに注目し,様々な細胞(ヒト,サル,マウス,ラット等から得られる肝臓,腎臓,膵臓,小腸,胸水,褐色細胞腫,臍帯,子宮頚管,リンパ球の細胞)に対して特段の延命効果を発揮するCPPを設計し,それを大量生産する手法の開発に成功した。
 今後,北海道にある畜産試験場や関連機関等と共同研究や技術的な意見交換を行い事業化に向けた本格的な技術開発を加速させる。将来的にはヒトの幹細胞(iPS細胞)を用いた再生医学分野に対するCPP技術の応用も視野に入れており,CPPによって延命効果の高められた細胞を利用することで再生医学分野が更なる発展を遂げることが期待される。




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