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バイオ業界の注目技術,メタボローム解析の
スピード・精度・感度などをHMTがケタ違いに向上


[2006/02/14]

 バイオ分野でゲノム,たんぱく質に続く研究領域として注目を集めているメタボロームに関し,メタボローム解析システムのスループット,検出感度,網羅性などをケタ違いに向上させる新技術を,ベンチャー企業のヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(HMT)が,慶應義塾大学先端生命科学研究所と共同で開発した。メタボロームとは,細胞内の酵素などによって産生する代謝物質(メタボライト)の総称。細胞内には多種多様な代謝物質が存在しており,代謝産物を網羅的に解析できれば,生体をシステムとして理解するための有用な情報を得られるとしてバイオ関係者が注目している。今回の開発により,サンプルの種類によっては20回におよぶことがあった測定回数が1回で済むようになる。代謝物質の検出感度は4〜10倍に向上,1回の解析で2400種類以上のイオン性代謝物質を解析できると言う。さらに未知の代謝物質の同定方法にもメドを立てている。

メタボローム解析のノウハウを確立
 メタボローム解析システムとしては,高速液体クロマトグラフィ法と質量分析法を組み合わせた方法(HPLC-MS法)やガスクロマトグラフィ法と質量分析法を組み合わせた方法(GC-MS法)などがある。その中で同社は,キャピラリー電気泳動法と質量分析法を組み合わせた方法(CE-MS法)を実用化した。慶應義塾大学環境情報学部学部長の冨田勝氏および同大学先端生命科学研究所助教授の曽我朋義氏らの技術を基にしており,検出感度や網羅性などの点で他の方法より優れている(図1)。
 現在,このCE-MS法は,細胞内の代謝物質の大半を占めるイオン性低分子の解析に利用されている。ただし,「CEもMSも既存の手法だが,誰でもこの2つを組み合わせてメタボローム解析ができる訳ではない」(同社副社長の大岸治行氏)と言う。CEは代謝物質の分離,MSは質量分析を担当するが,それぞれメタボローム解析に適したプロトコルを確立する必要があるからだ。具体的には,サンプルの前処理や電気泳動,質量分析の条件などの設定,最適なキャピラリー(電気泳動に用いる細い管)の選定などが必要になる。これらのノウハウを持っていることがHMTの優位な点である。また入手可能な代謝物質に関して,CE-MS法による解析データをデータベース化し,標準データとして整備している。 

図1:メタボローム解析技術の比較
GC
HPLC
HMT独自技術
HPCE
長所
汎用性が高い
揮発性物質に適している
中性物質の測定に適している
イオン性物質の測定に適している
短所
誘導体化が必要
全ての物質が測定できない
熱変性を起こす可能性がある
イオン性物質測定が困難
中性物質測定が困難
ノウハウが必要
分機能
(理論段数)


1000〜10万段


数万段

10万〜100万段
サンプル処理

細胞から抽出後、煩雑な誘導体処理が必要

細胞から抽出後、直接測定可

細胞から抽出後、直接測定可
サンプル量

1μl/injection

1μl/injection

数nl/injection
網羅的
メタボローム解析
×

中性物質、リン脂質、ホルモンに最適

イオン性物質に最適


同社独自のCE-MS法をさらに改良
 今回HMTは,同社の独自技術であるCE-MS法をさらに改良した。具体的には,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の助成を受け,慶應義塾大学先端生命科学研究所と共同で(1)質量分析計の変更と,それに伴う分析条件の最適化,(2)未知代謝物質の同定方法の確立,の2つを進めた。
 (1)に関しては,四重極型質量分析(QMS)計から飛行時間型質量分析(TOF-MS)計に変更した。TOF-MSは,解析質量範囲が広く,高分解能,高精度かつ測定時間が速いという特徴がある。こうしたTOF-MSの特徴を引き出す最適なメタボローム解析条件を確立した。この結果,30〜40分の1回の測定で,小数点以下3桁までマススペクトル(質量分析で検出されるピーク)を得られるレベルに達した。2400種類以上のイオン性代謝物質を1回の解析で検出できることを確認しており,感度も約4〜10倍高まっている。高精度なマススペクトルが得られるので,分子式の推定精度や物質の同定精度が向上,同位体の存在比率まで特定できるようになった。
 (2)に関しては,質量分析計を2台連結させるタンデム型質量分析(MS-MS)法の解析結果や公開データベースを活用する。「従来は標準物質がないと同定が難しかったが,TOF-MS計やMS-MS法で精密なマススペクトルや断片情報を得られるので,そこから候補化合物を絞ることができる。さらに電気泳動における物質の移動度に関し,予測値・実測値をデータベースと比較することで,未知の代謝物質を同定できることを確認した」(大岸氏)と言う。

共同開発パートナーの募集で,応用展開を強化

 今後HMTでは,イオン性以外の代謝物質,すなわち中性の代謝物質に対する解析技術の確立とともに,疾患や毒性のバイオマーカーの開発を進めていく方針である。新たな低分子バイオマーカーの開発は,創薬ターゲットや診断マーカー,疾患の病態解明,食品の機能性解析,微生物による有用物質生産性向上などにつながることが期待されている。すでに中外製薬,三菱ウェルファーマ,味の素,ミツカングループなどと共同開発を進めており,「良好な結果を得ている」(大岸氏)と言う。HMTは,今後ともこうした共同開発パートナーを募集し,メタボローム解析システムの応用展開を加速させる考えである。

(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)


図2:陰イオン性の代謝物を対象にした解析データ(サンプルは大腸菌抽出物)
HMT資料図


ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズからの提案

メタボローム解析による新規低分子バイオマーカーの開発に向け,
共同開発パートナーを募集

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記事要点掲載先:日経BP知財Awareness日経BP.JP

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