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ダイオキシンを安全・低コストに分解
県立広島大学が「金属カルシウム触媒法」を開発

[2007/02/06]

 ダイオキシンを安全・低コストに分解する新しい方法を,県立広島大学生命環境学部 三苫好治助教授が開発した。これは金属Ca(カルシウム)を還元剤として用いて,ダイオキシンの分子構造中の塩素を,水素と入れ替えることによって無害化する方法である。常温下で,微かに加圧するだけでダイオキシンの分解率は99%以上を保つことができる。

累積されるダイオキシンの潜在的リスク
 強い発がん性など,さまざまな毒性を持つダイオキシンは,産業廃棄物の焼却飛灰などに含まれ,魚介類等を経由して人体に摂取される。1990年代にダイオキシン問題がクローズアップされ,2001年1月にはダイオキシン類対策特別措置法が施行された。そのため現在,焼却施設ではダイオキシンの発生を抑えるため,800度以上の高温で焼却するという方法を取っている。しかし,高温で燃焼し分解されたダイオキシンも温度が500度〜300度まで低下すると再合成(デノボ合成)する。ダイオキシンはこの過程で飛灰に包まれ,排出フィルターに掛かるため,大気中に出て行く量は激減している。しかし潜在的なリスクはある。
 現在,日本国内には1万基を超える焼却炉がある。これらの耐用年数はおよそ20年とされている。単純に見積もっても,年間500炉の解体処理が必要となる計算である。「焼却施設内には相当量のダイオキシンが再合成して残存しているはずです。しかも,灰は酸化皮膜で被われた層構造をしているため,層内部に残存しているダイオキシンを分解することは非常に難しい。ダイオキシンをきちんと無害化し,安全に解体処理できる技術は非常に重要になります。」(同氏)さらに法規制によって事業者は,焼却施設から大気中に燃焼ガスを放出する際のダイオキシン排出量が基準内に抑えられているかを確認するために,最低でも年1回以上の検査・測定を行わなければならない。この検査では分析後に廃液が発生するが,この廃液には高濃度のダイオキシンが含有されている。現在,分析業者はこれらの廃液を処分しきれずに,専用の瓶に保存したままにすることが多いという。こうした廃液処理に関しても,潜在的なリスクとして累積されているため,「早急に解決する必要がある」。(同氏)

高温での信頼性を確保
 三苫助教授は有機合成化学を専門に研究してきた。新しい「ピナコール・カップリング反応法」を探索する研究過程で,カルボニル基(C=O)同士を結合させ,2つのヒドロキシル(OH)とするための“電子の糊”にCaを使用した際に,目的とする「ピナコール・カップリング反応」は全く起こらずに脱塩素反応のみが観察できた。脱塩素できるということは,ダイオキシン処理に応用できるのではないか−−。5年前のこの研究過程における「予定外の実験結果」が,三苫助教授のダイオキシン分解研究の始まりだった。
 Caを用いたダイオキシン分解の手法は,これまで用いられてきた他のダイオキシン分解技術と比較して,安全性に大きな特徴がある。溶液処理に関する代表的な従来技術としては,プラズマ法,Pd(パラジウム)法,Na(ナトリウム)分散体法などがあるが,例えば廃液処理であれば,どれも常温では用いることができない。本来,Naは常温で用いることも可能だが,活性が高すぎるため,わざわざオイル中に分散させ活性を制御しているからである。また,灰にはわずかではあるが水分は含まれているため,Naでは危険が伴う。またパラジウム法では,最終的にアセトンなどの有害物質ができてしまうというデメリットがある。そしてプラズマ法は非常に高温下で処理する必要があるため,装置自体が大掛かりになり,コストが高くなる。金属Ca触媒法を用いれば,常温でも用いられるだけでなく,水分を含んでいても被膜が生じて緩やかな反応進行が可能なため危険性が少ない。そのため開発リスクも少なく,しかも施設にかかるコストも安価ですむ。(図参照

図:分解方法の比較
三苫好治助教授作成資料
図中:
拡張性とは,適用範囲を広げる上で重要となる安全性などを勘案した総合指標
プラズマ法の分解率は,溶液〜固相中のダイオキシンの分解率評価

 三苫助教授の開発した金属Ca触媒法は,氏の5年間に及ぶダイオキシン分解研究の第二段階に位置づけられている。第一段階は,触媒を用いずCaによる脱塩素反応を用いたものだった。第二世代では,Caに加えてパラジウムやロジウムなどの触媒を加えることによって,4塩素体以上のダイオキシンに対応しやすくした。これらの研究は,独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO 技術開発機構)の産業技術研究助成事業による助成を受けて行ってきた。現在は,第三段階の研究に着手したと三苫助教授は言う。
 「第二段階までは,アルコールを用いて飛灰の酸化皮膜を溶かすことによって,層構造の内部にあるダイオキシンの塩素を外してきました。第三段階ではアルコールを用いずにこれを実現しようと計画しています」これは焼却灰にわずかな金属のCaを混ぜて,これを粉砕機で分解することによって脱塩素反応を促そうというものだ。アルコールを用いずにダイオキシン処理するため,処理残渣の重量が減るだけでなく,安全性もさらに増す。
 こうした研究に対しては,すでに広島県下の企業から事業化の申し入れがあり,分析装置,分解装置の製品化を進めている。一方で,同氏は企業との連携を更に広く求めている。
 「金属Caの高い分解能力を用いた応用範囲は非常に広いと考えています。例えば,水耕栽培で発生する農薬を含んだ水を迅速に無害化したり,臭素化ダイオキシンから臭素を取り除くことも可能です。関心の高い企業と一緒に用途開発していきたい。」

記事要点掲載先:日経BP.net


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