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東京理科大学,燃料電池の多層電極を一体成形
携帯機器向けに250μmの極薄型セルを試作
[2007/03/22]


 東京理科大学理工学部機械工学科の早瀬仁則講師の研究室は,従来ははり合わせで作製していた燃料電池の電極をシリコン基板上に一体成形する技術を開発し,これにより厚さが250μmという極薄型の燃料電池セルを試作できた。従来の燃料電池セルの厚さは,1mm〜5mmであった。通常,燃料電池は基本単位であるセルを数百枚積層して使用する。今回開発した技術を使用すれば,燃料電池の大幅な薄型化が可能になる。
 現在,実用化されている燃料電池セルは,触媒層,拡散層,燃料流路を持つ多層構造の電極で電解質膜を両側から挟むサンドイッチ構造となっている(図1)。この構造を実現するため,従来は電極をはり合わせる技術で作製していた。この結果,はり合わせた3層構造の電極の各層間の密着性を高めるためのしめつけ工程が必要になり,燃料流路にはこのしめつけ工程で破損しないための強度が求められていた。このため燃料流路の薄型化に限界があった。これに対して今回は,シリコンに溝をつくるエッチング処理と白金触媒層を成膜する技術を使って一体成形するためにしめつけ工程が不要になり,電極の大幅な薄型化が可能になった。
 燃料電池は,現在自動車向けなど用途では実用化が進んでいるが,携帯機器などへの応用範囲の拡大には一層の小型化が求められている。本技術は,そうした用途への燃料電池の実用化の道を開く。

シリコン基板に電極を一体成形
 早瀬氏らが開発したのは,シリコン基板に触媒層,拡散層,燃料流路を一体成形した電極の作製技術である。この技術は2つの中核技術から構成される。
 1つは,シリコン基板に多孔質触媒層を形成する技術である。表面に酸化膜を形成したシリコンウェーハをフッ酸中で通電(陽極酸化)すると,シリコン表面に規則正しい多孔質層が形成される。形成される孔の孔径は,通常数nmから数μmである。電極として使用するためには,シリコンに導電性を持たせる必要がある。これは多孔質層の孔径を100nmから1μmにすることにより可能となる。孔径の制御は,シリコンにドープするリンまたはヒ素の濃度や電解条件を変えることで実現した。次にこうして形成した多孔質層に触媒となる白金を担持させることにより,白金多孔質触媒層を形成する。具体的には白金溶液で湿式めっきを施すことにより,シリコン多孔質を白金多孔質触媒層に改質する。図2は,このときの反応を示したものである。白金溶液から白金が析出してシリコン多孔質層に担持されるが,このとき一方でシリコンが酸化される。酸化したシリコンはフッ酸によって溶解され,その結果多孔質層が形成される。こうして新しく形成された多孔質層が,さらに白金多孔質触媒層に改質される。早瀬氏らはフッ酸の濃度やめっきの温度などの条件を制御することにより,このようなプロセスを安定して実現することに成功した。さらに同氏らは,シリコン多孔質層から触媒層への改質は,白金だけではなく,ルテニウムやパラジウムなど他の貴金属触媒材料でも可能であることを確認している。

プラズマエッチングにより燃料流路を形成
 もう1つは,白金多孔質触媒層を形成したシリコン基板に燃料流路を形成する技術である。燃料流路の形成はプラズマエッチングを使用する。エッチングは,白金多孔質層触媒層を形成した裏側となるシリコン基板面から行う(図3)。シリコン基板面からSF6によるエッチングを行なうと,シリコン層を貫通して白金多孔質層触媒層まで達する溝を掘ることができる。白金多孔質層触媒層はSF6によるエッチングに対する耐性が高いため,それ以上エッチングは進まない。白金多孔質層触媒層が丁度ストップ層として働くのである。こうして底部の白金多孔質層触媒層がつながり,上部にシリコン層を貫通した溝が掘られた触媒層と燃料流路の一体構造が出来上がる。現在試作した電極では,厚さ100μmのウェーハを使用して,幅が100μmの溝を形成している。

シリコン一体成形電極は萌芽的な技術,外部組織との連携により実用化を推し進める
 今回の開発は,シリコンに一体成形した電極を使用して,燃料電池の薄型化が可能であることを示したものである。次のステップは,実用化に必要な出力の向上を達成することである。今回試作した燃料電池セルの出力は,従来の燃料電池セルと比べ約十分の一に留まる。早瀬氏は当面の目標として,出力を3〜4倍に向上させたいという。この目標を実現するために,研究室では具体的に3つの課題をあげている。1つは,触媒層の最適化である。触媒を担持させるシリコン多孔質層の孔径や空径率を変えることにより,電極の導電性や白金やルテニウムなど触媒物質が露出される面積が変化する。これらは出力に大きく関係すると考えられる。2つ目は,燃料流路の形状の工夫と加工精度の向上である。燃料流路の溝の深さや幅についての最適値については,まだ十分な解明が進んでいない。また,エッチングの加工精度についても向上の余地がある。3つ目は,電極と電解質膜との接着技術の向上である。この技術を高めることにより,燃料電池セルの一層の出力の向上が可能である。
 早瀬氏は,今後同技術の実用化に向けた研究を加速していくためのパートナーを募集し,燃料電池の触媒層や燃料流路の最適化などに関する意見交換や共同研究を進めていきたいという。
 なお,本研究は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)産業技術研究助成の助成を受けている。

図1:燃料電池の一般的なセル構造
燃料電池の一般的なセル構造

図2:白金−シリコン置換モデル
白金−シリコン置換モデル

図3:プラズマエッチングによる燃料流路形成
プラズマエッチングによる燃料流路形成

【ニュースリリースはこちら】
  ・シリコンモノシリック電極による超小型燃料電池を開発 [2007年02月27日]
【テクニカルノートはこちら】
  ・シリコンモノシリック電極を用いた,モバイル機器用超小型燃料電池に関する意見交換や共同開発の提案 [2007年02月27日]


記事要点掲載先:日経BP.netMEMS InternationalTech-On!


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