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コップに注いだ液体中に有り得ない高温高圧の合成環境を作る
液相レーザーアブレーション法が拓く材料合成の新時代
[2007/02/27]


 古典的な化学合成では困難だった材料を作り出す液相レーザーアブレーション法と呼ぶ技術の応用分野が広がってきた。従来手法では考えられないような高温・高圧・高濃度の環境下で,ナノ粒子を合成・加工する技術である。しかも合成に必要な装置の構成が非常に単純である。レーザー装置と合成用のガラス・セルという非常に簡単な装置で合成できる(図1)。金属,無機物,有機物など幅広いナノ粒子を合成可能であり,汎用性は高い。そして応用分野は電子機器を構成する部品・材料から医療用の薬品まで広範囲の分野が想定される。
 液相レーザー・アブレーション法は,まだ技術開発の歴史が浅い。このため,今後いかなる特性をもつ新しい材料を生み出すのか底を見せていない。また実用化に向けては,生産技術の面で解決すべき課題もある。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業によって,同技術の開発を進めている独立行政法人 産業技術総合研究所 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 高密度界面ナノ構造チームは,応用分野の拡大と大量生産に適応できる生産技術の開発を通じて,同技術の実用化を推し進めていく。このため,ナノ粒子の用途開発に関する研究を共同で進めるパートナーを募集している。

通常あり得ない合成・加工の環境を作る
 液相レーザーアブレーション法とは,様々な組成のナノ粒子を合成できる極めて汎用性の高いナノ粒子の合成法である。従来とは異なる材料を生み出す可能性の源となっている基本的な原理は以下の通りである。
 水や各種有機溶媒などの液相の中に,沈めたもしくは分散させたターゲット材料に向けて,レーザー光を集光照射する。レーザー光のように空間的にも時間的にも非常に光子密度の高い光をターゲットに照射すると,光励起によってターゲット物質のイオン化や化学結合の切断(プラズマの発生),もしくは高い熱エネルギーが蓄積されることによる融解や蒸発(クラスターやガス・液滴の発生)などが起こる。非常に短時間でこうした過度の状態変化が起こるため,ターゲット周辺では爆発的な物質の噴出現象が起こる。液相レーザーアブレーション法では,液相中に置いたターゲットにレーザーを集光照射し,レーザー光によって噴出したプルーム(流動体の流れ)を液相中に空間的に閉じ込める。こうすることによって,瞬間的に数万K,数GPa程度の高温,高圧の状態や極めて高い化学種濃度の反応場が形成されて,通常では得難い状況での材料の合成・加工ができる。
 また,液相レーザーアブレーション法では,噴出したプルームを周囲の液体によって即座に冷却できる。これは気相でレーザーアブレーション法を行なう時にはない特長である。ターゲットは金属や無機材料を融解・蒸発させるほど非常に高温になるが,調製に用いるセル内の液体の上昇はわずかである。これは照射するレーザー光のパルス当たりのエネルギーが数から数十mJであり,数m?の液体全体に影響を及ぼす熱エネルギーとしては非常に小さい量であるからである。急速冷却によって,ナノ粒子に効果的に欠陥を導入し,半導体のキャリア濃度を高めることもできる。また,液相中で行なうことの長所として界面活性剤を添加することによって,生成したナノ粒子の凝集・分散の状態を制御することができる,ナノ粒子の回収率が高い,ハンドリングが容易,装置が安価などの点についても特長として挙げられる。

 様々な部品や材料の製造に応用するときに,製造工程を簡略化しやすい利点も見逃せない。たとえばITOナノ粒子の場合,共沈法などの化学合成によって生成する場合には,中和,洗浄,乾燥または湿式粉砕などの複雑な工程や熱処理が必要になる。また生成したナノ粒子を利用する場合,溶媒に均等分散させるような付加的な工程が必要になる。液相レーザーアブレーション法では,溶媒中で反応・加工を行なうことによって,ナノ粒子を均等分散させた材料をワン・ステップで作ることができる。
 現在,国内外の様々な研究機関において液相レーザーアブレーション法を利用した調製技術の開発が進められている。その中で産総研のチームは,応用分野を広げるための技術開発での実績を積んできている。レーザー光の照射条件や液相中に添加する界面活性剤を最適化することによって,Sn,Ti,Siなどをターゲットとしたナノ粒子の生成技術を開発してきた。
 明確な応用分野を想定した技術開発としては,ZnO微粒子の紫外発光を利用した機能素子のためのZnOナノ粒子表面の欠陥制御技術,赤外線遮蔽用フィルムの赤外線遮蔽特性を可視光の散乱を抑えながら向上するためのITOナノ粒子の微小化技術を開発している(図2)。これらの技術では特許を取得している。
 また,新たな可能性として,液相レーザー・アブレーション法によって有機/無機ナノコンポジット構造の微粒子を生成できることを確認している。Znをターゲットとし,陰イオン性界面活性剤の一種であるSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を添加した水を液相として,8角形の板状の高圧相水酸化亜鉛であるβ-Zn(OH)x層と界面活性剤層が交互に積層した有機/無機ナノコンポジット構造の微粒子を生成させている(図3)。

 様々な可能性を秘め,他の材料合成手法に対する長所を持つ液相レーザー・アブレーション法だが,実用化する上での課題も多い。最大の課題は,大量合成に向けた生産技術が発展途上である点である。医薬品など少量でも意味のある応用分野ならば,現状の生産技術でも対応可能である。しかし,電子機器に搭載する部品・材料への応用を考えた場合には,合成速度をケタ違いに向上させる必要がある。産総研ではフローセル型のレーザー照射容器を使った連続合成によって,現在1mg/hの生成効率を100mg/hを目標にした技術開発を進めている。これまでのところ,レーザーの照射条件とターゲット材料の最適化によって,約200mg/hの生成効率でZnOを合成できるまでになっている。

図1:液相レーザーアブレーション法の装置構成
液相レーザーアブレーション法の装置構成

図2:液相レーザーアブレーション法によって微小化したITOナノ粒子
液相レーザーアブレーション法によって微小化したITOナノ粒子

図3:合成した有機/無機ナノコンポジットの構造
合成した有機/無機ナノコンポジットの構造


【ニュースリリースはこちら】
  ・液相レーザーアブレーションによりITOナノ粒子の微細化に成功 [2007年01月23日]
【テクニカルノートはこちら】
  産業技術総合研究所 界面ナノアーキテクトニクス研究センターからの提案
・液相レーザーアブレーションで調製したナノ粒子の用途開発に関する共同研究の提案 [2007年01月23日]


記事要点掲載先:日経BP.netSiliconOnlineTech-On!


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