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SiCデバイスの高性能化と応用範囲拡大へ
埼玉大が欠陥削減とその場観察を実現

[2007/02/14]

 埼玉大学の大学院理工学研究科数理電子情報部門電気電子システム領域の助教授である土方泰斗氏の研究グループが,SiCデバイスの性能向上や応用範囲拡大に寄与する2つの技術を開発した。1つは,SiCにNイオン打ち込みを施してから水蒸気酸化するプロセスの開発である。このプロセスを使うとSiC/酸化膜の界面準位密度を2ケタ減らせ,SiC-MOS FETのオン抵抗を数mΩに低減できる。この技術は同研究グループとイタリア国立研究所(CNR)の共同研究によって開発した。もう1つは,SiCウエーハ表面に酸化膜を形成する際の成膜過程のその場観察(In-situ)技術の開発である。この技術によってSiC酸化膜形成の初期過程を調べることができることから,SiC酸化膜の膜質改善などを通じてSiCデバイスの性能向上などが達成できる可能性が高い。これらの技術を使えば,「例えばハイブリッド自動車用のパワー・デバイスへのSiCデバイスの応用が見えてくる」(土方氏)という。

優れた物性を生かしきれていなかったSiCデバイス
 SiCは,Siよりバンド・ギャップが広い,絶縁破壊電界が大きい,熱拡散係数が大きいといった物性上の特徴があるため,パワー・デバイスや光デバイスへの応用展開が期待されている。例えば,ハイブリッド自動車用のパワー・デバイスとして現在使われているSi-IGBTをSiC-MOS FETに置き換えると,エネルギー損失の削減や温度特性の改善などにより,パワー・モジュールの冷却装置が不要になるなどして,ハイブリッド自動車の燃費を従来の30km/?から40km/?に引き上げることが可能なる。また,SiCデバイスを家電製品に適用して省エネルギー化を推進することも可能であり,原子炉や人工衛星などに使われる耐環境デバイスへの応用も期待されている。
 しかし,SiCデバイスはこのような優れた特徴を持ちながら,これまで多くの応用領域においてSiデバイスの後塵を拝してきた。その理由は,実際のSiCデバイス特性が理論性能より低かったからである。例えばデバイス性能指標の1つであるオン抵抗は,実際のSiCデバイスで測定した値がSiCの物性値から予測される理論値より1ケタ以上悪かった(図1)。この結果,Siデバイスに対するSiCデバイスの優位性が失われ,実用化の実績や製造コストの面で優位なSiデバイスが使われてきた。

図1:耐圧とオン抵抗
耐圧とオン抵抗
現在のSiCデバイスのオン抵抗は,物性値から予測される理論値より1ケタ以上低い。

 このSiCデバイスの実性能が低く留まっている大きな原因の一つが,SiC/酸化膜の問題である。例えば,SiC/酸化膜の界面準位密度がSiに比べて2〜3ケタ大きく,この結果としてSiCデバイスの理論性能を発揮できていなかった。

SiC/酸化膜の界面準位を2ケタ削減
 このようなSiCが抱える問題に対し,埼玉大学はSiC/酸化膜界面の改善に取り組み,二つの技術を開発した。
 1つは,SiCにNイオン打ち込みを施してから水蒸気で酸化するプロセス技術である。具体的にはNイオン打ち込みによってSiC表面に1021個/cm2と高濃度のNをドーピングする。この状態でSiC表面に水蒸気によるウェット酸化を施す。このプロセスを使うと,SiC/酸化膜の界面準位密度を,従来の1013個/cm2から1011個/cm2に削減でき,この結果SiC-MOS FETのオン抵抗を数mΩとSiCの物性値から予測される理論値近くまで削減できる(図2)。

図2:エネルギーと欠陥密度
エネルギーと欠陥密度
Nイオン打ち込みにより,SiC/酸化膜の界面準位密度を,従来の1013個/cm2から1011個/cm2に削減できる。

 もう1つは,その場観察分光エリプソメーター技術である。この技術は高温(900〜1100℃)酸素雰囲気中でのSiCウエーハ表面の酸化膜形成過程,特に酸化膜形成の初期過程を非破壊でその場観察できる(図3)。

図3:酸化時間と膜厚
酸化時間と膜厚
その場観察分光エリプソメーターにより観察した,SiCウエーハ表面の酸化膜形成過程。

 このため,酸化膜/SiC界面の構造と形成メカニズムを解明できる可能性が高い。例えば,土方氏のグループは,すでに極めて初期の酸化過程(酸化膜厚が10nm以下)において,酸化速度が増大する現象を発見している(SiCの酸化初期においてSiと同様の分子放出現象が起こっていることを示唆)。今後,この装置を使って研究をさらに進めれば酸化膜/SiC界面の構造と形成メカニズムに関する知見が増え,その知見を基にMOS構造の形成プロセスを改善してSiCデバイス特性の一層の向上が図ることが可能になる。
 なお,この2つの研究は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業から助成を受けている。

【ニュースリリースはこちら】
  ・炭化ケイ素(SiC)半導体の熱酸化膜形成の実時間観測に世界で初めて成功 [2007年01月25日]
【テクニカルノートはこちら】
  埼玉大学電気電子システム領域からの提案
・『高濃度窒素イオン注入による炭化ケイ素半導体界面キャリア捕獲準位密度の低減化プロセス』に関する共同開発の提案 [2007年01月25日]


記事要点掲載先:日経BP.netTech-On!


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