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[2006/12/07]

ニュースリリース
報道関係者各位
東京工業大学 大学院総合理工学研究科

大型リチウムイオン電池実現に光明
─ 大幅なコストダウンを可能にするオリビン型燐酸鉄の電極反応の仕組を解明 ─


【新規発表事項】
 東京工業大学大学院総合理工学研究科物質電子化学専攻助教授 山田淳夫,電力中央研究所主任研究員 小林陽らの研究グループは,将来の大型リチウムイオン電池の実現には不可欠と考えられている電極材料において,スムースな充放電に重要な役割を担うと考えられる中間状態を見出し,これが充放電中に自発的に生成していることを突き止めた。
 現在,電気自動車用,夜間電力貯蔵用等の大型リチウム電池を実用化する上で,材料のコストと安全性が大きな障壁となっている。オリビン型燐酸鉄と呼ばれる化合物を用いるとこれらの問題は解決されると期待されているが,大電流を取り出すのが困難とされ,詳細な充放電機構も明らかにされていなかった。同研究グループでは,今回の研究成果から得られた知見を元に改良を進めることで,より安価,安全かつ高性能な大型リチウム電池実現を目指して行く。

【背 景】
 環境保全問題への意識の高まりから,自動車用途を中心に高性能大型蓄電池への期待は,かつてない高まりを見せている。コミュータ用途の純粋電気自動車から,プラグインハイブリッド,パラレルハイブリッド等,用途に応じたシステムの多様化と同時に実用性を見越した集約化も進んでいる。競合技術の固体高分子型燃料電池はコストや耐久性,燃料の水素の貯蔵・輸送技術の障壁から,実用化は相当先になるとの現実的な見方が支配的である。キャパシタは長期寿命は保証されるが,容量が小さい問題は原理的な部分に依っており,ハイブリッド用途がぎりぎり適用可能であるとの見方が大勢である。
 リチウムイオン電池が飛びぬけて高いエネルギー密度を有しているにも関わらず,小型用途に限定されているのは,(1)材料コストが極めて高いこと,(2)安全性が確保できないこと,の2点が大きな要因である。加えて,小型用途では製品寿命が短いこともあり,繰り返し使用特性を犠牲にして高容量を実現している側面があるが,このような妥協は大型用途では許されない。大幅なコストダウンと高安定動作化が同時に要求される。こうした事からハイブリッド自動車等の大型用途にはエネルギー密度で劣るニッケル水素電池が用いられている。
 リチウムイオン電池のこうした課題に対しては,新電極材料としてオリビン型燐酸鉄LixFePO4(0<x<1)が有望視されている。しかしながら,又この電極材では,大きな電流を取り出すのは困難であると言われていた。

【訴求点】
 研究対象としている電極材料であるオリビン型燐酸鉄は鉄を中心構成元素にしているため,メタル価格ベースでは1/1000以下までのコストダウンが可能である。リンを構成元素に含み酸素と強く共有結合しているため,電極由来の危険因子が全く存在しない。構成元素は全て豊富な資源であり,供給不安の問題もない。さらに現用材料と遜色のない高いエネルギー密度を有している等,大型用途に対して理想的な諸特性を提供するが出力特性に大きな難があるとされてきた。
 山田助教授らは本材料の機構解明を通じて最適化を行い,高出力動作に目処をつけた。精密構造解析に適した均一試料の合成法を確立し,電池の充放電時の微弱な熱の出入りを検出するための精密測定システムを高性能化した。その結果,これまで詳細な知見のなかった充放電時の相変化を,精密構造解析,高感度熱測定,平衡電位測定の3つの手法により正確に決定することに成功した。LiFePO4の充放電反応は,これまで言われてきたような完全相分離によって進行するのではなく,充放電中にリチウムと電子が固体中に“溶けて動ける”中間状態を自発的に形成していることを突き止めた。このような中間状態ができやすいほど電極活性が向上する傾向もわかった。

【今 後】
 上記知見を元に最適化を進め,すでに50Cの放電レートにおいて容量利用率50%を実現している。すなわち,約1分の放電でも全容量の半分以上が利用できることになる。今後,充放電機構に対する影響因子を多角的に検討整理することで,さらなる特性向上を実現する。さらに自動車メーカーや,電力会社,材料メーカー等との連携を強めていき,早期に量産化技術を確立することで,安価,安全かつ高性能な大型リチウム電池の実現を目指していく。

●備 考
 本成果は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)産業技術研究助成事業による研究成果です。なお,本研究成果は,本年5月に英科学誌ネイチャーマテリアルズに掲載されると同時に,11月にメキシコのカンクンで行われた210th Meeting of the Electrochemical Societyから講演招待を受け,大きく取り上げられた。さらに,12月にアメリカのボストンで行われるMaterials Research Society Fall Meeting 2006や,来年度シンガポールで行われるICMAT2007をはじめとする複数の権威ある国際会議からも招待を受けており,世界的に大きな反響を得ている。日本国内では,11/20─22にかけて東京・船堀にて開催された電池討論会において発表された。

【本件に関する問い合わせ先】
東京工業大学 大学院総合理工学研究科   助教授:山田淳夫
TEL&FAX:045-924-5403 e-mail:yamada@echem.titech.ac.jp
URL:http://www.echem.titech.ac.jp/~yamada/index.html

  【テクニカルノートはこちら】
    ・オリビン型燐酸鉄を用いた大型リチウムイオン電池用電極の技術開発に関する意見交換や共同研究の提案
【関連記事】
  ・Liイオン2次電池の安全性向上 根本的な解決を図るための新正極材料に注目 [2007年01月10日]


記事要点掲載先:Tech-On!

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