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長期的な基礎研究への支援も重要
高温超電導が20年目にして実用化へ

[2006/12/15]

長村光造氏
財団法人應用科学研究所理事・主要研究員
長村光造氏
高温超電導体の機械強度の研究に取り組む
 「技術の変化が激しい現在,2〜3年で成果を挙げられる応用研究を支援するのも必要だが,その一方で長期的な基礎研究に研究資金を投入し,じっくり成果を待つのも重要である。特に大学では,あまりにも短期的な研究を追求し過ぎると,大学の学問体系が崩れる恐れさえある」。今年3月に京都大学大学院工学研究科教授を定年退官され,財団法人應用科学研究所の理事・主要研究員に就任した長村光造氏はこう語る。

 同氏の研究分野は材料工学で,長年,高温超電導の研究に携わってきた。2004年からは,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の研究助成事業「国際共同研究助成事業(NEDOグラント)」の支援を受けて,実用複合超電導体の開発と機械・電磁気特性評価技術の高度化の研究を進めてきた。
 長村氏が研究対象とする酸化物系超電導体は,1986年に発見され,電気抵抗がゼロとなる臨界温度を一気に100K以上に引き上げた。それまでの金属系超電導体は液化ヘリウムの沸点4.2K以下に冷却する必要があった。酸化物系超電導体の発見者であるミュラー氏,ベドノルツ氏は,発見の翌年にノーベル賞を受賞している。発見当時,10年後には,酸化物系超電導体が損失ゼロの電力線やリニア新幹線,超電導磁石,超電導素子などとして実用化されると期待され,一大フィーバーを引き起こした。ところが,酸化物系超電導体は脆くそう簡単に実用化できなかった。20年の月日を経ていまようやく,電力線などへの本格的な実用化試験が開始された段階だ。
 冒頭の長村氏の発言は,長年,酸化物系超電導という難物と格闘してきて,ようやく実用化に漕ぎ着けた同氏の実感こもる言葉である。近年,産業界は「失われた10年」を取り戻すべく,スピード優先で構造改革を進めてきた。その方向自体は間違ったものではないだろう。ただし,その陰で切り捨てられたものも大きい。同氏の発言は,そうしたことへの警鐘でもある。

超電導は学際的な研究分野,各分野の専門家や企業との協力関係構築が不可欠に
 現在,長村氏はNEDO技術開発機構から支援を受ける国際共同研究プロジェクトの研究代表を務める。同氏は,参加企業・研究者の専門性を生かした国際研究チームを組み,高臨界電流,低交流損失,高強度化を超電導体実用化の克服すべき最大テーマと定め,超電導材料の設計・開発,その特性評価の研究に取り組んでいる(図1)。同プロジェクトの目標は,超電導の臨界電流300A,交流損失0.15mW/Am,機械的な耐力300MPa,長さ1kmの線材の開発にある。

【図1】長村氏の研究チームが目指す研究目標
長村氏の研究チームが目指す研究目標
研究成果は着実に挙がっている。例えばYBCO線材では,すでに臨界電流200〜250Aが達成されており,300Aの目標値の到達も可能になりつつある。


 この目標を達成するため,今回のプロジェクトには海外も含め10人の研究者が参加している(図2)。「超電導の研究は,学際的な研究分野になっており,各分野の専門家や企業との協力関係の構築が不可欠だ」(長村氏)。例えば,超電導体の線材応用で重要な機械的強度を測定する方法もそうした分野の一つである。このプロジェクトには独カールスルーエ国立研究所のArman Nyilas氏が参加しており,同氏が開発した0.5gと超軽量の歪計を機械的強度の測定に利用している。これまで歪計だけで数十gの重さがあり,その重さによって試料が歪んでしまい高精度な測定が難しかった。
 また,企業の協力も不可欠だ。「超電導体の試料作成には高額な最先端装置が必要で,もはや大学の一研究室で作り出すのは難しい」(長村氏)。今回のプロジェクトでは,米American Superconductor社と独THEVA社の2社が参加した。前者がBSCCO系試料を,後者がYBCO系試料を提供している。このほかにも,プロジェクトの参加メンバーではないが,住友電工と日立製作所が,それぞれBSCCO系試料とMgB2試料を提供している。「こうした企業との協力体制を構築するうえで,NEDOグラントといった政府系機関からの支援を受けていることが非常に役立った」,と長村氏は振り返る。

【図2】国際共同研究助成事業(NEDOグラント)の研究チームと各研究者の研究テーマ
国際共同研究助成事業(NEDOグラント)の研究チームと各研究者の研究テーマ
超電導の研究は学際的な広がりをみせており,研究者間おおよび企業との連携がますます重要になりつつある。


 長村氏は超電導の評価方法を含む国際標準化にも熱心に取り組む。2003年には経済産業大臣賞を,2005年にはIEC(国際電気標準会議)1906賞を受賞した。これらの賞は,同氏が日本における超電導の標準化およびIEC(国際電気標準化会議)/TC90(超電導)での国際標準化に,多大な貢献をしたことが認められた結果である。NEDOグラントのプロジェクトの成果であるBSCCO線材の応力・歪効果試験評価技術に関しても,IEC/TC90委員会に標準化案を提案している。「新しい材料の工業化には,その機能を評価する新しい技術が必要になる。常に新しい材料開発には新しい評価方法が求められる」(長村氏)。
 長村氏は,今後の研究目標として金属疲労と臨界電流の関係を明らかにすることを挙げている。「大型放射光施設SPring8から出る放射光を使って超電導体の中に残る残留歪を測定し,その測定結果と臨界電流との依存関係を解明する。世界初の試みである」と長村氏は語る。財団法人應用科学研究所に移られて,いっそう研究活動に没頭される長村氏の今後の成果に期待したい。

国際ワークショップMEM06の参加者
【国際ワークショップMEM06の参加者】
MEM06 (International Workshop on the Mechanical and Electromagnetic Properties of Superconductors)は,NEDOグラントプロジェクトの一環として2006年7月3日〜5日に英国Durham大学で開催された。中央に立たれているのが同プロジェクトの研究代表を務める長村氏。




記事要点掲載先:日経BPMEMS InternationalTech-On!

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