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小型風力発電機が実用レベルで本格離陸へ
ゼファーが「Airdolphin Mark-Zero」を出荷

[2006/03/06]

 出力1kWで17.5kgと軽量,風速2.5〜50m/秒で発電可能,47万2500円(税込国内価格)と安価。これまでのモニュメント的なレベルを脱し,実用的な発電機として仕上がった小型風力発電機の量産出荷を,同分野の専門メーカーであるゼファー (東京都渋谷区)が2006年2月15日に開始した。すでに世界18カ所でのフィールド・テストを済ませ,優れた発電特性,小型で設置場所を選ばない利点,過酷な環境下でも連続運転可能な高信頼・耐久性などを確認済みである。

「モニュメント」から「実用」へ
  図1:Airdolphin Mark-Zero(エアドルフィン マークゼロ)
図1:Airdolphin Mark-Zero(エアドルフィン マークゼロ)
 2005年の京都議定書の発行や石油価格の高騰などから,風力や太陽光といった自然エネルギーを活用した発電システムの実用化へ向けた機運が高まってきた。その中で風力発電は,出力がMWクラスの大型風力発電機を中心に実用化が進んできたが,大型風力発電には設置場所が限られたり,設置の際の初期コストが高かったりといった問題がある。この問題を解決できる小型風力発電への期待は大きい。米国風力エネルギー協会小型部会の作成による「小型風力ロード・マップ」によれば,2020年までに米国の小型風力発電市場は1000億円規模に達し,米国全発電電力の3%,5000万kWをまかなうと予測している。ただし,これまでの小型風力発電機は実用面の効果があまり大きくなかった。この結果,家庭,民間企業,学校,自治体,系統電力を持たない離島や山小屋などに,省エネルギー・独立電源やエコロジー・シンボル/モニュメントとして導入される場合が多かった。
 この状況を打開するためには,風力発電に対するインセンティブ制度を太陽光発電などと同様に充実させることと,小型風力発電機の性能を実用レベルに引き上げることが必要である。前者に関しては,欧米先進国を中心に一般家庭の導入に対するインセンティブ制度などが急速に充実してきた。今後,日本でも同様のインセティブ制度が整うことが期待されている。このような周辺環境が整ってきた中,「本格的に発電し,実用性の高い小型発電機」が登場した。ゼファーの「Airdolphin Mark-Zero(エアドルフィン マークゼロ)」だ(図1)。
 出力1kWで17.5kgと軽量であり,2.5〜50m/秒と広範囲の風速領域で連続発電が可能になった(図2)。さらに実証実験データから,(1)平均風速が低い領域で発電が可能である,(2)風の強弱がある乱流下で発電量が大きくなる,という2つの特徴を持つことが分かっている(図3)。価格も47万2500円(税込国内価格)に抑え,一般家庭などでも設置しやすくした。今回の風力発電機1基当たりの発電量は,平均風速が5.5〜6.5m/秒の場合で100W〜120Wであり,親子4人の一般家庭における1カ月の平均消費電力量の約1/3をまかなえる計算になる。ちなみに,二酸化炭素(C02)の発生量の削減効果に換算すると約800kg/年になる。このような特徴からエアドルフィン マークゼロが,小型風力発電に対する認識を,これまでの「モニュメント」扱いから「実用的な発電ツール」へ格上げさせる起爆剤になる可能性が高い。 

図2:出力特性
図2:出力特性


図3:発電量データ
図3:発電量データ


産官学プロジェクトの成果
 今回の製品を開発するため,ゼファーは産学官14機関から成る産学官プロジェクトを2002年から編成し,経済産業省および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の助成などを受けながら研究開発を進めてきた(表1)。これにより,1W当たり17.5gの超軽量設計,マルチ・スタガー方式を採用した1枚当たり380gの軽量翼設計,「サイレント・ディスラプター(SD)方式」を採用した翼の静音化技術,「スウィング・ラダー・システム」を採用した可動式の尾翼,耐候性に優れるアルミ・ダイキャストのビスなし外装きょう体構造,微風でも回転力を呼び込むパワー・アシスト回路,無停止連続出力運転や安全制御などを可能にした「ゼファー・パワー・マネジメント・システム」と呼ぶ独自の制御技術,ネオジウム・アイアン・ボロン(Nd-Fe-B)系磁石を採用した質量7.5kgで最大出力4.5kWを実現した発電幾,インターネット経由で各種データを通信できる多機能情報システムなどを実現した。
 さらに今回の量産開始に先立ち,ゼファーは性能実証と信頼性・耐久性を確認するため,2005年11月に全世界の18拠点に試験サイトを設けて実証実験を実施,現在も継続中である(図4)。このサイトの選定に当たっては,「信頼性と耐久性のテストに相ふさわしい条件が整っている,もしくは実際の設置場所を想定できる,という視点から,強風,突風(ガスト),潮風,砂嵐などの強い地点,3000m級の雪山など厳しい自然環境条件の地点,人口が密集する市街地など選択した」(ゼファー)。発電量や気象データを含む各種動作データ,映像(動画を含む)は,このフィールド・テストの各実験サイトから同社へ,ネット経由でリアルタイム送信されており,その一部はWebサイトで公開されている。
 ゼファーでは,今回の小型風力発電機の生産規模として5000台/年を予定しており,このうち60%は海外への輸出を見込む。定格出力が海外市場の中心出力帯である1kW帯に一致しており,「本格的に発電する新エネルギー源」(同社)として,風力エネルギー利用の先進国である欧州諸国における系統連系(売電)型市場を重点的に開拓する計画である。また,これまで国内で蓄積した独立分散型電力の経験を生かし,世界人口の1/3に当たる約20億人が生活する無電源地或への導入も推進していく。さらに,「小型風力分野では初めて『ミニ・ウインド・ファーム』(複数台の小型風力発電機を同一個所に設置)を強力に推進してマイクログリッドヘの連結,そして京都メカニズムのCDM(クリーン開発メカニズム)取り引きへの貢献に結び付けたい」(同社)と意気込む。

表1:産官学共同開発「エアドルフィン」プロジェクト
機関
担当分野など
民間企業
東レ
翼の成型
NEOMAX
磁石

ユニテック

発電機
横河電機
通信系、メインテナンス
NTN
ベアリングなど回転部
モリ山技研
外装きょう体
青梅電子
電子回路基板
ファーストエスコ
利用方法の開発
岩崎電気
街路灯など利用方法の開発
日東化工
振動吸収素材
ゼファー
商品企画、制御回路開発、設計、ソフト開発、営業(プロジェクト主宰)
官庁など
産業技術総合研究所
翼の基本設計、実装試験
(松宮W氏(現:九州大学)と小垣哲也氏が参加)
経済産業省
開発支援
NEDO技術開発機構
開発支援
学界
東京大学大学院
翼の解析、基本設計(荒井忠一氏と飯田誠氏が参加)


図4:実証実験サイトの一例
(a)八ヶ岳,赤岳天望荘 (b)スペイン,タリファ(ジブラルタル海峡)
八ヶ岳,赤岳天望荘
スペイン,タリファ(ジブラルタル海峡)

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記事要点掲載先:日経BP知財Awareness日経BP.JPTech-On!

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