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400℃以上の廃熱処理が可能な酸化物熱電発電モジュール,カスケードモジュールを開発
産総研発のベンチャー創業を目指す


[2010/01/06]

 産業技術総合研究所ナノテクノロジー研究部門の主任研究員舟橋良次氏は,400℃以上の廃熱処理が可能な酸化物熱電発電モジュールを開発した。同氏は,開発した同モジュールをもとに2009年度にベンチャーの創業を目指すとしている。同モジュールは熱電発電素子として酸化物系材料を使用しているため,従来の金属系の熱電発電素子と比べて高温での耐久性に優れている。また,Pbなどの有毒元素も含まれておらず,環境汚染の心配も要らない。すでに廃棄物炉を使った実証実験も進められている。これまでほとんど捨てられていた廃熱の利用に道が開ける可能性がある。

 地球温暖化問題の解決に向け,太陽光,風力,地熱などの再生可能クリーン・エネルギーに注目が集まっている。その一方で,日本では年間に原油換算で6億kLもの一次エネルギーが消費されている。ところが,その約70%のエネルギーが有効利用されておらず,廃熱として大気中へ放出されていると言われている。
 廃熱は希薄に分散しており,これまで安価に回収して有効利用することが難しかった。こうした莫大な廃熱を有効利用できればCO2の排出量を大幅に削減でき,地球温暖化防止に大きく貢献することができる。焼却炉,工業炉,家庭でのガス器具,自動車などから排出される未利用の廃熱の有効利用に向け,熱電発電に大きな期待が寄せられている。

 熱電発電は,熱を直接電気エネルギーに変換する熱電変換のゼーベック効果を利用している。熱電変換であるゼーベック効果は,二種類の異種類金属または半導体の両端に温度差が生じると起電力を発生するという現象である。熱電変換の材料として,例えばn型半導体材料を使った場合,温度の高い部分の伝導電子の運動エネルギーが大きくなり,伝導電子が温度の低い方に拡散して起電力を発生させる。p型半導体材料でも,温度の高い部分の正孔の運動エネルギーが大きくなり,正孔が温度の低い方に拡散して起電力を発生させる。n型とp型の半導体材料では逆の電位差となるため,両者を接続することによってp型半導体からn型半導体へ電流が流れる。

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図1:各熱電変換材料の耐用温度


 従来,主に熱電変換材料として金属系の材料が研究されてきた。金属系の熱電変換材料には,Bi2Te3系,Mg2Si系・PbTe合金,Zn4Sb3系,SiGe合金などがある。これらの材料はいずれも金属であるため,空気中で200℃以上の高温になると酸化されて性能が劣化する(図1)。
 産総研が開発した熱電発電モジュール(Oxide熱電モジュール)の特徴は,酸化物材料で構成されていることである。p型素子としてCa3Co4O9,n型素子としてCaMnO3の熱電変換材料が使われており,400℃以上の高温でも安定した性能を発揮できる。Oxide熱電モジュールの変換効率は,金属系の5〜10%に対して2〜3%と低いものの,使用環境,環境汚染,メンテナンス・製造コストといった実用性において優れている,と舟橋氏は強調する。

 開発したOxide熱電モジュールは,高温側温度800℃,温度差600℃でモジュール受熱面積当たりの出力密度が4.17kW/m2である(図2)。モジュールサイズは使用する温度,取り付ける熱機関に合わせ変更可能である。
 さらに,このOxideモジュールとBi2Te3モジュールを積層したカスケードモジュールも作製している(図3)。カスケードモジュールでは,高温域で発電効率の高いOxideと,低温域で発電効率の高いBi2Te3を組合せ,上限800℃から室温までの広い温度域で効率よく発電することが可能である。実機炉試験では,このカスケードモジュールで3.9kW/m2の出力密度を実証している。
 産総研は,平板型モジュール以外にもパイプ型モジュールを試作している(図4)。パイプ型モジュールは,天然ガスを使った給湯器などへの応用を想定している。

図2:開発した平板型Oxide熱電モジュール
  図3:開発したカスケード熱電モジュール
図2:開発した平板型Oxide熱電モジュール
  図3:開発したカスケード熱電モジュール

図4:開発したパイプ型Oxide熱電モジュール
図4:開発したパイプ型Oxide熱電モジュール



 舟橋氏は,産総研のベンチャー起業支援制度を活用して2009年度にはベンチャーを設立したいとしている。そのため現在,廃棄物炉メーカーと共同で実証実験を進めている。同氏は,その結果を踏まえてまず,焼却炉や工業炉の廃熱利用にこの熱電発電モジュールを応用していく考えだ。次に給湯器など家庭向け機器への浸透を図り,そして将来,自動車エンジンの廃熱利用へと応用範囲を拡大したいと言う。




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