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中古の賃貸アパート再生プロジェクトの第3号物件が完成
“呼吸する”素材「Moiss」で「エコとみずみずしい空間」へ

[2006/08/10]

 第一線の建築家の手による空間設計で中古の賃貸アパートを「デザイナーズ・アパートメント」として蘇らせる新しい試みが進んでいる。建築家で慶応義塾大学大学院政策メディア研究科助教授の渡邊朗子氏らが取り組む「スマート・アパートメント・プロジェクト」である。このプロジェクトの第3号物件がこのほど完成した。今回は,空間設計の重要な要素である内壁や天井の素材として,三菱商事建材の「Moiss(モイス)」を採用した。この素材を採用することにより,「エコロジカルな良さと,柔らかな曲面を作り出せることを生かして,みずみずしい空間を生み出すことができた」(同氏)と言う。高度経済成長時代に大量に供給された賃貸アパートを再生させる試みとして今後,注目を集めそうだ。

 スマート・アパートメント・プロジェクトは,渡邊朗子氏を中心に起業家コミュニティ「東京21cクラブ」のメンバーが参加して進めている産学連携プロジェクトである。企業メンバーとしては東京電力,ハウスメイト,栃木セキスイハイム不動産などが参画している。このプロジェクトの目的は,実証実験を通じて高度経済成長時代に大量に供給された賃貸アパートを再生させ,アパート空間の潜在的な可能性を追求することにある。

高度経済成長時代に大量に供給された賃貸アパートを再生
写真:キッチン
「スマート・アパートメント・プロジェクト」の第3号として改装した賃貸アパート住戸。壁と天井の白く見える個所に「Moiss」を使っている。
 近年,このような賃貸アパートの空室が目立つようになっている。首都圏近郊の一部地域では空室率は20%に達し,スラム化の懸念さえ生まれている。この原因は,「画一化された空間がアパートとして大量供給されたために市場とミスマッチが生じた」(同氏)ことである。この問題を解決するため,このプロジェクトでは「IT(情報技術)などを活用して生活空間としてのアパートの機能を再定義し,リバイタライズ(再活性化)」(同氏)させようとしている。
 具体的には,新築後数年から数十年が経過して競争力が低下した賃貸アパートについてオーナーの依頼を受け,改装して改装前に比べて高い賃料で入居者が決まるようにテコ入れする。すでに2つの賃貸アパートを改築し,いずれも新築時の募集賃料を上回る家賃で入居者が決定した。「鉄骨造のアパートでは,躯体である『スケルトン』は60年近くの耐用年数がある。しかし,内装や設備などの『インフィル』は20年も経過すると,素材そのもの劣化やライフスタイルの変化によって実用に耐えなくなる。このため,10〜15年で交換していく必要がある」(渡邊氏)。このインフィルを中心にアパートを魅力的に作り変えるのがスマート・アパートメント・プロジェクトである。
 今回の第3号物件は,栃木県宇都宮市内にある築4年の賃貸アパートの一室(写真)。間取りを2DKから1LDKに変更するとともに,内装材をはじめ,水回りの設備,照明器具などを渡邊氏のデザインに従って取り替えた。同氏によれば,この部屋の改装への総投資額は200万円程度。改築前には家賃5万円台でも空き室になっていた部屋を,改装後は7万円で入居者を募集している。

空間設計の重要要素であるインフィル素材に「Moiss」を採用
 このような改築では,空間設計としてインフィルの素材選びが非常に重要な要素になる。「人間の知覚は空間をフレームではなく面で認識するため,面を構成するインフィルのデザインによって空間設計の印象が大きく変わる。さらに,見た目を重視するインテリアとは違い,インフィルは人間と建築の間のインタフェースとなるため,インフィルの素材性能が重要になる」(同氏)からである。このインフィル素材として,今回はMoissを採用した。この素材を使った理由として,同氏はエコロジーの観点と,曲面を自在に構成できること,の2点を挙げる。
 Moissは,建築の下地材として使われるケイ酸カルシウムの基材に,粘土鉱物であるバーミキュライトを加えたもの。合板のような接着剤を使っておらず,調湿作用にも富む“呼吸する素材”であることから,シックハウス対策建材として評価を高めてきた。加工性が高く水分を含ませると曲面を自在に構成できる特徴を兼ね備える。製造は三菱マテリアル建材,販売は三菱商事建材。

 今回の改築では,Moissを壁と天井などの素材として使った。例えばキッチンでは,曲面を構成できることを生かして壁の一部に丸みを持たせ,そこに収納スペースを設けた。居室とリビングの間仕切り戸についても,Moissを使って作成し,そこに穴を開けてビー玉を埋め込み,ほのかな光が通るようにした。「今回Moissを使ってみて感じた魅力は,柔らかさを感じさせること,そして使うことで空間がみずみずしくなったこと。視覚からは伝わりにくい,このような性能面の良さを,実際にMoissを使った空間を体験してもらいながら,エコロジカルな良さも伝えていきたい」(同氏)とする。
 なお,東京21cクラブの拠点施設は現在建築中の新丸の内ビルディングに入る予定であり,その空間設計も渡邊氏が手掛けている。渡邊氏は,この施設のエントランスに使われるトンネル型の通路壁面を構成する建材にもMoissを使う予定である。また,個人として設計に携わる建売住宅のプロジェクトでも内装材として使っていきたいと言う。

写真:間仕切り
写真:間仕切り
収納の仕切りに「Moiss」を使った。一定の間隔で同じ大きさの穴を開けた「Moiss」にビー玉を埋め込んだ。

「Moiss(モイス)」の詳細はこちら


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