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奈良先端科学技術大学院大学,DNAの特異的結合を光と
電位変化で計測できるCMOSイメージ・センサを開発

[2007/03/28]


 奈良先端科学技術大学院大学の太田淳教授,徳田崇助手らのグループは,DNAスポットの特異的結合(ハイブリダイゼーション)を光と電位変化によって計測するCMOSイメージ・センサを開発した(図1)。このCMOSイメージ・センサを使えば,将来,10個〜1万個程度のDNAやタンパク質の塩基配列を簡単に分析することが可能になる。
 開発したCMOSイメージ・センサは,オーダメイド医療,遺伝子組み換え食品の管理など,DNA分析を応用した医療・産業分野に向けたものである。これまでのDNA分析は,DNAマイクロアレイ・システムやDNAシーケンサといった研究用途向けの大規模な計測装置を使うか,あるいは医療・産業分野の現場で使われる試薬ベースの単機能的な判定方法を使うことが一般的だった。医療・産業分野の現場では,DNAやタンパク質の多数の塩基配列を同時に,しかも小型装置で簡便に分析・判定できる計測技術が望まれていた。このCMOSイメージ・センサは,そうした計測装置の開発に道を開く。

光センサ部と電位センサ部を交互に配置
 徳田氏らのグループが開発したのは,1チップの上にアレイ状に光センサと電位センサを形成したCMOSイメージ・センサである。光センサ部と電位センサ部が列方向に交互に配置されている。ピクセル数は光センサ,電位センサともに88×144である。1ピクセル当たりの面積はいずれも7.5μm×7.5μmである。製造プロセスは0.35μm CMOSであり,配線は多結晶シリコンが2層,金属配線が4層である。このCMOSイメージ・センサの回路構成と動作原理は次のようになる。
 光センサ部の1ピクセルは,一つのフォト・ダイオードと三つのMOSFETで構成される(図2)。DNAスポットをチップ上に滴下し,チップ上に固定された相補的DNA断片とハイブリダイゼーションさせ,蛍光色素でラベル化する。蛍光色素から出る光をフォト・ダイオードで検出し,ハイブリダイゼーションの有無を調べる。受光用のフォト・ダイオードの面積は15.7μm2である。
 一方,電位センサ部の1ピクセルは,電位センサ用の電極と二つのトランジスタから構成される(図2)。電位センサ用電極は4層目の金属配線を使う。絶縁層を挟んで電極とチップ表面間でキャパシタが形成される。チップ上に滴下した計測用試料がハイブリダイゼーションを起こすと,5mV程度の電位変化が発生するとされる。本デバイスではこの電位変化を容量結合によって計測し,ハイブリダイゼーションの有無を検出する。
 計測にはパソコンを使う(図3)。パソコンに搭載されたデジタルI/Oボードを介して,デジタル系制御信号をCMOSイメージ・センサへ送る。アナログ系の制御信号はDC電源から直接CMOSイメージ・センサへ供給される。動作は従来のCMOSイメージセンサと同一であり,1ピクセルごとに信号を読み出す。
 信号の読み出しには電流を使う。読み出し電流はトランスインピーダンス・アンプによって電流から電圧に変換され,増幅される。トランスインピーダンス・アンプからの出力信号は12ビットのADコンバータを介してデジタル・データに変換されてパソコンに入力される。

1.6mVの電位変化を検出
 図4〜6は,開発したCMOSイメージ・センサを使って計測した結果である。図4ではチップ上に生理食塩水を滴下し,Ag/AgCl電極を通して生理食塩水の電位を規定している。図4(a)が,開発したCOMSイメージ・センサによる撮像画像である。光センサと電位センサによる画像が重なって表示されている。光センサと電位センサとの画像を分離したのが,図4(b)図4(c)である。図4(b)が光センサによる画像で,Ag/AgCl電極の影が計測されている。図4(c)は電位センサによる画像で,CMOSイメージセンサに滴下された生理食塩水の電位分布が計測されている。これらの画像は,12ビットのADコンバータでピクセルごとにデジタル化されたものを表示している。光センサによる画像では電極だけが,電位センサによる画像では生理食塩水の電位だけが計測される。
 図5(a)は,最大±5Vの印加電圧とピクセルごとの数値データの関係を示す。オフセットがあるのは製造プロセス時の蓄積電荷によるもので,リセット・トランジスタを設けることによって簡単に解決できる。図5(b)は,1LSB当たりの電位感度を示している。トランスイピーダンス・ゲインを8kΩに設定したとき,1.6mVの電位感度を持つ。この値は,DNAスポットのハイブリダイゼーション発生時の電位変化5mVよりも小さい。このため,開発したCMOSイメージ・センサによってDNAスポットのハイブリダイゼーションを計測できると期待される。
 図6は,開発したCMOSイメージ・センサを使って,チップに滴下したDNAスポットを計測した結果である。光を当てない場合,光センサではDNAスポットは計測されていない(図6(a))。一方,電位センサでは図6(b)に示すようにはっきりとDNAスポットが計測されている。光を当てた場合には,光センサでもDNAスポットを計測できる(図6(c))。
 今回の実験は,開発したCMOSイメージ・センサを使ってDNAスポットのハイブリダイゼーションを計測できることを示したものである。次のステップは,DNAスポットのハイブリダイゼーションを実際に計測することである。この技術を実用化していくためには電位の検出感度をさらに上げることや,ソフトウェアを含む計測装置として完成させることが必要になる。プロジェクト代表者である徳田助手は,今後DNAマイクロアレイ・システムやDNAシーケンサを使う研究機関と共同研究を行い,実用化に向けた技術課題を洗い出し,装置のシステム・イメージを明確化したいとしている。
 なお,この研究は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業から助成を受けている。

図1:開発したCMOSイメージ・センサ
開発したCMOSイメージ・センサ

図2:センサ部の回路構成
センサ部の回路構成
(a)が光センサ部,(b)が電位センサ部,(c)がカラム回路


図3:パソコンを使った計測装置
パソコンを使った計測装置

図4:CMOSイメージ・センサを使った計測結果
CMOSイメージ・センサを使った計測結果
(a)光センサと電位センサを使った画像,(b)光センサの画像,
(c)電位センサの画像



図5:電位センサを使った計測結果
電位センサを使った計測結果
(a)印加電圧とピクセルの数値データの関係,
(b)電位感度とトランスインピーダンス・ゲインの関係


図6:DNAスポットの計測
DNAスポットの計測
光を当てない場合の光センサによる画像(a),電位センサによる画像(b)
光を当てた場合の光センサによる画像(c),電位センサによる画像(d)

【ニュースリリースはこちら】
  ・超小型・高機能DNA検出システム実用化に道筋 [2006年12月18日]
【テクニカルノートはこちら】
  ・「オンチップバイオイメージセンサチップ」を用いた小型DNA等検出システムに関する共同開発の提案 [2006年12月18日]


記事要点掲載先:日経BP.netBiotechnology JapanTech-On!


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