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ナス科の青枯病菌対策に新たな戦略
ウイルスを使う防除・検出手法を広島大が開発中

[2007/02/09]

 「植物の病気をウイルスによって防ぐ」──「バクテリオファージ」と呼ばれるバクテリアのみに感染するウイルスを使って,ナス科の青枯病に挑んでいるのが広島大学先端物質科学研究科教授の山田隆氏および助手の藤江誠氏らの研究グループである。
 同研究グループは,青枯病菌に特異的に感染する複数のバクテリオファージの単離に成功した。ファージには,青枯病菌を溶菌する(菌を溶かして殺す)などの性質がある。そのため,このファージを製剤化して農場に散布することで,青枯病の防除や予防が可能になるという。さらに,土壌中の青枯病菌を高感度に検出する技術開発も可能で,安全性が高く,安価で有効な検出・防除システムの構築に期待がかかる。

環境性,安全性,感度に優れた防除・検出が可能に
 青枯病は,ナスやトマト,ピーマンなど主にナス科の植物で問題になっている。茎や葉が青いまましなって数日で枯れてしまう病気(写真1)で,農場全体に急速に広がる。これまでは古典的な輪作法,劇薬である臭化メチルやクロルピクリンなどによる土壌処理で,防除が行われてきた(臭化メチルは2005年に使用が禁止)。
 しかし,輪作法では土壌中の青枯病菌を完全に排除することは難しく,化学薬品は環境性や安全性の点でできれば使いたくない。さらに,作業効率が悪いため,代替法の開発が求められていた。熱水や蒸気による土壌の燻製処理も一部で行われているが,高コストで汎用的とは言えない。また,現在のPCR(DNAポリメラーゼ連鎖反応)法を用いた検出システムは検出効率や迅速性が低い。

 これに対し研究グループが単離したファージは,
  ・もともと土壌に存在するため環境に対する問題が少ない
  ・青枯病菌に特異的に感染し増殖するため,他の有用な微生物に影響を与えない
  ・菌に感染して自己増殖するため少量散布で済む
 といった特徴がある。そのため環境性,安全性に優れた防除力の高い農薬や,青枯病菌の高感度検出システムへの応用が可能になると言う。

写真1:青枯病菌に感染したタバコ(左)と非感染のタバコ(右)
青枯病菌に感染したタバコ(左)と非感染のタバコ(右)

2種類の製剤化ファージで青枯病を予防・防除
 研究グループは,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の助成を受け,複数のナス科植物の農場から土壌をサンプリング,そこに含まれるファージを調べた。その結果,青枯病菌に特異的に感染するRSS1,RSM1,RSL1,RSA1の4種類のファージの単離に成功した。こうしたファージは,世界的にも珍しいと言う。4種類のファージはそれぞれ特性が異なり,使い分けることで,(1)防除,(2)予防,(3)検出への応用が可能になる。
 (1)防除(2)予防に関しては,RSL1とRSA1を用いる。この2つのファージは,青枯病菌を溶菌する性質を持つ。通常の農場より高濃度に設定した青枯病菌の懸濁液を用いたin vitro(試験管内など人工的に構成された環境)の実験では,RSL1,RSA1が青枯病菌に感染し,溶菌することを確認した(図1)。また,青枯病菌は系統別に複数菌種(race)あるが,RSL1とRSA1は幅広い系統の菌種に感染するため(ポピュレーションカバーが広い),「様々な青枯病菌に優れた予防・防除効果を発揮する」(藤江氏)と言う。
 製剤化したファージをポット苗や移植の段階で散布すれば予防,病気の発生時に散布すれば防除につながる。現在,「ファージの投入量やタイミングなどを複数条件に分けて検証し,製剤化に向けたデータを取得中である。同時に,タバコを用いてin vivo(個体などの生体内環境)での検証も進めている」(藤江氏)段階である。

図1:青枯病菌にRSA1を感染させ,菌の増殖変化を調べた
MOI(Multiplicity of Infection):菌量に対するファージの相対量。
moi=0.1は菌の総数に対して,1/10の個数のファージを感染させたことを意味する。
OD=0.1で標準的な汚染土壌の菌の密度の数百倍以上となる。


溶菌しないファージで青枯病菌を検出
 (3)検出に関しては,RSS1とRSM1を用いる。この2つのファージは,青枯病菌を溶菌せずに増殖を抑制する性質を持つ。青枯病菌とファージを混合して培養した実験では,増殖を抑えてプラーク(菌の増殖抑制もしくは死滅により培地上に生じるスポット)を形成することを確認した(写真2)。RSSとRSMはそれぞれ系統の異なる菌種に感染するため(スペクトルが逆),「2つのファージを用いることで青枯病菌の“漏れのない”検出が可能になる」(藤江氏)と言う。
 具体的には,遺伝子組み換えでファージにGFP(緑色に光る代表的な蛍光たんぱく質)遺伝子を導入し,その光を検出することで青枯病菌の有無を判定する。検出系としては,(a)青枯病菌に感染後にGFPを光らせる,(b)あらかじめ光らせたファージを感染させる,の2つを想定している。前者は,ファージが感染するとGFPを発現するように制御する。後者は,土壌懸濁液中でファージを感染させ,遠心分離により未反応のファージを分離後,ファージにより蛍光標識された青枯病菌を検出する。検出時間は,それぞれ約2時間と約30分と言う。現在,「組み換えファージを用いた実験申請準備中で,許可が下り次第,検出方法の実証実験を進める」(藤江氏)予定である。ファージゲノムの一部をプラスミド(ゲノムとは独立して細胞内で自立複製する環状DNA)として(a)を検証した実験では,GFPが発現することを確認している。
 ファージによる青枯病菌の検出・防除システムは,土壌だけでなく水耕栽培への適用が可能である。青枯病は症状が現れてからでないと対処できなかったが,今回の成果を応用すれば,症状が出る前に対処が可能になる。感染した苗を除去する必要もなく,生産者のニーズは高い。「これまでは天敵として昆虫や微生物が使われてきたが,これからはファージを使う時代が来る」(山田氏)と予測するように,青枯病対策の新たなアプローチとして期待がかかる。
(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)


写真2:RSM1の青枯病菌の増殖抑制効果を調べた
RSM1の青枯病菌の増殖抑制効果を調べた


【ニュースリリースはこちら】
  ・植物病原菌(青枯病菌)に特異的に感染・防除する バクテリオファージの分離に成功 [2007年01月17日]
【テクニカルノートはこちら】
  広島大学生命分子情報学研究室からの提案
・「バクテリオファージ応用した植物病原菌の検出・防除システム」の開発に関する意見交換や共同研究の提 [2007年01月17日]

記事要点掲載先:日経BP.netBiotechnology Japan


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