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たんぱく質,混ぜて固める新技術
大阪大が“常識”を超える発想で,たんぱく質研究を大幅促進


[2006/03/10]

 溶液を攪拌させて,たんぱく質を結晶化させる―こんな独自技術で,関係者の注目を集めているのが,大阪大学大学院工学研究科助教授の高野和文氏らの研究グループだ。この技術を駆使して,これまで高品質な結晶化が難しかった膜たんぱく質などで,続々と成果を上げている。
 これまでたんぱく質の結晶化といえば,溶液を静置して,ひたすら結晶が成長するのを待つのが常識だった。わずかな振動さえも嫌い,宇宙空間で実験する場合もあるくらいだ。しかし,成功率が低く,結晶化まで時間がかかる,分解能が低いなど,決して十分なレベルではなかった。こうした取り扱いの難しさから,たんぱく質の結晶化は,たんぱく質立体構造解析の大きなボトルネックとなっていた。
 これに対し,研究グループは,同研究科助教授の森勇介氏らとともに「たんぱく質溶液をかき混ぜる」という常識を超える手法を導入し,新技術を確立,結晶化の成功率,スピード,分解能を大幅に向上した。「溶液攪拌は,従来の常識をまったく覆す革新的な技術」(高野氏)であり,2002年には「創晶プロジェクト」を発足,2005年7月には当該技術を基盤にベンチャー企業の創晶を設立している。
 今回,研究グループは,新たに高品質な結晶化に成功した酵素や膜たんぱく質などを明らかにした。製薬企業,アカデミアとの共同研究による成果で,作製期間,品質とも,いずれも従来技術を大幅に上回った。

成功率は60〜70%を実現。品質の高さは群を抜く
 研究グループが確立した結晶化技術は,短波パルスのレーザーを照射して強制的に結晶の核を発生,溶液を攪拌することで短期間で結晶を作製する。作製した結晶は,ニコンと共同開発したレーザー加工技術で微調整を加える。研究グループでは,こうした技術による結晶化を再現性よく実現するために,新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO技術開発機構)の助成を受け,たんぱく質結晶作製システム(写真1)を構築している。
 これらのシステムを利用することで,結晶化の成功率は従来技術が20%台だったに対し,60〜70%を実現する。スピードと分解能に関しては,これまで数年かけても低品質の結晶しか得られないことがしばしばあったが,通常1週間程度で高品質の結晶が完成する。種類によってはレーザーの照射時間を調整する,時間をかけてゆっくり結晶化させるなど,条件を変えることでさらなる品質向上が可能になると言う。
 今回,明らかにした共同研究による成果は,新たに高品質な結晶化に成功したたんぱく質である。具体的には,アステラス製薬との共同研究によるトリオースリン酸異性化酵素,京都大学ウイルス研究所教授伊藤維昭氏との共同研究による膜たんぱく質SecDF,たんぱく質名は明らかにしなかったが東京工業大学生命理工学研究科教授の濡木理氏との共同研究による膜たんぱく質AとRNA修飾酵素の高品質の結晶を作製した。いずれも従来の結晶化技術では分解能の低い低品質の結晶しか得ることができず,十分な立体構造解析ができなかった。なお共同研究には,高野氏の研究グループの他,阪大助教授の井上豪氏ら創晶プロジェクトのメンバーが参画している。
 トリオースリン酸異性化酵素は,時間をかけて高品質の結晶を得たケースだ。従来技術では結晶化に5年かかり,分解能は0.28nmだった。これに対し新技術では,結晶化に2カ月かけることで,分解能を0.14nmまで高めた。宇宙空間でも0.22nmが限界だったと言い,品質の高さは群を抜いている(写真2)。また,残りのたんぱく質は1週間程度で結晶化し,SecDFは分解能が0.56nmから0.378nmに,膜たんぱく質Aは0.6nmから0.4nmに,RNA修飾酵素は0.5nmから0.31nmと飛躍的に向上した。いずれも短期間で高品質の結晶を得た。今後,研究グループでは,結晶化に関する共同研究を拡大し,(1)結晶化確率や品質のさらなる向上,(2)新しい結晶化技術の開発,を進めていく考えである。
(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)


写真1:たんぱく質結晶作製システムの各装置
たんぱく質結晶作製システム図

写真2:トリオースリン酸異性化酵素の結晶
トリオースリン酸異性化酵素の結晶図

大阪大学創晶プロジェクトからの資料提供

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(提案の詳細,創晶プロジェクトの概要,結晶化技術,結晶加工技術などに関する資料)

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同大学からの提案
【タンパク質結晶化の技術開発に関する共同研究や結晶化受託の提案】
 タンパク質の立体構造決定には,高品質な結晶を必要とする。しかしその作製は容易ではなく,ボトルネックとなっている。大阪大学大学院工学研究科を中心とする創晶プロジェクトでは,これまでに幾つかの画期的な有効な結晶化技術を開発し,それを基にした受託ベンチャー「株式会社創晶」を設立した。結晶化技術開発における新たな共同研究開発を提案する。また,タンパク質のほか,有機低分子や合成ペプチド,高分子材料などの結晶化の依頼も提案する。





記事要点掲載先:日経BP知財Awareness日経BP.JP

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