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産総研,簡便にカーボン・ナノチューブの導電性を高める手法を開発
−ITOに替わる次世代透明電極にカーボン・ナノチューブの可能性−

[2006/03/09]

 導電性の大きい単層カーボン・ナノチューブ(SWCNT)を簡便に抽出する方法を産業技術総合研究所ナノテクノロジー研究部門(茨城県つくば市)の片浦弘道氏らが開発した。SWCNTは,そのままでは素材に含まれる金属的SWCNTが33%と少ないために良好な導電性が得られないが,今回の技術を使って絶縁体的SWCNTを選択的に除去し,金属的SWCNTの割合を80%に増加させることに成功した(図1)。「カーボン・ナノチューブ(CNT)本来の特質を損なうことなく導電性を飛躍的に向上できるため,フラットパネルディスプレイ(FPD)の透明電極や導電性フィラーなどへの応用展開が考えられる」(片浦氏)と言う。

金属的SWCNTを80%に濃縮
 例えば,需要が急増しているFPDでは,ディスプレイを構成する透明電極にITO(酸化インジウムすず)が使われており,レア・メタルであるインジウムの供給が不安定なことからITOの代替材料としてとしてCNT導電性薄膜に期待が集まっていた。しかし,この応用を考えた場合,高い導電性を持ったCNTを得る手法が確立されていなかったことが大きな課題になっていた。この課題を克服できる技術として,今回のSWCNT抽出技術を位置付けることができる。
 SWCNTには電気を良く通す金属的SWCNTと電気を通さない絶縁体的SWCNTの2種類があり,通常はその混合物となっており,SWCNTの導電性を高めるためには金属的SWCNTを選択的に抽出する必要がある。この抽出技術として,従来はアミン類をSWCNTに作用させて有機溶媒に可溶化させる方法を使っていたが,この方法では化学反応処理の後12時間の遠心分離作業工程が必要でとても簡便な抽出技術とはいえず,構造的欠陥を持つSWCNTを濃縮してしまう可能性があること,抽出後にアミンを除去する必要があること,等の問題点があった。
 これに対し今回の技術では過酸化水素水(H202)を使って室温下で絶縁的SWCNTを燃焼させることで簡便に導電性SWCNTを抽出できるようにした。この技術を確立するため,産業技術総合研究所は過酸化水素水(H202)の強い酸化力に注目した。具体的には,SWCNTから触媒金属を除去する前処理を施し,液温90℃に加熱した濃度30%程度の過酸化水素水の中で攪拌しながら47分間浸させる。この結果,絶縁体的SWCNTが最も活発に反応を起こすことを突き止めた(図2)。過酸化水素水によって燃焼させられるだけなので,排出物は二酸化炭素(CO2)だけである。欠陥SWCNTも燃焼するため,不純物が残留することもない。

FPD向けに成膜技術を持つ企業との共同開発を目指す
 今回の技術において,現状の開発目標は収率の向上である。現状では,金属的SWCNTが7%/分,絶縁体的SWCNTが10%/分の割合で,同時に酸化反応が進行するため,金属的SWCNTの含有率を80%まで濃縮すると,収率が1%程度となってしまう。有力なアプリケーションの1つであるFPD用電極への実用化を加速させるため,成膜技術を持つ企業との共同開発で進めて行きたい考えである。なお,今回の過酸化水素水による金属的SWCNT濃縮手法は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の支援を受けて開発した。

金属的SWCNT33%と金属的SWCNT80%のシミュレーション図
図1:金属的SWCNT33%(写真左)と金属的SWCNT80%(写真右)のシミュレーション。青い線が絶縁体的SWCNT,赤い線が金属的SWCNTを表し,両端の黄色い部分が電極を表す。金属的SWCNT33%では電気を通す金属的SWCNTが途切れ途切れになってしまっているが,80%濃縮になると電気の通る“道“が多く確保される。

過酸化水素水の酸化反応による金属比率の時間的変化図
図2:過酸化水素水の酸化反応による金属比率の時間的変化を表す。47分間処理した時に,金属的SWCNTの残留率が最も高くなる。


産業技術総合研究所ナノテクノロジー研究部門からの提供資料


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【ITOに代わるカーボンナノチューブ導電性薄膜共同開発の提案】

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記事要点掲載先:日経BP知財Awareness日経BP.JPTech-On!

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