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1〜2週間で抗体作製が可能なサービスを
カイオム・バイオサイエンスが開始,ニワトリ由来細胞を利用


[2006/01/10]

 バイオ・ベンチャー企業のカイオム・バイオサイエンスが,抗体作製のパイロット・サービスを開始した。最大の特徴は,従来技術では2〜6カ月かかっていた抗体作製の期間を,1〜2週間へと大幅に短縮した点にある。従来は,マウスなどの小動物を免疫して抗体を作製していた。一方,カイオムでは,ニワトリ由来の免疫細胞を使うin vitro(試験管内など人工的に構成された環境)抗体作製技術「ADLib法」を採用。これまで,酵素やペプチドなど約10種類の抗原に対する抗体の作製に成功し,多様な抗体を産生する細胞ライブラリの構築にもメドを立てた。今回のパイロット・サービスは,同社が提供する初めての抗体作製サービスとなり,今後,製薬メーカーや診断薬メーカーへの営業を本格化させて,ADLib法の有用性を広く知らしめていく方針だ。

ニワトリ由来細胞を用いて抗体を作製する「ADLib法」
 今回の抗体作製サービスの基幹技術であるADLib法は,理化学研究所遺伝子ダイナミクス研究ユニットに当時所属していた客員研究員の瀬尾秀宗氏(現カイオムバイオサイエンス研究開発部ディレクター)やユニットリーダーの太田邦史氏が中心になって開発した技術。ADLibは,「autonomously diversifying library(自律多様化ライブラリ)」を意味し,自律的に抗体遺伝子を多様化する細胞ライブラリを指す。ADLib法は,多様化した細胞ライブラリから抗体産生細胞をスクリーニングし,1〜2週間で目的の抗体を取得する。細胞ライブラリに含まれる抗体産生細胞の抗体遺伝子の多様性が高いほど,多種類の抗体作製が可能になる。
 この多様化に関して中心的な役割を果たすのが,DT40と呼ばれるニワトリB細胞由来の細胞株だ。DT40は,抗原を提示しなくても,遺伝子の相同組み換えによって抗体遺伝子を自律的に多様化し,抗体を産生するという性質を持つ。産生する抗体はIgMクラスである

TSA処理で抗体遺伝子の多様化を加速し,ライブラリを構築
 ただし,単純にDT40の性質だけに頼っていると,サービスに十分な多様性を獲得することは難しい。そこで瀬尾氏らのグループは,DT40をトリコスタチンA(TSA)という薬剤で処理する方法を考案した。TSAで処理すると,相同組み換え頻度がケタ違いに増え,抗体遺伝子の多様化が急激に加速される(図1)。この理由は,「TSAが,抗体遺伝子座のヒストン高アセチル化やクロマチン構造の弛緩を誘導し,相同組み換えの1つである遺伝子変換を活性化する」(カイオム・バイオサイエンス代表取締役の藤原正明氏)からである。つまり,TSAの存在下でDT40を培養すれば,DT40が産生する抗体の種類が急増する。
 この方法を使い,カイオムはDT40の抗体遺伝子の多様化がより早く進み,より多量の抗体を産生する条件を検討してきた。具体的には,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の助成を受け,TSAの処理条件(添加量,日数など)や培養条件(温度,血清濃度など)の最適化を進めた。この結果,複数のライブラリ構築に成功した。「現在もライブラリの拡大と最適化を進めているが,大半の抗原に対しては抗体が取れる多様性が整った」(藤原氏)と言う。

最短1週間で,1サービス当たり数抗体を作製
 今回のパイロット・サービスでは,まずユーザーの抗原に特異性を示すDT40抗体産生細胞を,細胞ライブラリからスクリーニングする。次に,スクリーニングで得られた細胞に対し,余分な相同組み換えが起こらないように処理した上で培養する。このプロセスによって細胞が安定化し,品質の安定した抗体の作製が可能になる。現在の生産能力は,1μ〜2μg/ml(リットル)であり,パイロット・サービス1回当たり,数抗体を提供する内容となっている。作製期間は,最短で1週間となる。今後,年間契約による抗体作製や抗体医薬の共同開発など,事業の拡大を図っていく方針を立てている。
 今回のパイロット・サービスにおける最大の特徴は作成期間が短いことであるが,ほかにもいくつかの特徴がある。一つは,免疫の必要がないことである。このため,必要な抗原量は理論的に数百ngまで下げることが可能。また,毒素や糖鎖など,これまで抗体作製が困難とされてきた抗原に対しても,抗体が取れる可能性がある。作製される抗体はニワトリ由来だが,「エピトープ(抗原決定基)を特定して化合物をデザインしたり,診断薬へ応用したりすることが期待できる。ターゲット・バリデーション(標的となる抗原の評価)や抗原の機能解析に関しては,種間の差は大きな支障にならない」(藤原氏)と言う。さらに現在,IgGへのクラス転換やヒト抗体作製技術の開発を進めており,より付加価値の高い抗体作製を実現していく考えだ。



図1:TSAによる抗体遺伝子の相同組み換え頻度
図1:TSAによる抗体遺伝子の相同組み換え頻度

図2:既存技術との比較
図2:既存技術との比較


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記事要点掲載先:日経BP知財Awareness日経BP.JP

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