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副作用の原因毒素「エンドトキシン」の選択除去が可能に
熊本大学が有効成分「たんぱく質」回収率をケタ違いに増大


[2006/02/07]

 血液製剤やワクチンなどの副作用の原因となる「エンドトキシン(リポポリサッカライド)」を高い選択比で吸着する新吸着剤が登場した。吸着しないことが望ましいたんぱく質の吸着率を,ケタ違いに減らした。熊本大学工学部の坂田眞砂代氏らの研究チームが開発した高分子微粒子である。
 エンドトキシンは,自然界の水溶液に普遍的に存在し,たんぱく質製剤を中心とした注射用医薬品への混入がしばしば問題となっている。毒性が強く,ナノグラムレベルの投与でも発熱やショック死などの副作用を引き起こす危険性があるからだ。医薬品の製造工程では,エンドトキシンの除去が法律で義務付けられている。 現在は,遠心分離法とクロマトグラフィ法の併用により除去されている。しかし,この方法はコストや手間がかかる。さらに,医薬品の有効成分(たんぱく質)もエンドトキシンとともに除去してしまう。このため,有効成分の回収率が下がり,製造コストを押し上げる要因になっている。発展途上国ではエンドトキシンを十分に除去できていない粗精製ワクチンが問題となっている。
 これに対し,今回開発したエンドトキシン吸着剤は,エンドトキシンのみを高選択的に吸着し,有効成分を吸着しない。そのため,有効成分の回収率向上とエンドトキシンの吸着率向上の両立を実現した。研究チームの比較データによると,有効成分の回収率は,従来法が約65%だったのに対し,約99%に達している(表1)。

エンドトキシンを含むたんぱく質水溶液からのエンドトキシンの除去試験結果(表1)
試料
(タンパク質水溶液)
ポリリジン固定化セルロース粒子
市販品
タンパク質吸着率
LPS吸着率
タンパク質吸着率
LPS吸着率
% 
% 
% 
アルブミン+LPS
1(回収率99%)
99
35(回収率65%)
>99
γ−グロブリン+LPS
2(回収率98%)
99
20(回収率80%)
>99
吸着率:バッチ法(吸着剤 0.2mL,タンパク質 2mL,pH 7,塩濃度 0.17M)
たんぱく質濃度:1mg/mL
LPS:大腸菌由来精製エンドトキシン 5000EU/mL

細孔径の制御技術とポリカチオンの確立で選択性を向上
 開発したエンドトキシン吸着剤は,セルロース粒子を基体に,ポリカチオンを官能基として化学修飾した高分子微粒子である。これまでのエンドトキシン吸着剤は,基体粒子の細孔径の制御ができず,この細孔にエンドトキシンだけでなく有効成分も取り込まれていた。そのため,選択性が低かった。
 今回,研究チームは,(1)細孔径の制御技術,(2)エンドトキシンに高選択性を示すポリカチオンを確立した。有効成分が取り込まれないサイズに細孔径を制御するとともに,エンドトキシンを選択的に吸着するポリカチオンを採用することで,選択性を大幅に向上させることに成功した。細孔径のサイズや官能基の種類を変えれば,エンドトキシン以外の物質への応用も可能になる。
 「遺伝子工学技術の発展により,たんぱく質医薬品の開発が加速する中,エンドトキシンの選択的な除去は重要な課題である。副作用の危険性の排除だけでなく,薬価を低く抑えるためにも(今回の成果は)有用な技術となるだろう」(坂田氏)とコメントしている。
 今後,同研究チームでは試作吸着剤を用いて,実用化に向けた研究開発を強化していく方針だ。具体的には,様々なたんぱく質混在溶液や血液を対象にデータを蓄積していく。現在,対象となるサンプルの提供企業や応用技術をサポートする製薬企業・研究機関を募集している。
 なお,今回の技術開発は,独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業による支援を受けて進めてきた。また,チッソ株式会社(本社:東京都中央区,社長:岡田俊一)と共同開発を進めており,すでにポリカチオン固定化のセルロース粒子を試薬として販売開始している。



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【問い合わせ先】
熊本大学工学部物質生命化学科

坂田眞砂代
TEL:096-342-3674
e-mail:msakata@kumamoto-u.ac.jp

 

記事要点掲載先:技術&事業インキュベーション・フォーラム日経BP知財Awareness日経BP.JP

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