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香川大が細胞用の“X線CT”技術を確立
薬剤評価システムや疾患診断システムの応用に期待
[2007/04/03]


 生きたままの細胞を3次元で成分解析できる「単一細胞分光トモグラフィ技術」を,香川大学工学部助教授の石丸伊知郎氏の研究グループが開発した。この技術では,高い解像度と感度を持つ分光技術により,細胞の分光断層像を取得することができる。更に,細胞を回転させながら位相差像を観察し,コンピュータにより3次元位相差像を構築することにも成功している。これらの技術により,細胞内の小器官やたんぱく質,脂質などの成分分布を,立体的かつ経時的に高解像で観察できる。つまり,「“X線CT(コンピュータ断層撮影法)”技術の様な,細胞の3次元イメージング手法」(石丸氏)を確立したことになる。
 これらの技術を使い,香川大学医学部消化器・神経内科学教授栗山茂樹氏,農学部応用生物科学科教授竹川薫氏らと行った共同研究では,細胞膜表面に分布する糖たんぱく質のみを蛍光染色した細胞の分光断層像を取得できた(写真1)。また,乳がん細胞内部の成分分布を無標識で3次元の位相差像として観察できた(写真2)。高解像度で細胞の形態や成分変化を解析できるので,薬剤の評価システムや疾患診断システムへの応用に期待できる。


写真1:糖たんぱく蛍光分光断層像 写真2:乳がん細胞の断層像
写真1:糖たんぱく蛍光分光断層像 写真2:乳がん細胞の断層像


位相可変フィルタで微弱な蛍光を効率的に利用
 単一細胞分光トモグラフィ技術は,(1)可変位相差2次元分光技術,(2)近接2光束ピンセット技術,(3)細胞トラッキング技術,の3要素で構成されている。位相差顕微鏡に,これらの技術を組み合わせることで,細胞を生きたまま3次元解析する。新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO技術開発機構)の助成を受けて開発した。
 (1)可変位相差2次元分光技術は,微弱な蛍光を効率的に利用し,高解像度の2次元分光像を取得する技術である。生細胞の解析では,複数の蛍光たんぱく質で細胞を標識し,観察が行われる。ただ蛍光標識は,高精度の冷却CCDカメラでやっと観察できる程度の微弱光であり,従来の分散型分光器では高解像度で解析できなかった。
 そこで石丸氏のグループは,光の位相をずらす「位相可変フィルタ」を利用して光の利用効率を上げる方法を開発,より微弱な蛍光計測を可能にした。染色に使用した蛍光色素ごとにインターフェログラム(光の干渉波形)を取得し,フーリエ変換してスペクトルを得る。これにより蛍光標識した細胞の2次元分光像を高解像度に観察できるようになった。
 さらにこの技術を応用すれば,蛍光標識なしでの細胞観察も可能になると言う。「(蛍光たんぱく質を励起する可視光ではなく)長波長の光で励起すれば,細胞内の成分や形態に起因する分光吸収率を取得できる。そこから分子構造,つまり成分を推定すれば標識なしで生細胞の解析ができるようになる」(石丸氏)。蛍光標識の場合,標識可能な成分しか観察できない。そのため,存在が不明確なたんぱく質や蛍光標識が難しい細胞小器官などの観察はできない。長波長光観察が可能になれば,標識の有無に関わらず,細胞内に存在するほぼすべての成分を解析できるようになる。

図1:細胞回転原理
図1:細胞回転原理
2つの光ピンセットで非接触で細胞操作
 (2)近接2光束ピンセット技術は,非接触で細胞操作する技術である。2つの光ピンセットを用いて細胞を回転させることができる(図1)。つまり,この技術と(1)を組み合わせることで,細胞を回転させながら多方向から2次元分光計測することが可能になる。得られた2次元分光像をコンピュータで3次元画像に変換することで,細胞の3次元分光断層像を取得できる。「付着細胞だけでなく浮遊細胞を対象に,細胞成分の3次元局在や形態変化,細胞の容積を解析できる」(石丸氏)と話す。
 研究グループでは,まずは,具体的なアプリケーションとして,薬剤評価システムへの応用を目指していく方針である。薬剤投与による細胞応答を経時解析することで,薬剤の有効性や安全性を評価していく。

透明体である細胞を干渉稿として可視化
 このとき,培養液中に存在する細胞を効率的に捕える技術が,(3)細胞トラッキング技術である。対象細胞を特定の空間周波数成分の回折光として抽出し,透明体である細胞を干渉稿として可視化する(図2)。具体的には,2つの穴を持つ空間フィルタを光路(対物レンズと結像レンズの間)に配置することで回折光を生じさせ,細胞の空間的位置を把握する(図3)。
 「これまで細胞のトラッキングは,高価な高速CCDカメラと画像処理装置で行われてきた。しかし,シャッタ・スピードが遅いので動きの速い細胞は捕えられなかった。我々の方法だと安価なフォトダイオードで,シャッタ・スピードを最大で109/秒まで高められる。また,深さ方向のトラッキングも可能であり,動きの速い細胞を,見逃すことがない」(石丸氏)と言う。
 単一細胞分光トモグラフィ技術を使った生細胞解析の流れは,(a)細胞トラッキング技術で細胞の位置を確認し,(b)近接2光束ピンセット技術で細胞を回転させ,(c)可変位相差2次元分光技術で解析,(d)コンピュータで3次元像を構築,となる。今後,研究グループでは光学機器メーカーなどとの共同研究を通じて,単一細胞分光トモグラフィ技術をシステム化し,実用化を目指していく。

図2:無染色細胞の可視化
図2:無染色細胞の可視化

図3:光学的な空間フィルタリングによる可視化原理
図3:光学的な空間フィルタリングによる可視化原理

【ニュースリリースはこちら】
  ・香川大が細胞用の“X線CT”技術を確立 [2007年03月12日]
【テクニカルノートはこちら】
  ・香川大学からの提案
細胞用の“X線CT”技術を使った薬剤評価システムや疾患診断システムの応用研究の提案 [2007年03月12日]


記事要点掲載先:日経BP.netBiotechnology Japan


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