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ナノダイヤ研究で,日本科学の発展と競争力強化に貢献
ナノ炭素研究所社長 大澤映二氏に聞く

[2006/11/24]
(テクノアソシエーツ編集部)

大澤映二氏
 ナノテクノロジーは,2010年には国内市場規模は20兆円を超えるだろうと言われている。各企業は膨大な投資をしてカーボンナノチューブ(CNT)やフラーレン(C60)の用途開発を進めている。
 35年以上前に世界に先駆けてフラーレンの存在を予言し,「幻のノーベル賞受賞者」とも称される大澤映二氏(豊橋技術科学大学名誉教授,ナノ炭素研究所社長)に,ナノテクノロジーの研究開発に関する現状認識と,現在の活動について聞いた。

ナノテクは暗黒大陸。基盤技術の積み重ねによる探索が不可欠
 ナノテクノロジーはある意味で,現在の科学技術における「暗黒大陸」である。ナノ素材は化学で対象とする分子よりもはるかに大きいので,不溶,不融,不揮発,非昇華性であり,精製ができず,純粋な形で扱うことができないために,化学のように厳密な科学研究を行うことが出来ない。また,期待が非常に大きい反面,研究開発を先に進めようとする度に未知の課題に突き当たる。暗黒大陸から抜け出せないかも知れない。
 それでも,ナノテクノロジーが,21世紀のイノベーションの牽引役となることは間違いない。ナノテクノロジーが具現化されるためには,地道なナノテク基盤技術の積み重ねが不可欠である。ここでいう基盤技術とは,高分子化学,コロイド化学など通常の大きさを超える分子に対して,過去30年にわたって化学において蓄積された分析手法に加えて,新たに開拓されつつある超分子,自己組織化などの低エネルギー集合論を組み合わせることによって,ナノ粒子に対する基本的な取り扱いとして展開しつつある新技術のことである。CNTやC60に代表されるような,新しい構造に支えられた新炭素の探索をミッションにしたいと考える科学者マインドは勿論重要であるが,こうした基盤技術をきちんと積み重ねていこうとする科学者マインドもまた重要である。
 私は現在,爆発法による4.3nmナノサイズのダイヤモンド粒子の製造・精製,およびカーボンブラックから一桁ナノダイヤ大のダイヤモンドを作り出す方法(通称「煤からダイヤモンド」プロジェクト)の研究に取り組んでいる。基礎研究部分に対してはNEDOの国際共同研究助成事業(NEDOグラント)の採択を受けて実施している。すでに,4.3nmナノダイヤモンド製造・精製法開発はほぼ完了した。煤一次粒子の結晶性向上に成功し,ナノダイヤモンドの前駆体であるバッキーダイヤモンドへの変換段階に進んでいる。これから数年は,汎用的基幹素材としての4.3nmナノダイヤモンドの応用開発に重点を置く計画である。
 最も古くから構造を知られている古典的炭素ダイヤモンドのナノバージョン研究は,科学者の視点からするとあるいは刺激的に映らないかもしれない。しかし,この研究には,これまで思うように応用開発が進まなかった人造ダイヤモンド開発の最後の望みがかかっている。

ナノダイヤモンドは,産業変革の起爆剤に
 1955年,高温高圧法ダイヤモンド合成法の成功によって始まったミクロ人工ダイヤモンド産業は,残念なことに用途が研磨剤砥粒と高負荷ドリル・カッター保護膜にほぼ限定され,小さな市場を創出したに留まった。主なる理由は,ミクロダイヤモンドの加工性が低く,広範な用途に対応する素材とならなかったからである。現在,研究開発中のナノダイヤモンドはほぼ球形の超微細粒子で,表面構造制御が可能である。このようなナノダイヤモンドは,従来のミクロ人工ダイヤモンドと同様に超精密研磨砥粒として応用する以外に,(1)一粒一粒を量子ドットとして利用する,(2)粉末冶金やゾル・ゲル法,SPS法などによって低温成型する,(3)プラスティック,樹脂,ガラス,セラミックス,金属,合金などに分散混合して強化成分として使うなど,極めて広い応用分野があると予想されている。(表1参照

 例えば,上記用途(1)に該当する用途としては,N+イオンを加速注入して,強力な蛍光性ダイヤとし,細胞中に埋め込んで,蛍光性マーカーとして活用することが可能である。
 用途(3)の例としては,銅,チタンなどにナノダイヤモンドを分散させると,強度を向上させることが出来る。この際に固体マトリックス中にナノダイヤ一次粒子を分散させる技術が必要である。現在,私が社長を務めるナノ炭素研究所からサンプル提供し,材料メーカーなどがこうした用途開発を進めている。用途そのものに合わせた最適化は,各社の専門とする部分であり,私の研究は基盤研究部分に特化してリソースを集中投下している。

ナノダイヤモンド研究会を計画
 ナノダイヤモンドに関しては,2006年度中に高純度無色透明4.3nmナノダイヤモンド分散の試験生産プラントを稼動し,大量の試料を供給できるようになる見込みである。ここから先,4.3nmナノダイヤモンドの優れた二次製品を早く発見・製造し,イニシアティブを獲得するかが重要課題となるが,これは世界の研究開発者を相手にした激しい競争になると予想される。こうした競争に日本国として打ち勝つための手段の一つとして,国内の大学,国研,民間のダイヤモンド研究者から構成される「ナノダイヤモンド研究会」を発足させたいと考えている。参画する民間研究者にとって大切なのは,企業派遣「材料屋」の視点ではなく,飽くまで「科学者」の視点である。ナノダイヤモンド研究に不可欠な解砕技術は,試行錯誤法ではなく,化学・物理に代表される科学的研究方法を駆使することによって得られた,基礎研究の成果に根ざしたものであり,私自身の40年以上の絶え間ない努力と経験を積み重ねて体得した手法である。ナノテク新技術を基礎研究へフィードバックし,蓄積された基礎研究成果を又実地に活用していく。研究会を通じてこうした情報循環を活性化し,日本のナノ科学の発展と競争力の強化に貢献していきたい。

表1:天然ダイヤモンドの性質
天然ダイヤモンドの性質
大澤氏が作成。
ナノダイヤモンドも,天然ダイヤモンドと同等の性質を持つと予想されると大澤氏は語る。


記事要点掲載先:日経BPMEMS InternationalTech-On!

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