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き裂を自己修復するセラミックス
長寿命と優れた機械的特性を保つばね材としての活用へ

[2007/01/24]

 材料自身がき裂を自己修復し,優れた機械的特性を長く持続できる,という新しいセラミックス材を横浜国立大学工学研究院エネルギー機器材料研究室が開発した。この自己修復能力は,高温になればなるほど外気との酸化反応がより活発化し促進される。従って,「使用環境が1000℃を超えるような高温度域であったり,メンテナンスや交換しにくいような箇所で,高い機械的特性を維持することが必要とされるような用途に非常に適している。」と同研究室の高橋宏治氏は語る。(表参照)

表1:セラミックス材料の主要な機械特性比較
  従来の窒化ケイ素によるセラミックス材 今回 横浜国立大学開発の
ムライト/炭化ケイ素マルチ複合セラミックス材
自己き裂修復能力
ほとんど無い
ある
高温耐酸化性
雰囲気,温度によって弱い
非常に優れる
曲げ強度(室温)
600MPa
900MPa
曲げ強度(1200℃)
300MPa
600MPa
ヤング率
300GPa(高弾性率)
250GPa(低弾性率)
(高橋研究チーム作成資料より)

ガスタービンのばね材に応用可能
 研究チームが今回開発したセラミックスの想定用途の一つは,ガスタービンなどの支持ばねである。近年のエネルギー消費増加や原料となる石油価格高騰の対策として,高温型燃料電池やガスタービンのエネルギー効率を更に向上することが期待されている。その結果,より高温度域での運転で効率を向上することが求められている。ガスタービンなどの産業用ばねに求められるのは,高い曲げ強度や伸縮性,耐熱性や耐食性である。一般の金属製ばねは金属自体の特性として600℃を超える温度域になると曲げ強度,破壊荷重などの著しい低下を招く。耐食性にも劣る。近年,開発されている窒化ケイ素によるセラミックス製ばねの場合は,高温度域での耐食性に難がある。又,振動に対する損傷を受けやすい。従ってガスタービン用などに用いる場合は,ばね寿命が短くなり,その交換を頻繁に行なう必要がある。こうした交換による操業停止の経済的な損失は「非常に大きいのではないか」と高橋氏は語る。今回の開発したセラミックスは,こうした課題に応えられるものであると,高橋氏は意気込む。

自己修復のメカニズム
 自己修復の現象は,セラミックス表面にき裂が発生した際,き裂内部に浸入してきた酸素がそこに存在している炭化ケイ素(SiC)の微粒子やウィスカー等と反応して酸化ケイ素(SiO2)を生成,その酸化ケイ素がき裂内に徐々に堆積して空間を埋め,き裂を接合することによって起こる(図1)。曲げ強度を70%程低下させる0.1mmの表面き裂をビッカース圧痕で付けて1200℃大気圧下で熱処理を行った研究チームの実験では,実験開始後70分で表面き裂の修復の兆候が見られ,120分後には光学顕微鏡で確認が難しいほどに自己修復している(図2)。このメカニズムは,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の助成を受けて解明してきたものである。

図1:自己き裂修復のメカニズム
自己き裂修復のメカニズム

図2:き裂の自己修復過程
き裂の自己修復過程
ビッカース圧痕で付けた0.1mm程の表面き裂を,1200℃大気圧下で熱処理し光学顕微鏡で撮影。実験開始後70分で,き裂の自己修復の兆候が見られた。120分後には表面き裂がほぼ確認できなくなるまでに修復している。

 同研究チームでは,ばね成型技術に実績のある企業との意見交換,共同研究を通じて,このムライト/炭化ケイ素複合セラミックス材を用いたばねの形状の検討,成型方法に関する開発を進めていき,「実用化に近づけていきたい」(高橋氏)と語る。一方で,本材料の応用として期待できる分野の製造業者や研究機関との意見交換を通じて様々な用途を開拓することを期待している。



【ニュースリリースはこちら】
  ・優れた自己き裂治癒能力と機械的特性を併せ持つ高温用セラミックス材料を開発 高温セラミックばね用材料としての応用に期待 [2006年12月15日]
  【テクニカルノートはこちら】
    横浜国立大学 エネルギー機器材料研究室からの提案
・自己き裂治癒能力を持つ構造用セラミックスの実用化を加速するための共同開発の提案 [2006年12月15日]



記事要点掲載先:日経BPSilicon OnlineTech-On!

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