技術&事業インキュベーション・フォーラム

TOPページへニュースへ連携提案へ注目技術&事業コラムへイベント・セミナーお問合せ


慶應大,たんぱく質解析技術「STABLE法」の実用化にメド
完全抗体のスクリーニングにも自信


[2006/03/16]

 慶應義塾大学理工学部生命情報学科生命分子工学研究室講師の土居信英氏らの研究グループは,独自のたんぱく質解析技術「STABLE(streptavidin biotin linkage in emulsion)法」を改良,実用化にメドをつけた。
 STABLE法は,たんぱく質の機能解析や相互作用解析に応用が可能なDNAディスプレイ法の1つで,たんぱく質とその遺伝情報であるDNAを連結した分子(DNAたんぱく質対応付け分子)を利用する。そのため,スクリーニングと同定をシームレスに行えるという特徴がある。今回,たんぱく質とDNAの連結部分に光切断可能なリンカー(つなぎ役となる分子)を導入することで,たんぱく質のスクリーニングと同定をより効率的に行えるようにし,実用性を大幅に高めた。たんぱく質の同定の際には,連結部分を切り離してDNAを回収する必要があるが,光切断リンカーにより,回収効率が約10倍高まるからだ。
 今回の改良により,「創薬への応用を進める技術基盤が完成した。完全抗体のスクリーニング系にも応用できる状況が整った」(土居氏)。抗体やペプチド・リガンド(受容体と特異的に結合するたんぱく質)などの探索に応用すれば,治療薬や診断薬の候補たんぱく質を効率的に同定できる。今後,研究グループでは,共同研究先として製薬企業などを募り,STABLE法の応用研究を加速していく方針だ。

光切断リンカーでスクリーニングと同定を大幅に加速
 STABLE法では,まず,cDNAライブラリなどを基に,無細胞たんぱく質合成系で多様なDNAたんぱく質対応付け分子のライブラリを作製する。次に,ライブラリから特定の分子(医薬品のターゲットとなる抗原や受容体など)に親和性,特異性の高いDNAたんぱく質対応付け分子をスクリーニングする。DNAとたんぱく質を切り離し,DNA配列を解析することで,たんぱく質を同定していく。切り離したDNAを基にSTABLE法を繰り返せば,より親和性,特異性の高いたんぱく質を濃縮できる(図1)。
 関連技術として,DNAではなくRNAを連結する「In vitro virus(IVV)法」(同研究室教授の柳川弘志氏らが開発した技術)が,たんぱく質解析技術として実用化されている。すべてのプロセスをin vitro(試験管の中)で行うことができ,(1)細胞を利用する従来技術よりライブラリの多様性を容易に1000倍以上高めることができる,(2)たんぱく質のスクリーニングと同定が迅速,簡便,(3)細胞毒性の強いたんぱく質の解析が可能,(4)RNAより安定なDNAを用いるため,細胞を用いる実験にも適用可能といった特徴がある。
 今回,光で切断が可能なリンカーとして光分解性の2-ニトロベンジル基を導入したことで,(2)の過程がさらに加速することになる。これまではプロテアーゼと呼ぶ酵素によって切り離してDNAを回収していたが,光切断では回収率を高めると同時に,回収時間を大幅に短縮できるからだ。具体的には,プロテアーゼでは2時間の反応で回収率が約80%だったのに対し,光切断では15分間の紫外線照射で100%の回収率を実現した(図2)。この結果,たんぱく質のスクリーニングと同定をよりシームレスに行うことが可能になる。
 なお,今回の改良は新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO技術開発機構)の支援を受けて進めた。

共同研究パートナーの募集で応用研究を加速
 研究グループが行った実験では,細胞表面のGたんぱく質共役型受容体(GPCR,代表的な膜たんぱく質の1つ)に対するペプチド・リガンドや抗体の可変領域部分であるFab抗体のスクリーニング系の確立に成功している。さらに,「界面活性剤のマイクロカプセルを利用してたんぱく質を合成,DNAと連結することで,二本鎖抗体の多様なライブラリを構築できる。アミノ酸数1000個程度の大きなたんぱく質の対応付けにも成功しており,完全抗体のスクリーニング系としても応用できる可能性が高い」(土居氏)と言う。今後,研究グループでは,実際に疾患に関与するたんぱく質を用いた例証を増やし,STABLE法の応用研究を加速していく方針だ。
 治療用・診断用抗体の市場規模は2010年には3兆〜5兆円に達するとの予測がある。また,既存の医薬品の半数はGPCRを標的としている。製薬企業などでは,疾患に関与する受容体や抗原の特定を進めると同時に,これらと特異的に作用するリガンドや抗体の探索を進めている。研究グループでは,製薬企業を中心に共同研究パートナーの募集を開始し,こうした創薬研究の基盤技術としてSTABLE法を適用していきたい考えである。

(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)


図1:STABLE法によるたんぱく質のスクリーニング
STABLE法によるたんぱく質のスクリーニング図

図2:DNA回収率の比較
DNA回収率の比較図

慶應義塾大学理工学部生命情報学科生命分子工学研究室からの資料提供

ニュースリリースはこちら
詳細資料はこちら
(提案の詳細,技術の詳細,実験例など)

PDFファイルの閲覧にはAcrobat® Reader®が必要です。
Acrobat® Reader®のダウンロードはこちら

同大学からの提案
【迅速な抗体作製・受容体リガンド探索を可能とするSTABLE法を診断・医療に応用するための共同開発の提案】
 ポストゲノム時代の網羅的なタンパク質研究において,それぞれのたんぱく質を特異的に認識できる抗体の迅速な作製や,ゲノム創薬の主要な標的である受容体の機能解析が,次の重要な課題となっている。慶應義塾大学では,迅速な抗体作製や受容体リガンド探索を可能とする独自の試験管内選択技術(光切断型DNAディスプレイ法)を確立した。この技術を診断・医療に応用するための共同開発を提案する。


記事要点掲載先:日経BP知財Awareness日経BP.JP

オープンイノベーション・フォーラム

オープンイノベーション静岡

トピックス
パナソニックの住宅関連事業を支える耐酸被覆鋼板、接着技術や樹脂コーティング法に独自ノウハウ

【座談会】レアアース泥の採泥・揚泥は戦略技術、焦らず段階を踏んで確実に商用化を目指す

IoT、大手自動車メーカーが製造ラインに導入約60万円のシステムで不良品の発生を大幅低減

人気記事ランキング(2018年8月)










オープンイノベーションコラム

オープンイノベーション・フォーラム




| 産業イノベーションHOME | 技術&事業インキュベーション・フォーラムHOME |
Copyright (c) 2005-2013 TechnoAssociates, Inc. All rights reserved.

お問い合せ イベントIndex コラムIndex 提案Index ブレークスルー技術Index INTERVIEW Index topへ テクノアソシエーツへ