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半導体などの製造装置組込みを想定したガス計測技術
東京大学が吸収分光法の高感度化を実現
[2007/03/15]


 東京大学の環境安全研究センターの助教授である戸野倉賢一氏の研究グループは,半導体製造などに使用されるプラズマ装置などへの組み込みを想定して,微量ガスを高感度に測定できる技術を開発した。吸収分光法の原理を応用した技術で,従来の方式から検出感度を3ケタ以上向上させることに成功した(図1)。サブppbレベルまでの微量ガスの濃度計測が可能となる。光源には,近赤外領域の通信用半導体レーザーを使用する。
 装置光学部分の構成は,光源となるレーザー装置と試料ガスを導入するガラス製のセルからなる。簡単な構成のため小型化が可能である。分光法の特徴である測定のリアルタイム性を備えていることから,分子,原子の他に状態変化の速いラジカルの濃度測定が可能である。同技術は,薄膜プロセスなどで使用されるCH4,HF,HCL,H2S,NH3,H2Oなどの計測に使用可能である。

レーザー光を波長変調
 吸収分光法とは,試料ガスに光を照射し光の吸収量からガスの濃度を計測する技術である。吸収分光法は,リアルタイム測定が可能であること,キャリアガスを必要としないこと,大気圧でも測定が可能であることから,ガス・モニタリング技術として期待されている。しかし,今後応用範囲を拡大するためには,感度の向上が課題となっていた。
 吸収分光法の感度を高めるためには,より微小な光の吸収量の変化を測定できることが必要になるが,東京大学はこの問題に対し,同時に2つのアプローチから取り組んだ。
 その1つは,ガスによる吸収を受けた受光信号を検出するときに,検出器から生じるノイズ成分を除去しS/N比を向上させる取り組みである。ガスによる光の吸収は1%以下と非常に少ない。そのため検出器などで発生するノイズが原因で検出光の強度が変化してしまうと,測定精度に大きく影響する。この問題を解決するために,レーザー波長の変調を行なった。物質には,照射される光の波長の違いにより,光の吸収量が変化するという性質がある。このため,レーザーを波長変調すると,ガスによる光の吸収量もレーザーの波長の変化に合わせて変化する。このときに,波長の違いによる光の吸収量の違いを検出し,その差を求める。ノイズ成分は波長の違いによらずに均一に混じっているため,この操作によりノイズ成分が差し引かれ,ノイズの影響を除去した高精度な計測を実現した。

高反射率ミラーにより光路を延長
 もう一方の取り組みは,極微小な光の吸収量の変化を,検出器の感度で検出できるレベルまで増幅する技術である。極微量ガスの濃度を計測する場合,光の吸収はごくわずかでしかない。この吸収量の変化が検出器の性能で決定される検出感度を下回れば,濃度の測定は不可能である。この課題に対するソリューションとして,セル内で光を多重反射させることにより光路長を延長し,ガスにより光が吸収される量を増幅するのである。セル内で,光の反射を数千〜1万回繰り返すことにより,ガスによる光の吸収量も同様に数千倍に増幅される。
 光を多重反射させるセルは,キャビティと呼ばれ,両端に高反射ミラーを持つ構造になっている。ミラーにはピエゾ素子が取り付けられている。ピエゾ素子の制御により,ミラーの間の距離(キャビティ長)を変化させることができる。
 キャビティ内に導入されたレーザーは,高反射ミラーにより反射を繰り返しキャビティ内に蓄積される。蓄積されたレーザーは,キャビティ長をレーザーの波長の整数倍に変化させることにより,キャビティから出射させることができる。このときの出射光の強度を検出することにより,キャビティ内で増幅されたガスによる光の吸収量を知ることができる。

 東京大学は,これらの2つの取り組みにより,従来の吸収分光法から3ケタ以上感度を向上させて,サブppbレベルまでの高感度化を可能とした。今回開発した技術は「キャビティ増幅周波数(波長)変調吸収分光法(CEFMS)」と名づけた。同大では,同技術を利用してプロトタイプとなる装置を完成させている。レーザー装置には,波長1.5μmの光通信用のDFBレーザーを使用している。同波長領域の光通信用半導体レーザーを使用することは,本技術の実用化を推進していう上でメリットが大きいという。「光通信用として大量生産されているので安価に入手可能です。また,波長領域がプロセス・ガスに使用されている成分の吸収スペクトラムと重なっているので広い範囲での応用が期待できます」(戸野倉氏)。キャビティの大きさは,今回作製した装置では,長さが50cmで直径が2.5cmである。このプロトタイプを使用して,既にN20やNH3などの測定行い,実証実験を進めている。今後は,同技術の実用化研究を推し進めていくためのパートナーを募集し,用途開発に関する意見交換や共同研究を進めていきたいという。
 なお,本技術の研究は,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO 技術開発機構)の産業技術研究助成事業から助成を受けている。

図1:東京大学が開発したガス計測装置の原理図
東京大学が開発したガス計測装置の原理図

【ニュースリリースはこちら】
  ・サブppbレベルでのガス計測を小型装置で可能に [2007年02月28日]
【テクニカルノートはこちら】
  ・工業プロセスガスモニターや環境計測への応用に向けた小型で高感度な微量気体計測装置の開発に関する共同研究の提案 [2007年01月12日]


記事要点掲載先:日経BP.netSiliconOnlineTech-On!


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