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リン系難燃剤の新合成法を開発
環境問題に対応する新プラスチック難燃化技術

[2007/01/11]

 産業技術総合研究所(産総研)環境化学技術研究部門(つくば市)は,プラスチックの骨格内にビニルリン類を直接組み込み,安定度の高い結合を実現することで,リン類の添加量を削減しつつ難燃化の効率を向上させることに成功した。これにより,従来のリン系難燃剤が抱える課題を克服できる。

環境対応型難燃化技術でVOを達成
 欧州連合(EU)全域で電気・電子機器を対象に2006年7月に施行された,RoHS指令によって,プラスチック難燃剤として用いられてきたポリブロモビフェニル(PBB),ポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)が規制対象物質となった。テレビなどの家電製品メーカー,プリント配線基板などの電子部品メーカーによる代替剤探索が本格化している。現在,主に用いられているのは,各種リン酸エステル(TPP)や赤燐 ,縮合リン酸エステル(RDP)などのリン系難燃剤である。しかし,こうしたリン系難燃剤は,高分子素材にリン系難燃剤を物理的に混合して使用するという点で,「解決すべき複数の課題を抱えている」と同部門主任研究員の韓 立彪氏は述べる。例えば,(1)液状タイプのものが多いため製品の機械的強度,耐衝撃性を低下させる可能性がある,(2)容易に加水分解するため,製品の耐水性に課題が残るので,絶縁性や耐水性が高く求められる,プリント配線基板や電子材料などでの採用が難しい,(3)長期間にわたってリン化合物が徐々に染み出して,環境ホルモン汚染の恐れがあると指摘する。
 今回開発した方法は,化学結合でリンを高分子骨格に導入という新手法。従来の物理混合との大きな違いは,ビニルリン類を化学結合で高分子骨格に直接導入することができる点にある(図1)。リン成分が数%と少なく済むため,高分子材料の物性を損なわない。モノマーとビニルリン類を反応させ共重合させることにより,結合が安定しているため,加水分解や染み出しといった恐れを克服した。耐熱性に関しては,新技術によって合成されたポリアクリロニトリルは,垂直燃焼試験において高い難燃基準であるVO(UL規格)を達成した(図2)。
 今回開発した新技術には,触媒を使ったビニルリン類の合成法を利用しており,これは産総研で1996年から世界に先駆けて研究・開発を行ってきたものである。その合成法を基にして,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の助成を受けて開発してきた。

図1:新技術の特徴
図1:新技術の特徴

図2:新技術によるポリアクリロニトリルの難燃化実験
図2:新技術によるポリアクリロニトリルの難燃化実験

企業との共同開発によって,用途探索と実用化を促進
 現在,この新技術は,既に研究室での実証実験は完了しているが,耐燃性材料としての生産や量産を可能とする実用化に向けた実証実験には未着手である。同氏は,共同開発のパートナー企業を探していることを訴える。
 「プラスチック(高分子)部品メーカーや材料メーカーと共同で,この新技術の実用化を目指しています。できるだけ早く共同研究に着手し,その改良を確実に実施していきたい」
 一方で,本研究から多くの新規リン機能性材料も得ており,これらを利用した他分野への応用について関心の高い企業との技術的ディスカッションなども歓迎するという。
 「リンはこれまでその精密合成法に欠けてきたため,有機材料としては殆ど利用されていない。これまで約10年間の研究によって,リン化合物を精密に簡単につくれるようになった。今回の難燃化に限らず,様々な新用途に適用できると信じている。」と韓氏は語る。


【ニュースリリースはこちら】
  ・プラスチックの難燃化 新技術を開発 [2006年12月18日]
  【テクニカルノートはこちら】
    ・「リンの高分子骨格への直接導入による有機材料の耐燃化」の実用化共同研究開発の提案 [2006年12月18日]
  【関連技術記事はこちら】
    ・富士通,技術の第3者向けライセンス供与を加速 [2007年05月28日]




記事要点掲載先:FPD International

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